幸運なことに
ロダン アンナ・カレーニナ 
の両方の作品を鑑賞することができた 
エイフマン・バレエ

エイフマンバレエの2演目のポスター

久し振りに
とても強いインパクトをいただきました

ハンブルグのノイマイヤーさんのバレエも
感動しましたが
それに負けず劣らずの強烈な印象でした


ですから 見終わったあとに
エイフマンさんについて勉強しました

エイフマンさんは
ご自分の目指すバレエについて
次のように語っておられます

語るエイフマンさん

私たちは
ロシアのモダン・バレエの発展を
目指して活動してきた

求めているのは
人間の真理を描く演劇の伝統と
ダンスの表現の可能性が結びついた
そんな芸術作品で

動きを通して 
人間の心理 精神の神秘を表現したい

踊るエイフマンバレエのダンサー

そして 創作の主題となるのは
あくまでも人間の内面

バレエは物事を熟考するための手段であり
人間の潜在意識に侵入することができる
特異な芸術分野であるとも言える

バレエの動きを通して観客に
大量の感情 エネルギー 考えを伝えられ
新しい世界をお見せすることができる

バレエは 
美しい芸術として 理解されているけれど
単に音楽に合わせた美しい踊りではなく
そこに もっと大きな意味や価値を与えたい

伝統を守りながら 未来を志向する
ロシアでは 古典を守るだけでなく
新しい時代の要請に応える
現代芸術としてのバレエも創作されていることを
世界中に伝えたい

エイフマンバレエのポスター

もちろん 観客が楽しめる娯楽性も
大切にしたいと思っている

そして「心理バレエ」という言葉を用いて
さらに語り続けます

私たちは 
バレエの世界における新たなジャンルとして
「心理バレエ」を追求し続けている

私たちが求めているのは
身体という“言葉”を通して
人の内面の世界を表現すること

内面の表現について語るエイフマンさん

通常 バレエが見せるのは
人の身体の美しさや動きの美しさ 
つまり外面的な美だが

私たちは
人の心をより深く掘り下げ
その内面の世界を動きで表現しようと
試みている

私は 人の身体とは
心の世界を表現するための
最良の道具だと考えている

感情から動きが生み出され
そうして生み出された振付けが
感情そのものになることが理想

テレビやインターネットでは
決して得ることができない大きなエネルギーを 
観客に受け取って欲しい

情報は簡単に手に入っても
生きた感動をなかなか得ることが出来ない昨今
私たちのバレエで大きな力を得て欲しい

心理バレエを踊るダンサー

なるほど 心理バレエ ですか

初めて聞く言葉ですが
エイフマン・バレエを見て 
充分に納得できました

そして バレエを見終わったあとに
頭の中が掻き回されたような
ある種の心地良い感覚を明確に自覚したのは
今回が初めてのことでした

それだけインパクトが強かったのです


エイフマン・バレエは 
音楽もとても印象的でした

エイフマンさんは 音楽についてこう語ります

音楽について語るエイフマンさん

音楽の中には
作曲家自身 思いもかけなかったようなドラマが
秘められていることがあり
人間の深層心理を表現することができる

もし同じ曲をコンサートホールで聴いたら
全く別の印象を受けるでしょうが

しかしそれをバレエ音楽として聴くと
全く違ったイメージが浮かんできて 
違う響き方をしてくる

良く知られた音楽でも
バレエの中の身体の動きと同一化する

それが 皆さんが驚嘆することなのです

馴染み深い音楽のはずなのに
突然、知られていなかった秘密のベールが開くように
音楽が物語と一体化している

音楽に霊感を受けた振付が ドラマを綴っていくのです

確かに ロダンの近代フランス音楽も
アンナ・カレーニナのチャイコフスキーも
音楽とバレエが 何の違和感もなく
見事に一体化していました

エイフマンさんとチャイコフスキー

もし録音された音源でなく
普通のバレエのようなオーケストラによる演奏だったら
この一体感は醸し出されないのかな?
とも思いました


さて エイフマン・バレエは 
範疇としてはモダン・バレエですが
世間一般でイメージされる
コテコテのモダン・バレエとは趣が異なります

その点についての
エイフマンさんの見解はこうです

ロシアの伝統的なクラシック・バレエと
世界のモダン・バレエのスタイルを融合させ
そこに テクノロジー 
人間の抱く感情や気持ち エネルギーなど
すべてを込めている

クラシックでもない モダンでもないのが
エイフマン・バレエ

エイフマンバレエのダンサー

モダンにこだわると
動きの面白い組合せや形を考えることはできるが
ドラマ性が欠如してしまう

確かにコテコテのモダン・バレエは
個人的には 見ているときに
動きの不自然さばかりに
目が行ってしまいがちですが

エイフマン・バレエは
決してそうしたことはありませんでした

むしろ動きがダイナミックで 
目を見張るものがありました

そのあたりの話は次回に続けます

 

高橋医院