パンデミック
パンデミックという言葉を 今回の新型コロナウイルス騒動で 初めて耳にした方も多いと思います パンデミックは 感染症の世界的大流行を意味し 多くの国々 大陸をまたがって 感染症が流行する状態をさします まさに今や 新型コロナウイルスのパンデミック状態です ここで教科書的に 過去に起きたパンデミックを おさらいしましょう @ペスト 中世に発症したパンデミックで もっとも有名なものが 14世紀にヨーロッパを中心にして大流行した ペストです ノミが媒介となる細菌のペスト菌が原因で 致死率は50~70% 死亡者数は1億人 当時の人口は4億5千万人でしたから いかにたくさんの人が 亡くなられたかわかります ヨーロッパの1/3が死亡したと言われています 最初はノミを介した腺ペストが 後半はヒトの間で飛沫感染する肺ペストが 猛威を振るいました @天然痘 天然痘ウイルスによって起こった天然痘も 16世紀にヨーロッパで起こったパンデミックで ウイルスが原因となった 初めてのパンデミックでもあります 強力な感染力を持ち 空気感染して 毛布などに付着しても 数ヵ月は生存するウイルスで 致死率も30%と高いものでした 大航海時代に アメリカ大陸に持ちこまれ 先住民のインディアンの人口を半減させました 世界初のワクチンとなる種痘が ジェンナーにより開発され 1958年には世界根絶が宣言されました ちなみに 書き手が小学生の頃に読んだジェンナーの偉人伝には ジェンナーは 自分の子供で種痘の有効性を試したと書いてあり 偉いと思うと同時に 医者の子供は災難だなと思いましたが(笑) 最近の本を読むと なんと小作人の子供で試したようで うーん ねえ?(苦笑) さて 近代以降のパンデミックの原因は 細菌からインフルエンザウイルスに 変わりました 「魔法の弾丸」の抗生物質の発見により 細菌感染が制御できるようになったからです
@スペイン風邪 1918~19年に流行したインフルエンザで 20世紀のパンデミックで 最大の被害をもたらしました 伝播力は極めて強力で 2年間で5億人が感染し 致死率は2.0~2.5%で4000万人が死亡し 若年者の死亡が多かったのが特徴です 自然免疫を誘起する性質があったため 若者の死亡が多かったと推測されています 最近 コロナの解説でときおり耳にする サイトカインストームという病態です 当時は インフルエンザウイルスが 同定されていませんでしたから 原因が何かわかりませんでしたが のちにH1N1型の鳥インフルエンザだったことが 判明しています スペイン風邪には 第1波~第3波があったことが 新型コロナウイルスのニュース解説等で よく引き合いに出されます 当時の人たちは 第1波の最中に 今の私たちのように頑張って自粛していましたが 自粛期間が終わり安心して 開放的になり思い切り外に出てしまい 翌年の第2波で 第1波よりたくさんの死者を出してしまいました 自粛期間が明けても油断してはならない という戒めです @アジア風邪 1957~58年に 中国南西部から始まり 全世界に流行したインフルエンザで H2N2型ウイルスによるものです 致死率は0.5%と それほど高くありませんでしたが 乳児 高齢者が多く死亡しました @香港風邪 1968~69年に 中国が発端で 香港から流行が始まったインフルエンザで H3N2型ウイルスが原因です 致死率は アジア風邪より低いものでした このように 20世紀に起こったパンデミックは 全て鳥インフルエンザウイルスが原因でした @新型インフルエンザ 2009~10年に メキシコから始まり パンデミックとなりました 致死率は2~9%で 死亡者の9割に肥満 糖尿病がありました H1N1型が原因ウイルスでしたが ブタ由来だったのが特徴的です ブタの体内で トリ ヒト ブタそれぞれの インフルエンザウイルスが混在し 遺伝子再集合が起こり 新たな雑種ウイルスが誕生したのです @新型コロナウイルス・COVID-19 そして今 新たなパンデミックとして 新型コロナウイルス・COVID-19の感染が 世界中で猛威を振るっています 一般論として パンデミックが起きると 世界で数千万人以上の犠牲者が出る可能性があると 推測されています そんな状況にならないと良いのですが
高橋医院