心房細動の症状と予後
心房細動の症状と予後について説明します <心房細動の症状> 脈はまったく規則性がなく てんでバラパラになり 動悸がして息苦しくなり 時にはめまいや胸痛などの症状が 出る場合があります 毎分120~150の脈拍数は 安静時の2~3倍にもなります 安静にしていても 症状が現れることがあります 一方 運動したり精神的に興奮したりすると 一時的に房室結節の調節が利かなくなり 急に脈拍数が増加して 息切れやめまいなどの症状が 出ることがあります 症状を自覚しない人が約半数近くいて 特に高齢者では 自覚しない人が多いのが特徴です 若い人 女性は 逆に自覚症状を感じやすい 症状を自覚する人でも 日常生活に差しさわりがある 強い症状と感じるのは 1/3程度です 自覚症状の強さと 死亡率 脳梗塞・心不全の発症率とは 関連がありません <発作性・持続性・慢性> 心房細動は *時々発作の起こる発作性心房細動 *心房細動の状態がずっと続く 持続性(慢性)心房細動 に分けられます @発作性心房細動 心房細動の46%が発作性です 心房細動は 初めのうちは起こって 数時間~数日以内(7日以内)に 自然に止まります 発作が起きやすい状況は お酒を飲んだ翌日 夜勤明け 運動後 などで 身体にいつもと異なる負担がかかったときに 起きやすくなります @慢性心房細動 心房細動の54%が慢性です 発作を繰り返している間に 持続時間の長い(7日以上) 持続性心房細動となり やがて 常に心房細動が起きている状態の 慢性心房細動に移行します 1年間に5%ほど 10年間で80%が 慢性化するとされています このように 最初は発作性として発症しますが やがて 発作の回数が増え 持続時間も長くなり 長時間かけて慢性に移行していくのが 心房細動の典型的な経過です 発作性心房細動よりも 慢性心房細動になった方が 体がその状態に慣れてきて 症状は楽になることが多いとされます しかし 慢性化すると 薬物治療やカテーテル治療の効果が 期待できなくなり 根治は求められなくなります 前述したように 慢性化しないうちに 根治的治療を受けられるタイミングを 見つけることが大切です どうして慢性化すると 治療効果が期待できなくなるかというと 慢性化により 構造的リモデリングが生ずるからと 言われています 進行して慢性化してくると 心筋細胞同士の間の間質が線維化し始めて 心房の構造的リモデリングが生じ 心房全体が拡張していきます こうした構造的変化により 根治が難しくなります <再発> 心房細動は再発しやすく 特に冬から春は再発しやすいとされます 高血圧などの危険因子の放置 生活習慣を改善しない ことで再発が促されるため それらの改善が予防につながります <予後・ほうっておくとどうなるか> 死亡率は 健常人の1.5~2倍で 高血圧の1.5~3.5倍 糖尿病の2倍と ほぼ同様の高さになります また 脳梗塞の発症リスクは 心房細動がない人に比べ5倍も高く 高血圧の3.4倍と比べても高値です 心不全にもなりやすく 発症リスクは4倍で こちらも高血圧の1.1~1.2倍より高めです このように 心房細動の予後は良くないので 健診などで指摘されたら たとえ症状がなくても受診して精査すべきです <日常生活での注意> 心房細動を誘発する期外収縮の発症は *精神的ストレス *睡眠不足 *疲労 *過度のアルコール摂取 などによって増加するので 日常生活では そうしたことを避けるように注意するべきです *過食を控え 減塩を心掛ける *定期的にウオーキングなどの軽い運動をする (強度の運動は心房細動のリスクを増やす) *十分な睡眠をとる *肉体的 精神的ストレスを避ける *禁煙 節酒する といった心掛けが大切です <心房細動の予防> ACE ARBなどの降圧薬 スタチン製剤などの脂質異常症改善薬が 心房細動の発症を予防します 但し 既に発症している場合は これらの薬剤の効果は期待できません
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