新型コロナウイルスのクラスター対策については
テレビで拝見する機会も増えた
東北大学の押谷先生がご講演され

このウイルスの感染がどのように広がるか
解説してくださいました


@ウイルスは 
 軽症例は喉に 重症例は肺にいる

新型コロナウイルス感染症の特徴は
無症候性 軽症の方が多いことですが

無症候性 軽症の方が多いことを示す図

軽症者は
ウイルスが喉に留まっているのに対し

重症者は
ウイルスが肺で増殖して肺炎を起こします

ウイルスは 軽症者は喉 重症者は肺にいることを示す図

@ほとんどの感染者は 他の人にうつさない

とても興味深いのは
このウイルスに感染した人の
80%は他の人に感染させず
10%はせいぜい1人しか感染させない
という事実です

ほとんどの感染者は他の人にうつさないことを示すグラフ

だったら 
どうして感染が広まるのかというと
残りの10%の人たちのなかで
たくさんの人に感染させる人がいるからです


@症状がなくても他の人にうつす感染者がいる

もうひとつ このウイルスが特徴的なのは

無症候性または軽症な人でも
他の人にウイルスを感染させるという点です

無症候性または軽症な人でも他の人にウイルスを感染させることを示す図

インフルエンザなどでは
症状がある患者さんが他の人にうつすので
無症候でも感染させると聞いて
そんなことがあるのかと半信半疑でしたが

2月にドイツから出たこの論文を読んで 納得しました

2月にドイツから出たこの論文に書かれた図

一番上のオレンジ色の中国人の女性が
ビジネスでドイツに来て
ドイツにいる間は元気でミーテイングに参加し
4日後に帰国しました

そして中国に帰国後 かぜ症状を認め
4日後にPCRでコロナ陽性と診断されます

Patient 1 2さんは
彼女と1~2日間一緒にミーテイングして
彼女が帰国したあとに
症状が出て PCRでコロナ陽性と診断されます

一方 Patient 3 4さんは
中国人の彼女とは全く接触はなく
Patient 1さんが症状を認める前に
彼と数回コンタクトしました

そして その後 発症してPCRも陽性でした

中国人もPatient 1さんも
それぞれ症状が出る前に
他のひとにうつしたと考えられます

このウイルスは そういう厄介なウイルスなのですね


@無症候性 軽症者が作る 見えにくいクラスター

ということで
無症候性または軽症の方から他の人にうつり
密かに見えにくいクラスターを形成して
感染が拡大する可能性があるのです

見えにくいクラスターにより感染が拡大することを示す図

@感染者が他の人にうつしやすい 3密条件

さて ほとんどの感染者は他の人にうつしませんが

他の人にうつす感染者は
密閉 密集 密接の 3密条件下でうつすことが
明らかにされました

3密条件の説明図

@軽症の感染者が 3密条件下で他の人にうつす

そして興味深いことに 

他の人にうつす感染者は
ほとんど無症状でも 
3密条件下で他の人にうつす

ことが判明したのです

ほとんど無症状でも3密条件下で他の人にうつすことを示す図

また その際の感染様式は
必ずしも咳やくしゃみを介した飛沫感染ではなく
エアロゾルのようなものも
想定されることもわかりました


飛沫感染ではなくとも感染することを示す図

つまり 
症状が軽いので逆に活動性があり
3密条件の場所に出かけた感染者が
他の人にうつして
クラスターを形成している可能性が大きい

実際にクラスターを形成した人は
ちょっと喉が痛い程度の人がほとんどでした


@軽症者の方が 喉からたくさんのウイルスを出す

そして 軽症者の方が
喉から出すウイルス量が多いことも
明らかになりました

軽症者の方が喉から出すウイルス量が多いことを示す図

ということで

症状は軽くて元気で 
ウイルスをたくさん排出する
青壮年や中高年の活発な感染者が
3密の場所に出かけて
クラスターを形成していく

各年代の感染者がクラスターを形成することを示す図

ウイルス排出量は
重症度でなく年齢に依存するとされ

ウイルス排出量は重症度でなく年齢に依存することを示す図

一般に若い人はウイルス排出量が少ないのですが

なかには たくさん排出する
症状が軽い若い感染者もいるのでしょう

本当にコントロールしにくい厄介なウイルスです


@ソーシャルデイスタンス 接触機会減少の大切さ

しかし こんな変なウイルスでも

ソーシャルデイスタンスをしっかりとり

人との接触機会を減らせば(目標は80%!)

大規模な流行を収束させられることが示されています

ソーシャルデイスタンスをとれば流行が収束することを示す図
人との接触機会を減らせば流行が収束することを示す図


ですから

*3密を避けて

*ソーシャルデイスタンスをとって

*人との接触機会を減らすため
 stay homeで 出歩かないようにしましょう

と勧められているわけです


@今後の課題

感染者でも軽症であれば 入院しなくてもよくなり
重症者用の入院ベッドを
占領しなくてもすむようになったので

今後は 積極的にPCR検査を行い
クラスターを形成する可能性がある軽症の感染者を見つけ
隔離することが大切になってきます

そういう意味からも 押谷先生は
PCR検査がなかなか増えない現状に
危機感を持たれていました

PCR検査の問題点を指摘する図

また 懸念される状況として

*海外からの帰国者の感染例の増加

*医療機関の院内感染の増加

*無症候者からの新たな見えにくいクラスターの増加

の諸点を挙げられていました

今後の問題点をまとめた図

それにしても

感染者のなかでは少数派の
人に感染させてしまう軽症の感染者は
なにか特徴的なプロファイルを
有しているのでしょうか?

そこが とても気になります
高橋医院