線維化の主役 筋線維芽細胞
線維化反応の主役は ECMを産生する筋線維芽細胞です <筋線維芽細胞とは?> 線維芽細胞は 炎症部位に遊走 集積し 活性化されてECMを産生し 線維化の中心的な役割を果します 創傷治癒過程で炎症が起こると さまざまな刺激により線維芽細胞は 運動機能を有する筋線維芽細胞に転換されます 筋線維芽細胞は 活性化によりα-SMAを表出するようになり これが筋線維芽細胞を同定するマーカーになります @ECMの産生 筋線維芽細胞は 炎症部位に多量に存在するサイトカイン ケモカイン 成長因子 などの刺激により コラーゲン フィブロネクチンなどのECMを 多量に産生するようになります また ECMの量的 質的変化を察知することができます ですから ECM蓄積のダイナミックな変化 リモデリングが 筋線維芽細胞を刺激してECM産生を修飾するという フィードバックのようなシステムが存在します @炎症 血管新生などへの関与 筋線維芽細胞は ECMを産生するだけでなく ROS 脂質シグナル因子 サイトカイン ケモカインなどを産生して 炎症反応や自然免疫反応の活性化に関わり 血管新生でも重要な役割をはたします @線維化抑制治療の標的としての筋線維芽細胞 筋線維芽細胞は線維化のキープレーヤーですから これを不活化したり アポトーシスを起こさせれば 過剰な線維化を制御することができるため 線維化抑制治療の標的になっています <線維芽細胞の起源> 多くの間葉系由来の細胞が 筋線維芽細胞の起源と推測されています *間葉系ストローマ細胞 間質を支持する細胞の一種で 発生過程では 活性化され機能を発現していますが 健常組織では 不活化され機能を発現していません しかし 炎症などの病的状況になると活性化され 筋線維芽細胞の機能を発現します *組織常在線維芽細胞 間葉系由来の細胞で 臓器によって種類は異なりますが 活性化機序は同じです 皮膚 肺では 組織常在線維芽細胞が増殖 活性化して 筋線維芽細胞になります 肝臓では 星細胞が筋線維芽細胞になります *EMT Epithelial mesenchymal transition 上皮細胞から間葉系細胞への転換現象で 胎生期の器官形成過程で TGF-β EGF FGF-2 などにより誘導される 重要な生理的な現象です 創傷治癒過程でもEMTが生じて 筋線維芽細胞の源となるとされています 但し 肝臓の線維化における 肝細胞 胆管上皮細胞のEMTの存在は 疑問視されています *末梢血前駆細胞 Fibrocytes I型コラーゲン フィブロネクチン ビメンチン を産生する細胞で 末梢血の0.5%ほど存在し さまざまなケモカインレセプターを発現しています TGF-βの作用により筋線維芽細胞に転換されます *血管内皮細胞 EndoMT(Endothelial-mesenchymal transition)により 内皮細胞は間質系細胞に転換します EndoMTは 胎生期の心臓の発達段階で見られる生理的現象ですが 慢性炎症下では 心臓 腎臓 肺などで TGF-βにより筋線維芽細胞に転換され それぞれの線維化に関与します *ペリサイト 血管内皮細胞を裏打ちして 血管構造を安定に支持する細胞で さまざまな組織に存在し多彩な機能を示します 筋線維芽細胞に転換し 線維化への関与の可能性が指摘されていますが 臓器により異なり不明な点も多くあります 肺では 否定的な報告 肯定的な報告の両方があります 肝臓では 類洞のペリサイトが星細胞(HSC)と呼ばれ ビタミンA貯蔵 血流調節 免疫調節作用を 有していますが 線維化過程では HSCが筋線維芽細胞に転換します 肝での線維化がおさまると 筋線維芽細胞は不活化され 静止状態のHSCに変換されます *組織常在間葉系ストローマ細胞(MSC) 腎 肝 肺 心臓での線維化に関与します *Mesothelial cells 中皮細胞 中皮細胞は TGF-βにより誘導される MMT(mesothelial-to-mesenchymal transition)により 筋線維芽細胞に転換されます *組織固有の筋線維芽細胞 肝臓では 門脈に HSCとは起源が異なる組織固有の筋線維芽細胞が存在して 胆汁うっ滞で生じる線維化に関与します 腎臓では ボウマン嚢に存在するPodocytesが 組織固有の筋線維芽細胞です @TGF-βの重要性 このように炎症下では さまざまな細胞が筋線維芽細胞に転換されますが その転換の多くにTGF-βが関与しています
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