新型コロナ・マイクロ飛沫感染とは何か?
患者さんからよく質問されるのが 新型コロナウイルスは空気感染しますか? ということです 最近は「エアロゾル感染」という言葉も 頻繁に見聞きするので 混乱されている方も多いと思います <空気感染とは何か?> 実は 空気感染の定義自体が それほど定まっているものではありません 空気中に存在する微粒子の中にウイルスが存在し ヒトがその微粒子を吸引することで ウイルス感染が生じることがあります こうした感染様式は 「飛沫感染」と「飛沫核感染」に大別され 飛沫核感染を 空気感染と呼ぶことが多いようです <飛沫感染と飛沫核・エアロゾル感染> 飛沫感染と飛沫核感染は 何が違うのでしょう? @飛沫感染 空気中に存在し ウイルスを含有する微粒子のサイズが 直径5マイクロメートルより大きい場合を 飛沫感染と言います 飛沫感染を起こす微粒子は 咳 くしゃみなどで発生しますが 微粒子は重いので すぐに落ちて その飛距離は1~2mほどです 飛沫感染を起こす代表的なウイルスは インフルエンザウイルス RSウイルスなどで 新型コロナウイルスの主たる感染様式も 飛沫感染と考えられています 飛沫感染は サージカルマスクで防げます @飛沫核感染・エアロゾル感染 微粒子のサイズが 直径5マイクロメートルより小さい場合を 飛沫核感染と言います 最近よく聞かれるエアロゾルは この小さな飛沫微粒子を指します 痰の吸引などの医療処置の際に発生しますが 会話 呼吸などでも発生します 飛沫核感染を起こす微粒子は 軽いので 長時間空気中に存在するのが特徴です 飛沫核感染を起こす代表的なウイルスは 麻疹ウイルス 水痘ウイルスで その基本再生産数(何人に感染させるかという指標)は 麻疹は12~18 水痘は8~10と 飛沫感染を起こすウイルスより多い傾向があります ちなみに 新型コロナウイルスの基本再生産数は 2前後と考えられています 飛沫核感染を予防するには サージカルマスクでなくN95マスクが必要です <空気感染と「マイクロ飛沫感染」は異なる!> このように エアロゾル感染という言葉が有名になってきましたが まだ空気感染と混同されることが少なくありません こうした状況を受け 新型コロナウイルスの感染状況を分析し 対策を厚生労働省に助言する専門家組織は エアロゾル感染と空気感染の混同を避けるために エアロゾル感染を 「マイクロ飛沫感染」 という統一呼称で呼ぶことを提案しました マイクロ飛沫感染は小さな飛沫で 換気の悪い密室で長時間漂い 少し離れた距離でも感染が起きるけれど 空調などを通じて長い距離でも感染が起きる空気感染とは 異なる概念であること を強調し マイクロ飛沫感染は 麻疹 水ぼうそう 結核のような空気感染とは違うと はっきり区別してお知らせしたい とのコメントを発表しています <新型コロナウイルスの飛沫感染 マイクロ飛沫感染> 新型コロナウイルスが 空気中に存在するウイルス粒子を含んだ微粒子で 拡散することは間違いありません また 新型コロナウイルスが 直径1マイクロメートル以下の 微小粒子・エアロゾルに存在することも 確認されています くしゃみ 咳 発話などによって 感染者の口や鼻から放出された新型コロナウイルスは ウイルスが含まれる飛沫の大きさによって 近距離に落下するか 空気中をしばらく浮遊するか決まります 大きな飛沫は比較的重いので 1~2メートル飛んだあと 床や物体の表面にすぐに落ちるのに対し 直径数マイクロメートル程度の 小さな飛沫核・エアロゾルは しばらくの間空気中を浮遊し 遠くまで移動するので ヒトに吸入される可能性が生じます <マイクロ飛沫感染のリスク> 新型コロナウイルスは エアロゾル中に少なくとも3時間は残存するようで エアロゾル粒子は 最大16時間 空気中に留まるという報告もあります したがって たとえ距離が離れていても エアロゾルの吸入によって 感染する可能性があります 一般的に エアロゾルはすぐに乾燥しますし 乾燥した状態で ウイルスは長く感染力を保てないため あまり問題になりません しかし 人が密集していたり 湿気がこもっていたり 換気が悪く風通しの悪い密閉環境では エアロゾルは水分を保ち感染力がある状態で 長時間 空中を漂い続けます こうしたエアロゾルが漂いやすい環境では 口から吸いこむことで 感染する可能性があります また くしゃみや咳により発生する飛沫よりも 呼吸や会話中に発生するものはずっと小さく エアロゾルとなります つまり くしゃみや咳でなくても 呼吸や会話によるエアロゾルにより 新型コロナウイルスは感染してしまいます さらに エアロゾルは 声が大きくなるにつれて多く出るようになるので 要注意です
高橋医院