今年の冬
新型コロナとインフルエンザが同時に流行ったら
発熱の患者さんに
どういう順番で検査をしようか
先日のブログで心配しました

だって 新型コロナもインフルエンザも
咳や発熱などの症状は似通っていますから
症状だけからどちらか診断するのは困難です

新型コロナとインフルエンザの症状の類似を示す図

インフルエンザには効く薬があるし
新型コロナは重症化すると厄介だから
まず新型コロナのPCR検査をして
その結果に応じてインフルエンザの対策をするか
などと考えていましたが

新型コロナとインフルエンザの重症化の違いを示す表

もしかしたら 
その心配は杞憂に終わるかもしれません

というのも 
今現在の 南米諸国 オセアニア諸国などの
南半球の国々でのインフルエンザ流行は
例年に比べてとても少ないようで

7/22のウォールストリートジャーナルに
その報告がなされました

ウォールストリートジャーナルの紙面

北半球が真夏に向おうとしているこの時期は
季節が逆の南半球は まさに真冬で


北半球と南半球では季節が逆なことを示すイラスト


例年なら インフルエンザが猛威をふるっている季節です


北半球と南半球でインフルエンザ流行時期が異なることを示す図


ところが今年は 様相が違うようで

南米のチリでは
3月下旬以降に発症した新型コロナ患者さんおよそ1300人のうち
インフルエンザにかかった患者さんはごくわずかで
インフルエンザが最も流行する7月最初の2週間に確認された
インフルエンザ感染は なんとゼロだったそうです!

チリで今年のインフルエンザ流行が0だったことを示すグラフ

さらに インフル以外のウイルス性呼吸器感染症も
減っているとか

アルゼンチンでも
インフルエンザ感染者は42万人から15万人へと
64%も減少しているそうで

チリ アルゼンチンの場所を示す地図

新型コロナが大流行しているブラジルでも
インフルエンザの感染者数は約4割減で
死者数は半減しているそうです

ブラジルでインフルエンザ患者 死者数が減少していることを示すグラフ

一方 オーストラリアでは
6月後半の2週間に確認されたインフルエンザの感染者数は
昨年は2万2047人だったのに
今年は なんと85人にとどまっているそうです


ニュージーランドでも
インフルエンザの入院者数が例年の水準を下回っており
死亡率も低下しているとのこと

首都ウェリントン郊外の診療所の医師は
インフルエンザの患者数が前年冬季と比べ
9割減ったと推計しています

オーストラリア ニュージーランドの位置を示す図


WHOも7/20のインフルエンザレポートで
南半球のインフルエンザ報告数が
例年に比べて激減している
と記述しています

南半球のインフルエンザ報告数の激減を示すWHOのインフルエンザレポートの表


関係者や専門家は
この現象には
マスク着用や渡航制限などの
新型コロナ封じ込めに向けた措置が寄与している
と推測しています

但し 南半球の国々は
厳格なロックダウン
大規模な集会の禁止や学校閉鎖
マスク着用 手洗い ソーシャルディスタンシングの習慣化
といった徹底した封じ込め策を行い

さらに 
3月以降は国際便の乗り入れ禁止まで行ったので
例年 インフルエンザを北半球から持ちこむ旅行者が
入国しなかったことも
良い影響を及ぼしたと考えられます


こうした徹底した新型コロナ対策が功を奏して
感染制御に成功した
優等生国のニュージーランドの公衆衛生専門家は
厳しい国境封鎖措置に加え
ソーシャルディスタンシングなど
警戒レベルに応じた対応策が奏功したと指摘しています

語るニュージーランドの公衆衛生専門家

 

一方 WHOの幹部は
南半球の国々が導入したような
徹底した封じ込め策を実施しない限り
インフルエンザの流行は戻る可能性があり
制限措置の解除と経済再開を進める欧米諸国は
通常通りインフルエンザ流行への備えを行うべきだ
警鐘を鳴らしています

確かに ウイルス感染に対しては
最悪の事態を想定した予防策を行うべきなので
日本でも例年にも増して 
しっかりワクチン接種を行うべきでしょう

ワクチンを接種している様子

当院に来られる患者さんも
今年は今からインフルのワクチンについて
問い合わせされる方が少なくありません


それにしても 
新型コロナ対策の
マスク着用 手洗い
ソーシャルディスタンシングの習慣化などが
インフルエンザ流行阻止に役立つなんて
予想外の嬉しい誤算かもしれません

新型コロナウイルス対策をまとめたイラスト

日本もこの冬 
南半球の国々のようになることを願いたいです!
高橋医院