新型コロナワクチン最新情報・ワクチン接種開始の流れのなかで
前回ご紹介したように 安全性への懸念が残る 新型コロナウイルスのワクチンですが 世界はものすごい勢いで 接種開始に前のめりになっています <緊急使用許可の申請へ> ファイザーは11/20 モデルナは11/30に 相次いで ワクチンの許可を行うアメリカの食品医薬品局・FDAに 自社のワクチンの緊急使用許可を申請しました またアストラゼネカは イギリス政府に緊急使用承認審査を要求しています 通常 FDAにワクチンを承認してもらうためには 少なくとも6カ月間 数万人の被験者の追跡調査を行う臨床試験を 完了させる必要があり さらに ワクチンの製造施設を視察し 詳細な製造計画や製品の安定性データを調べ 大量のデータを詳しく調べるために このような確認作業だけで1年以上かかります これまで承認されたワクチンは 全てそうした過程を経て承認されています 一方でFDAは 緊急使用許可により 公衆衛生の緊急事態において未承認の製品の利用を許可でき これまでに H1N1型インフルエンザやジカ熱のような感染症を対象とした 診断法や治療法について 慎重に緊急使用許可を出してきました しかし 緊急使用許可によって 新たなワクチンが一般市民に使用されたことは これまでに一度もありません 健康な人に広く接種されるという点で ワクチンは他の医療品とは異なり そのために認可基準も高く設定されています ですから 緊急使用許可によるワクチン承認には 重要な懸念があります 一刻も早い接種開始を優先するあまり そのワクチンの臨床試験を完全なものにするための 追加の安全性データの集積などが 蔑ろにされるリスクがあるかもしれませんし 「より良い」可能性のある他のワクチンの開発に 支障が起こってくる可能性もあります <世界のワクチン接種開始状況> @アメリカ ファイザーのワクチンは12/10 モデルナのワクチンは12/17に それぞれ接種開始の許可が下りる予定で 医療関係者 介護施設の入居人を対象に 12月中旬から接種を開始して 年内2000万人を目指しています @イギリス ファイザーから申請された緊急使用承認審査を承認し 既に報道されているように 12/7から接種を開始しました 年内に500万人の接種を目標としています 介護施設の入居者 スタッフ 医療従事者 80歳以上 75歳以上 70歳以上 深刻な基礎疾患がある人 の順番で接種するそうです @ヨーロッパ ファイザーは12/29 モデルナは1/12に許可がおりる予定で 年末以降の接種開始を計画中です ちなみにフランスでは 59%が接種を受けるつもりはないと答えているそうです ワクチン接種により社会が集団免疫を得るには 接種率が65~70%に達しないといけませんが 2021年末までに ファイザーは 6.5憶人 モデルナは 2.5~5憶人分のワクチン生産を計画しています <日本の状況> 日本政府は ファイザーと 来年6月までに6000万人分 モデルナと 来年9月までに2500万人分 アストラゼネカと 6000万人分 のワクチン供給の契約を結んでいます また 12月の国会で予防接種法改正案が成立し *国が買い上げたワクチンは接種費用を無料とし 個人や自治体に負担は求めない *接種後に重い副作用による被害が出る場合に備え 患者の救済措置を整えるとともに ワクチンメーカーが払う損害賠償金を 政府が補償する契約を結べるようにする *接種は国民の努力義務とするが 有効性や安全性が十分に確認できない場合は 努力義務を適用しない ことが決定されました 日本も供給され次第 いつでも開始OKという状態です しかし そうした状況に懸念もあります まず ワクチンは人種によって差がある免疫反応に作用するものですから 日本人での臨床試験が必須ですが 新型コロナでは 海外で承認を得たワクチンの 国内審査なしでの「特例承認」が認めてられており はたしてそれで本当に大丈夫なのか?という不安な声も聞かれます また 日本人の30%ほどが 副反応が心配で接種に及び腰である という調査結果もあります <ワクチン接種を敢えて控えるという選択> 書き手も 承認されたからといってすぐに接種しようとは思っていません もう少し時間をかけて様子を見たい いうのが正直なところです もうひとつ心配なのが 日本社会に独特の同調圧力です 接種するかどうかを自分で決める自己決定権が 社会のなかで尊重されるか? 患者さんたちのお話をうかがっていても ワクチンに過度に期待される方がとても多く 「副反応のことを考えると 調査に必要な接種人数が あと0がふたつくらい足りない」 などとお話しすると 皆さん とてもがっかりされてしまいます それでなくても 「オリンピック開催のためには国民全体でワクチン接種を」 などという政府誘導の世論が形成されかねず そうした風潮のなかでは 接種しない人を社会的に差別するようなことが起こりかねないと 危惧しています 社会が ワクチン接種を敢えて控えるという個人の選択を尊重することが とても大切だと思います
高橋医院