ポルトガルの「液体の宝石」・ポート
大航海時代にスペインと覇権を競っていたポルトガルには スペインのシェリーに勝るとも劣らない酒精強化ワインがあり その代表がポートワインです ポートワインは ポルトの近くのドウロ地方で造られる酒精強化ワインで 「ポルトガルの宝石」と称される甘口の赤ワインです シェリーの項で解説したように 酒精強化ワインはアルコール度が18度前後と高めですが ポートは酒精強化ワインのなかでもアルコール度が高く 19度~22度までに限定されています 濃厚な甘さと深いコクで 世界中の国々で食後酒として楽しまれるポートは イギリスと縁が深いお酒で 元々イギリスに輸出するために作られ 現在でもポートの最大のマーケットはイギリスです 17世紀末 イギリスとフランスが植民地を巡って第2次百年戦争を始め そのためイギリスは 国内で人気が高かったボルドーワインの輸入を 止めざるを得ませんでした そこでイギリスは ポルトガルの色や渋味の強い辛口ワインに目をつけました さて もともとドウロ川沿いに建てられたシトー派修道院では 発酵途中のワインにブランデーを添加して作っていました またしても出ました 修道院!(笑) で 添加するブランデーのアルコール度数は77度もあり ワインを発酵させている酵母が アルコールで殺菌されるため発酵が中断し 使われなかったブドウ果汁中の糖分が残り 渋みやアルコールとバランスの取れた まろやかな甘口のワインに仕上がります この手法を知ったイリギスのワイン商は ポルトガルの辛口ワインの品質を保ったまま ロンドンまで輸送するため シトー派修道院をまねて 船積み前のワインにブランデーを添加し安定させました これが 酒精強化ワインのポートの始まりです その後 ポートはイギリスで爆発的な人気を獲得し 「液体の宝石」と称され ボルドーのシャトーの格付けより100年も早い1756年に 世界初となる原産地統制制度が導入されました イギリスから空荷で出港した船は 大西洋のニューファンドランド沖でタラ漁をして ポルトガルに向かいますが ポルトガルではバカリャウと呼ばれる干しダラが 大人気の国民食のため この航路は一気に人気となります タラを卸したイギリスの船は ポートワインを積んでイギリスに戻り ポート好きのイギリス人の愛飲家を満足させます ウイン・ウインの航路だったのですね(笑) ポートは ブランデーの添加量と添加するタイミングによって アルコール度数と甘さが決まりますが 普通は ワイン4に対し1の量のブランデーを加えます 若いタイプのルビー色のポートは 通常のワインと同じように短期間の樽熟成をして出荷されます 茶色がかった色のトウニーポートは 2年以上の長期間の樽熟成によって意図的に酸化熟成させたタイプで 熟成感が気軽に楽しめるのが何よりも魅力です 10~20年熟成のものもありますが 100年以上の熟成が可能といわれている高級なヴィンテージポートもあり イギリスの上流階級では 子供の誕生年のヴィンテージポートを 買っておく習慣もあったそうです 白ブドウで造られるホワイトポート フルーティーな早飲みタイプのロゼポート もあります 少し冷やしてストレートで食後酒として楽しみますが デザートやチーズと合わせても ポートの自然な甘みが味わいを引き立てます また イギリスで鉄板の組み合わせとして知られているのが イギリスを代表するブルーチーズ スティルトンとポートのマリアージュです ポートは冷蔵庫で保存すれば 抜栓後も1ヵ月程度は問題なく 食後や就寝前に少しずつ楽しむこともできます ポートの原料になるブドウは ドウロ川上流のドウロ地区で栽培され 現地の醸造場で作られたワインは 翌年ポルトの対岸に立ち並ぶヴィラ・ノヴァ・デ・ガイヤの酒庫に運ばれ 熟成・ブレンド・調整されたあと ポルトの港から輸出されます ドウロ地区には30000を超えるブドウ栽培農家があり 90社ほどあるシッパーと呼ばれるネゴシアンが 農家からブドウ・ワインを買ってポートを作ります ポートの味の違いは「ブドウ品種よりシッパー」といわれるほど シッパーの腕が重要とされていて 多くのシッパ―はイギリス人が創業しています 書き手は ポルトの町は大好きですが うーん 食後にポートを優雅に楽しむには まだ人生経験が足りないかもしれません?(苦笑)
高橋医院