シャンパーニュ地方のワイン
シャンパーニュ地方は フランス北東部に位置し フランスでワインが造られる産地の最北端の地です 冷涼な気候を生かし 伝統的な瓶内二次発酵による 最高品質のスパークリング・ワインのシャンパーニュが この地で造られています <シャンパーニュを造るブドウ品種と地域> @品種 *シャルドネ *ピノ・ノワール *ピノ・ムニエ 通常はこれらの白黒3種類のブドウを アッサンブラージュして作り ブドウの組合せにより シャンパーニュの個性が決まります ピノ・ノワールが多ければ 力強くふくらみがある飲み口 ピノ・ムニエが多ければ 果実味が豊かで柔らかい飲み口 シャルドネが多ければ 繊細で爽やかになります *ブラン・ド・ブラン 白ブドウのシャルドネ100%で造られ すっきり軽快な味わいになります *ブラン・ド・ノワール 黒ブドウの ピノ・ノワール ピノ・ムニエだけで造られ 複雑でふくよかな飲み口になります @地域 シャンパーニュが造られる地区は *コート・デ・ブラン *ヴァレ・ドゥ・ラ・マルヌ *モンターニュ・ドゥ・ランス の3地区です これらの地域には ルイ・ローデレール クリスタル ドン・ペリニヨン ボランジェ など数多くの高級シャンパーニュが存在します <シャンパンを名乗れるのは シャンパーニュ地方産のワインだけ> 「シャンパン」は 瓶内での発酵の過程で生じる二酸化炭素を さまざまな方法でつかまえ 発泡性ワインとして造られます こうした発泡性ワイン・シャンパンは シャンパーニュ地方以外でも造られていて *フランスでは ヴァン・ムス― クレマン *ドイツでは ゼクト *イタリアでは スプマンテ プロセッコ ; *スペインでは カバ *イギリスでは スパークリング・ワイン などと呼ばれています なかでも最近の話題は 地球温暖化の影響で イギリスでもワイン用のブドウが栽培できるようになり それを用いてシャンパーニュのメーカーが 王室御用達のスパークリングワインを製造していることです しかし「シャンパン」と名乗れるのは シャンパーニュ地方で造られる発泡性ワインだけで 他の地域で作られる発泡酒は あくまでスパークリングワインです <瓶内二次発酵> 発泡性ワインは 「瓶内二次発酵」 という技術を基に造られます まずベースとなるスティルワインを作り 瓶に入れてから 酵母と蔗糖を加え 栓をして密閉します ここで 大前提 必要となるのが 二次発酵により瓶内の圧力が相当高くなっても 粉々に割れない頑丈な瓶です スティルワインは こうした頑丈な瓶の中で 年間平均気温10℃の冷涼な地下カーブで 寝かせられます 瓶内で二次発酵が始まると 酵母は糖を発酵させて二酸化炭素を発生させ 二酸化炭素はワインに溶け発泡性になるのです 長い熟成の間に 瓶内では複雑な香りと味が形成され 澱からアミノ酸が発生して旨味も加わります 最低貯蔵期間は15ヶ月で たいていは2~3年寝かせます <発酵後に残る酵母の澱をどう取り除くか> 瓶内二次発酵により生じた澱が 何日も何週間もかけて瓶内に貯まっていきますが この澱をどのようにして取り除くか? 最初に考案されたのが ピュピトルという専用の棚に 瓶の口を下向きにして差し込んで 1本ずつ手で回す作業を 毎日定期的に継続していく方法です 毎日1/8ずつ瓶を回転させます 瓶を載せた台ごと回転させる機械を用いて 瓶を水平から垂直になるように 少しずつ傾けていく方法も考案され ジャイロパレットという 自動の動瓶機器も発明されました いずれにせよ 暗くて冷涼な地下カーブのなかで 膨大な数の瓶を毎日毎日 1本1本少しずつ回転させていく作業は 大変なものだったことでしょう こうして澱は 瓶の首の部分に下降して貯まりますが この首の部分を マイナス20℃の塩化カリウム溶液に漬け澱ごと凍らせてから 王冠栓を外すと 瓶内の圧力により澱の入った氷塊が飛び出します そのあと 瓶の口を上にして 取り除かれた分量の 原酒にショ糖を加えたリキュールを補充し 仕上げのコルクで瓶に封をして コルクが飛び出さないように針金で固定します こうして 持続性のある細かい泡と繊細な風味を持つ 極上のスパークリング・ワインが 出来上がるのです <シャンパンの甘さ> シャンパンの甘さは 最終工程で加えられるリキュールに含まれる糖分により 調整されます *エクストラ・ブリュット ほとんど糖分を加えない極辛口タイプで 糖度は1リットル当たり 0~6g *ブリュット ほとんどがこのタイプで 酸味と甘さのバランスが良く 食前酒としても食中酒としても飲まれます 糖度は1リットル当たり 6~15g 以下 糖度により エクストラ・セック セック ドミ・セック ドゥー と続きます <キュベ・クローズ式> 二次発酵を 瓶でなくタンクで行う方法で この方法によりイタリアのプロセッコなどが造られます <ドン・ピエール・ペリニョン> 最後にシャンパンの生みの親として有名な ドン・ピエール・ペリニョンを紹介します 彼はシャンパーニュ地方のランスにある オーヴィレール大修道院に居た盲目の修道士で そこで酒庫番をしていました 彼が1680年に 瓶内二次発酵によるスパークリング・ワイン製造法を 確立したとき 「まるで星を飲むようだ」 と語ったとされています 彼の銅像は モエ・エ・シャンドンのシャトーの前に置かれ シャンパーニュを訪れた人々を いつも両手を広げて出迎えています ちなみにナポレオンは 大のシャンパン・ラヴァーでしたが 「シャンパンは 戦いに勝った時に飲む価値があり 負けたときには飲む必要がある」 と語ったそうです 酒飲みの言うことは いつも難しいです(笑)
高橋医院