胆石と胆汁
尿管結石の解説をしましたが 結石つながりというわけでありませんが 最近 胆石の患者さんが立て続けに来院されたので 胆石の解説をしようと思います 胆石そのもののお話をする前に 胆石の原因となる胆汁が流れる経路について 説明します <胆管系と胆のう> @胆汁 肝臓では 脂肪の消化を助ける胆汁という消化液を 1日に約800ml作ります 胆汁の中には *コレステロール *胆汁酸 *リン脂質 *ビリルビン などが含まれています @胆管系 肝細胞で作られた胆汁は 隣り合う肝細胞の間に存在する 毛細胆管という細い管に分泌され その毛細胆管が集まり 胆管という太い管になります 胆管は肝臓を出て総胆管という管となり 総胆管は腸管とつながり そこを流れた胆汁は十二指腸に排出されます 総胆管の中間くらいの位置から 胆のう管という細い管が分枝して 肝臓の裏に存在する胆のうにつながります @胆のう 胆のうは 胆汁を一時的に貯蔵しておく場所で 人の握りこぶしほどの大きさで 50mlほどの容量があります 普段は胆汁を貯めておき 脂っこい食事などをすると 十二指腸から消化管ホルモンのコレストキニンが分泌され 胆のうはその働きにより収縮し 十二指腸へ胆汁を送り出して脂質の分解を助けます 胆汁の排出は 食後1時間から始まり 2~5時間で最高になります 胆のうの働きは複雑です 胆のう内に胆汁を一時的に貯蔵することにより 胆管の圧力を逃がすリザーバーのような役割のほか 貯蔵している胆汁内の水分や電解質を吸収し 5~10倍に濃縮した胆汁を作ります <胆石とは> 胆汁に含まれる コレステロールやビリルビンなどの成分が 凝縮されて結晶化し固まったものです *胆汁の成分の変化 *胆のうの運動機能 収縮力の低下 が主たる原因となって 胆石はできます 胆のうの運動機能 収縮力の低下が起きると 胆汁が十二指腸に流れにくくなるので 腸管からの胆汁酸の再吸収が減少して 肝臓で胆汁が作られる際に胆汁酸成分が減り コレステロールと胆汁酸のバランスが崩れるので 胆石ができやすくなります 胆のうの運動機能 収縮力の低下は 糖尿病 脂質異常症で起こりやすくなります <胆石の分類> @成分による分類 *コレステロール石 70% 胆石の70%を占め 胆のう内にできやすく ほとんどが1cmほどの大きさです コレステロールは 胆汁に溶けて腸管に排出されますが 多すぎて 胆汁酸とのバランスが崩れると 結晶化して析出します コレステロールの割合が10%以上になったり 胆汁酸の割合が50%以下になると 結晶化しやすくなります そして 胆のう粘膜から分泌される ムチンというタンパク質によって コレステロール結晶がくっつきあって 結石になっていきます *ビリルビンカルシウム石 25%を占め 胆管内にできやすい 胆汁の細菌感染が原因でできますが 衛生状態が良くなった現代では非常に稀です *黒色石 胆石の5%で ビリルビンカルシウムの1種の黒色色素が 中心となってできます 胆のう内に多く 小さく 砂状のものが多い 肝機能が低下した人 溶血性貧血の患者さんに多く 近年は 増加傾向にあります @できる場所による分類 *胆のう結石 70~80%を占めていちばん多く 半数以上がコレステロール胆石です 50代の女性に多い *総胆管結石 15~20%で 胆のう内にできた胆石が 総胆管に流れ落ちたものが大部分です 60~70歳代の高年齢層に多い *肝内結石 2%しかありません 大半がビリルビンカルシウム石 黒色石です 肝内に石ができると 胆汁がうっ滞するので 肝障害が起こりやすくなります
高橋医院