胆石の保有者は増加しています

<胆石の疫学>

日本人の5~10%程度で

日本人の胆石の頻度を示す表

年齢を重ねるにつれ保有率が上がり
60代では15% 70代では20%が胆石持ちです

年齢を重ねるにつれ保有率が上がることを示すグラフ

昔は中年女性に多かったのですが
最近は男性の方が多くなっていて
男女比は1:0.87です

男性の胆石保有者が増えていることを示す図

肥満 アルコール消費量の増加
患者さんの数の増加に関連していると
推定されています


<胆石のリスクファクター>

書き手が医学生の頃は 胆石は5Fに多い
*40・Forty 
*女性・Female 
*肥満・Fatty 
*白人・Fair 
*多産・経産婦・Fertile
と教わりましたが

5Fについてまとめた図
今 多いのは
*50~60歳代
*肥満の女性
*中心性肥満の男性
と言われています

胆石になりやすい人の特徴をまとめた図

@代謝動態 体重との関係

高トリグリセリド血症 脂肪性肝炎の患者さんでは
特に保有率が高く
炭水化物 糖質 動物性脂肪の過剰摂取や
運動の低下が関与しています

高トリグリセリド血症と胆石の関係を示す図
脂肪性肝炎と胆石の関係を示す図

一方 急な体重減少もリスクファクターになり
肥満者への胃バイパス手術
急激なダイエットなどによる
体重減少で胆石ができるようです


@胆石ができやすい体内の状態

*胆のうの収縮力低下
*コレステロール合成の上昇
*腸管での胆汁酸の吸収異常
といったことがあります

こうした状況下では
胆汁中のコレステロールが過飽和になり
結石ができやすくなるのです

胆のうの収縮力の低下は
脂質異常症 ダイエットなどで惹起されると
報告されています

胆のうは
十二指腸に脂質が入ってきたときに分泌される
消化管ホルモンのコレストキニンの作用で収縮しますが
高トリグリセライド血症などでは
コレストキンの感受性が低下するので
胆のう内に胆汁が溜まりやすくなる

コレステロールの合成が増えると
胆汁中へのコレステロールの分泌が増える

腸管での胆汁酸の再吸収が低下すると
胆汁中への胆汁酸の分泌が減る

一方 ビリルビンカルシウム石は
胃 食道の手術できやすくなります

@胆石をできにくくする因子

果実 野菜 ナッツ 多価不飽和脂肪酸 食物繊維
コーヒー カフェイン
などの摂取と
適度な運動と言われています

胆石をできにくくする因子についてまとめた図


<タイプ別の成因>

@コレステロール胆石

胆汁中のコレステロール濃度の上昇 結晶化
胆のう収縮能の低下

@ビリルビンカルシウム石

細菌感染による不溶性ビリルビンカルシウムの析出

@総胆管結石

胆のう 肝内結石の落下や
胆道感染によるものが多く
ビリルビンカルシウム石の頻度が高い

@肝内結石

細菌感染と胆汁うっ滞
ビリルビンカルシウム石の頻度が高い
但し 発症数は減少しています


<胆石発作の症状>

主たる症状は
腹痛 発熱 黄疸 悪心・嘔吐 などです

胆石の症状をまとめた表

腹痛の部位は
心窩部痛38% 右季肋部痛23.5% 両方13.9%
報告されています

胆石の症状が起こりやすい部位をまとめた図

発熱や黄疸 総胆管結石で多く認められます

胆石の症状についてまとめた図

また無症状の人も少なくなく
胆のう結石の34.9%
総胆管結石の24.3%
は無症状です

一生 症状が出ない人もたくさんおられます

@胆道疝痛

胆石発作にともなう
胆のう収縮にともなう発作性の激烈な疼痛
収縮するときに結石が胆のう管に詰まる
強烈な痛みが起こります

胆道疝痛が起こる機序を説明する表
胆道疝痛が起こる場所を説明する表

心窩部から右季肋部かけての痛みで
右肩へ放散します

食後 特に脂肪分の多いものを食べた後に多い

非常に激しい痛みが1~2時間続いた後に
消えていきます
また 胆石が胆のう管から移動すると痛みは消失します

Murphy徴候

息を吸うときに右季肋部を抑えると
痛みのために呼吸が止まります

Murphy徴候について説明した図

食後に仰向けで寝ていて
寝返りをうった時によく起こるようです

胆石が胆のうの出口付近に移動しやすいからと
言われています

脂の多い食事をした後に
上腹部の重苦しさ
右わき腹から背中にかけての満腹感 圧迫感程度の
軽い症状のこともあります

総胆管に石が詰まると 黄疸がでてきて
尿の色が紅茶のように濃くなり
白目が黄色くなります

痛みと黄疸が同時に出たら
危険なサインですから
すぐに受診してください


<検査>

@血液検査

肝機能 特に胆管系の異常を反映するALP γGTP
黄疸の状態を表すビリルビン
胆のう炎が疑われる場合は 白血球数 炎症反応のCRP
がチェックされます

@腹部エコー検査
胆のうや総胆管を観察すれば
胆石が存在する部位 大きさ 数
胆のうの状態などがよくわかります

胆石の腹部エコー所見

@CT MRCP

総胆管結石が疑われれば
CT MRCPなどの詳しい画像検査を行います

胆石のCT所見
高橋医院