胆のう結石
胆のう結石について説明します <胆のう結石の経過> 年間1~3%で 急性胆のう炎 急性胆管炎 黄疸 膵炎などの 重篤な症状が出ます 急性胆のう炎が最も多い 症状は 女性 肥満者 糖尿病患者に多く 発見されてから最初の1~3年で多い しかし疼痛発作があった場合も 大多数では疼痛は長続きせず 穏やかな自然経過をとります 無症状の場合は 毎年2%が軽度 1%が中等度 0.2%が重篤な 症状が起こりますが 90%以上は無症状のまま経過します <急性胆のう炎> 胆のう結石でいちばん問題になるのが 急性胆のう炎で 胆石が胆のう管に詰まった状態が持続すると 胆のう内に胆汁がうっ滞して発症します 逆に 胆石がない急性胆のう炎は10%ほどで稀です 胆のう内にうっ滞した胆汁が 粘膜を傷害して炎症が起こります 胆汁酸 ホスフォリパーゼA プロスタグランジンなどが関与し 最初は無菌性の炎症で やがて細菌感染がかぶってきます 痛みの場所が みぞおちから右季肋部に移動して 持続します また 部位を抑えると とても痛い 入院して 絶食 抗生物質で治療しますが リスクがなければ 緊急の腹腔鏡下胆のう摘出術を行うことが多いです <症状のない胆のう結石は治療すべきか?> 治療は行なわず 年に1回の腹部エコー検査で経過観察します 症状が出てくるリスクは 年2~4%で 複数あるとリスクが高くなるとされています 8年間の経過観察で 78%は無症状のままで 10.5%が軽度の症状 11.4%が重度の症状を認めた という報告があります <症状のある胆のう結石は手術すべきか?> 急性胆のう炎がある場合は手術すべきです 症状がいったん収まっても 無症状が10年続くのは5.7%しかなく 特に高齢者は胆のう炎が起こる前に予防的に手術すべきです また 慢性胆のう炎 特に「陶磁器様胆のう」と呼ばれる がんとの鑑別が難しい場合や 総胆管結石が原因で膵炎・胆管炎を起こしたことがある人で 胆のう内に石がある場合も 手術すべきです <胆石溶解療法> *X線で陰性の胆のう内のコレステロール胆石 *15mm未満の浮遊する多発結石 *症状がないか軽い *血液検査で肝障害がない といった場合は 経口薬による胆石溶解療法の適応になります 胆汁酸の一部を含んだ薬のウルソデオキシコール酸を 1日に600mg服用します 胆汁酸の作用で コレステロール石の表面を溶かし 腸管からのコレステロール吸収抑制 代謝促進で 新たな石ができるのを防ぎます 6か月後に24~38%で完全溶解しますが 20-50%で再発してしまいます 投与を止めると60%で再発しますが 継続投与で再発は16%ほどに抑制できます しかし 疝痛を軽減する 胆のう炎発症率を下げる といった効果もあります <体外衝撃波胆石破砕療法・ESWL> *胆のう機能が正常なコレステロール胆石で *大きさが30mm以下 単発なら適応です 1年後の消失率は60~90%で 再発率は 1年で20% 5年で40% 10年で60%で 再発率 完全除去率は 胆のう摘出手術に劣ります <胆のう摘出術> *大きさが1~3cm以上 *数が4個以上 の場合は 症状がなくても手術を考えます 最近は 開腹より腹腔鏡の方が推奨されます 胆のうはこの胆汁を貯蔵しているだけなので 胆のうを取り除いても それほど大きな問題はありません <胆のう結石と胆のうがん> 胆のうがん患者の胆のう結石の合併は 50~80%と有意に高率です しかし 胆のう結石の患者さんの 胆のうがん発症は年間0.01~0.02%です 胆のう炎がある場合は1~1.5%で 高齢者では8.8%と高くなります 発がんのリスクがあるのは *胆石保有期間の長い高齢者 *3cm以上の大きい結石 *胆石の数と体積が大きい *胆のうの壁が厚い *発作を繰り返す といった場合です 胆石による胆のう粘膜への長期間の刺激が リスク要因になる可能性があると考えられています リスクがある場合は 定期的な胆のう壁の注意深い観察が必要です また 充満結石例 壁肥厚例などは 無症状でも手術適応が考慮されます
高橋医院