南西地方のワイン
ボルドーとラングドック・ルーションに挟まれた 南西地方は フォアグラやトリュフの名産地でもあり 「生きることを愉しめる美食の土地」 とも称されています この地方で栽培されるブドウ品種は フランスの他の地方に比べても豊富な 120種ほどの土着品種が存在しています また 大西洋 ドルドーニュ川 ロット川 タルン川 中央山塊やピレネーの山々に囲まれた 変化に富んだ地形によって 多様なテロワールが形成されます こうした2つの要因により 同じ南西地方でも エリアにより全く個性の異なるワインが 造られています 白ブドウは セミヨン ソーヴィニヨン・ブラン ミュスカデ 黒ブドウは カベルネ・ソーヴィニヨン メルロ などが主に用いられています <南西地方のワインの歴史> 12世紀頃から 南西地方のワインの品質は高く 知る人ぞ知る銘酒と言われていました しかし水運を利用してワインを輸出していた当時 上流から運ばれてくるワインの品質の高さを知っていた ボルドーのワイン商や貴族は その名声が世間に広がるのを恐れ 南西地方のワインを ボルドーワインより時期を遅くして 港に運び込むことにしたため 「奥地のワイン」とさえ揶揄される程の 不遇の時代がありました しかし近年では 新しい世代の生産者たちが 南西地方で造った洗練されたワインが フランスの星付きレストランのワインリストに ラインアップされるようになり 価格以上の品質を備えたお買い得なワインの宝庫として 注目されています またボルドーに近く 栽培しているブドウ品種も似ているので ボルドータイプのワインが多いのも特徴です <南西地方の主なAOC> @マディラン バスク・ピレネー地区にある赤ワインの銘醸地で タナという黒ブドウを用いて造られます カオールで造られるワインとともに 南西地方の2大赤ワインとされます タナは 黒みを帯びた濃い色合いと 熟した赤や黒の果実香 スパイシーなニュアンスを持つ 熟成ポテンシャルのあるしっかりしたタイプが造られています 強いタンニンを持つ黒ブドウを用いた長期熟成型赤ワインで タナを40~80%に カベルネソーヴィニヨン カベルネフラン をブレンドし 深いアロマの香りが楽しめるワインになっています 「コスパの良いボルドーっぽいワイン」 と紹介されることが多いですが 現地の醸造家は タナを中心とした伝統的仕込み方法に誇りを有しています @カオール トゥールーズ アヴェイロネ地区に位置する ロット河流域に広がる もっとも古い歴史のある銘醸地です 特にマルベックという黒ブドウを70%以上使用した 「黒ワイン」は 12世紀から既に名高く 南西地方を統治していたアキテーヌ公爵家のアリエノールと 後のヘンリー2世との婚礼の宴を飾り 歴代のアヴィニヨン教皇 フランス国王に愛されてきました 黒ワインと呼ばれるほど 色が濃く濃厚な味わいで 熟度の高いブドウが結実し しっかりとしたタンニンと 心地よい果実味を備えたワインで 凝縮感があり飲み応えがあります ベリー系のスパイシーな香りと アーモンドのようなアクセントが特徴で 力強いボディで凝縮されたブドウの甘みを 感じられます マルベックは ボルドーでカベルネ・ソーヴィニヨンが評価される以前は 黒ブドウの中心的存在でした @イルレギー スペイン国境近くのピレネー山脈の甍に位置し 南西地方のワイン産地地のなかでも最南端にある バスク地方の小さなアペラシオンです 多くの畑が急な斜面にあり 段々畑でブドウを栽培します 土壌は非常に複雑で それゆえ産生されるワインも 白・ロゼ・赤とバラエティーに富み 熟した果実やフラワリーなニュアンスのある 飲み易いワインが多く生産されています 産生される70%が赤ワインで その多くはタンニンを含むボルドータイプに近く 主にカベルネフラン タナが用いられています @ジュランソン スペインとの国境 ピレネー山脈と大西洋に接する銘醸地 甘口ワインは ボルドーのソーテルヌと肩を並べるほどの 高い品質を備えています この甘口ワインは 樹上でブドウの房を乾燥状態になるまで待ってから 遅摘みすることで糖度を上げる パスリヤージュという方法で造られており フォアグラや羊乳チーズであるブルビとの相性は格別です 書き手は マルベックやカオールが大好きで 一時期 この地方の古木で収穫されたワインに はまったこともありました(笑) 南西地方のワインは もっと評価されるべきだと思っています
高橋医院