原発性胆汁性胆管炎・PBC
これまでの胆管の病気の解説シリーズの最後に いちばん患者さんの数が多い 原発性胆汁性胆管炎・PBCの説明をします <原発性胆汁性胆管炎・PBCとは?> 肝内の胆管細胞が障害されて起こる 慢性進行性に胆汁うっ滞が起こる疾患です 画像では捉えることのできない 小さな肝内胆管の障害による起こるのが特徴です 胆汁うっ滞にともない 肝細胞の破壊と線維化を生じ 最終的には肝硬変から肝不全を呈することがあります 胆汁うっ滞によるそう痒感の自覚 自己抗体の抗ミトコンドリア抗体(AMA)の陽性化を特徴とし 中年以後の女性に多くみられます 臨床症状が全くみられない無症候性の症例も多く このような症例は 長年無症状で経過し 予後も健常人とほとんど変わりません この病気も 原発性硬化性胆管炎などと同じ 国が指定する指定難病で 診療の際に公費の補助が得られます 以前は 原発性胆汁性肝硬変 と呼ばれていましたが 診断された患者さんの多くが 自分は肝硬変なのかと勘違いされるので 2015年に世界的に原発性胆汁性胆管炎に 名称が変更されました <疫学> 患者数は37000人で これまで紹介してきた胆管炎に比べて多く 年々増加していますが 増加しているのは比較的軽症の患者さんです 中年以降の女性に多い病気で 男女比は約1:4で 20歳以降に発症し50~60歳に最も多くみられます 最近は 相対的に男性患者が増加していて 好発年齢は 女性50歳代 男性60歳代となっています <原因> 自己抗体のAMAが特異的かつ高率に陽性化し 慢性甲状腺炎 シェーグレン症候群などの 自己免疫性疾患や膠原病を合併しやすいことから 病態形成には自己免疫学的機序の関与が考えられています <遺伝> PBCの患者さんの子供が 同じ病気を発症することは ほとんどありません 同一親族内(親子 姉妹等)では 同じ病気の頻度が比較的高いことから PBCの発症には遺伝の影響があると考えられます <症状> 自覚症状がない方が70%ほどで 症状があるのは30%ほどにすぎません @皮膚掻痒感 病初期は長期間無症状でも 中期・後期になると 胆汁うっ滞に基づく皮膚そう痒感が出現してきます この皮膚の痒みは 皮膚の病変をともなわず 部位も一定しません 季節や時期によって消退を繰り返し 乾燥が強くなる季節に増悪する傾向があります 皮膚掻痒感の存在は 患者さんの生活の質を大きく低下させることがあります @口や眼の乾燥症状 この病気は粘膜が乾燥することが多いので 口や眼の乾燥症状を訴える方も少なくありません @症状を自覚していない場合も多い 患者さんによく聞いてみると 皮膚のかゆみ 口の渇き 疲れやすさなど 何らかの症状がある方は 実は70%にも及んでいます 患者さんが そうした症状がPBCの症状であるということを知らず 医師に話していない場合もあります <合併症> 約15%の方に 涙や唾液が出にくくなり 口や眼が乾燥するシェ-グレン症候群 約5%の方に 関節リウマチ 慢性甲状腺炎が合併します また 長期にわたる合併症として留意すべきものとして 掻痒感 代謝性骨疾患 吸収不良 ビタミン欠乏症 甲状腺機能低下症 貧血 などがあります @PBC-AIH オーバーラップ症候群(肝炎型PBC) 特殊な病態として 自己免疫性肝炎の病態を併せ持ち ALPのみならずALTが高値を呈するタイプがあります 副腎皮質ステロイドの投与により ALTの改善が期待できるため PBCの典型例とは区別して診断 治療する必要があります
高橋医院