昔はひもじかったから:日本人はなぜ糖尿病になりやすい?
あんたらのご先祖様は
今みたいな贅沢なご飯は食べてなかったんだよ!
農耕生活は不安定なんだから
いつ来るかわからない凶作や飢餓に備えて
つつましいご飯を食べていたんだ
なのに何だよ
ちょっと生活が豊かになったからって
西洋人のまねっこで
脂質や糖分の多い食事ばっかりして
そんなことするから食後の血糖が上がって
昔に比べて俺たちの仕事の量が
急に増えちまった
でも昔からの習慣は
そんなに急には変えられないよ
ヒトには分相応ってものがあるんだ
そんなにお尻をひっぱたかれたって
都合よくたくさんインスリンを作ることなんか
できないんだよ!
と 悲鳴を上げているのが 膵臓のβ細胞さん
お気の毒ですねぇ、、、
アメリカ糖尿病学会は
昨年発表した治療ガイドラインで
アジア系アメリカ人は白人に比べて
肥満度がそれほどひどくなくても
糖尿病になることが多いので
BMIが25以上でなく23でも
糖尿病の精密検査を行うべきだ
と発表しました
この勧告が示しているように
日本人やアジア人は
白人に比べると糖尿病になりやすい
しかも 白人のような極端ではない
軽度の肥満でも発病してしまう
これは
飽食の生活を謳歌する日本人にとって
かなり気になる事実です
実際に糖尿病になる日本人の数は急増中です
どうしてこんなことになったのでしょう?
糖尿病は血中の糖分が高くなりすぎるため
色々な不具合が起きてくる病気です
普通は血中の糖分は
膵臓のβ細胞が分泌するインスリンにより
筋肉や肝臓に取り込まれて有効に利用されます
膵臓のβ細胞は血中糖分の高さを感知して
必要量のインスリンを分泌しますが
このシステムがうまく機能しないと
血糖が上昇して糖尿病になる
このシステム不全は
次のふたつの理由によって起こってきます
1)インスリンは分泌されていても
それが筋肉や肝臓でうまく使われない
2)インスリンが必要な量だけ分泌されない
1)を「インスリン抵抗性」と呼び
2)は「インスリン分泌低下」と呼ばれます
インスリン抵抗性は
簡単にいうと肥満により生じます
栄養過多な食事により溜まった内臓脂肪は
アディポカインというホルモン様物質を産生し
そのアディポカインにより
インスリン抵抗性が誘導される
(ここの詳細はまた稿を改めて紹介します)
白人はインスリン分泌能力は充分にあるので
インスリンの働きにより
いくらでも過剰な糖分を脂肪として取り込める
だから日本ではみられないような
すごいデブになって
インスリン抵抗性が起こって糖尿病になる
一方 日本人を含むアジア人では
様相が異なります
日本人は悲しいことに 白人に比べると
膵臓のβ細胞がインスリンを産生する力が弱いのです
つまり「インスリン分泌低下」が
日本人が糖尿病になる主たる要因と考えられています
だから 白人と異なり
軽度の肥満でも糖尿病を発症してしまう
こんな背景があるのに
最近は日本人の食生活が変化して
白人並みの脂っこくて糖分の多い食事を
とるようになった
だから
根底となる「インスリン分泌低下」に
「インスリン抵抗性」が加わり
ますます糖尿病発症の危険性が高まっている
日本人の糖尿病発症増加の裏事情を簡単に説明すると
そんなところです
では
なぜ日本人はインスリンを産生する力が弱いのか?
それを説明するのが
最初に記したβ細胞さんの嘆きです!
農耕民族だった日本人は質素な食事をしていたので
そうした栄養環境に適応した体質になっていった
β細胞さんに頑張って
インスリンを産生してもらわなくても大丈夫だった
一方 狩猟民族だった白人は
昔から脂も糖も多い飽食な食事をしていたので
β細胞はその環境に鍛えられ
インスリンをたくさん産生できるようになった
では その日本人のつつましい体質の実態は何か?
それは to be continued で(笑)
ということで今日のメッセージは
日本人は
軽い肥満でも糖尿病になりやすいので要注意!
高橋医院