薬物性肝障害はなぜ起きる?
薬物性肝障害について知るには 肝臓で薬がどのように代謝されるかを 理解する必要があります 薬物のほとんどが肝臓で代謝されるので 薬物性肝障害は起こりやすい <肝臓で2段階で行われる薬物代謝> 肝臓での薬物代謝反応は 2段階に分かれて行われます @第1相反応 第1相反応では 薬物は肝臓に存在する 薬物代謝酵素シトクロムP450(CYP)により代謝され 活性代謝物が生成されます あとで詳しく解説しますが この活性代謝物が 肝障害を引き起こす 体にとって有害な物質です ですから 肝臓には 活性代謝物を分解する仕組みが備わっています @第2相反応 それが第2相反応で 第1相で生成された活性代謝物が 肝臓内の解毒機構により処理されて 水に溶ける形になり 尿中や胆汁中に排泄されます 解毒は抱合反応と呼ばれ 活性代謝物に 硫酸 酢酸 グルタチオン グルクロン酸などの 内因性の物質が付加・抱合され 排泄されやすくなります <肝障害を引き起こす活性代謝物> 繰り返しになりますが 実際に肝障害を起こすのは 第1相で生成された活性代謝物です 活性代謝物は 何種類かありますが 代表的なものは *酸化的代謝で生ずる求電子物質 *還元的代謝で生ずるフリーラジカル代謝物 です @求電子物質 肝細胞内のタンパク質の システイン残基のSH基 リジン残基のNH2基 などに共有結合して 障害を与えます またDNAにも結合して 変異を起こさせます @フリーラジカル代謝物 活性酸素(ROS)により 肝細胞の膜の脂質過酸化反応を惹起して 障害を与えます これらの活性代謝物は 主に細胞内のミトコンドリアを痛めつけるため 肝細胞が機能しなくなり 肝障害が起きてしまいます 活性酸素などによる ミトコンドリアの障害は 老化にもつながる重要な現象なので 改めて詳しく解説します さて 薬物を過剰に服用して 第1相で活性代謝物が過剰に生成されたり 次回に説明する代謝性特異体質のため 薬物代謝酵素の働きに異常があり 第2相の解毒機構で活性代謝物が適切に処理されないと 肝細胞内に有害な活性代謝物が残存してしまいます そして 過剰な活性代謝物が 薬物性肝障害を起こすわけです 薬物性肝障害が生じるメカニズムを なんとなくイメージしていただくことができましたか? こうしたことを理解したうえで 次回は薬物性肝障害のタイプと発症機序について 説明します
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