肝障害の原因としていちばん有名なのは
なんといっても
B型 C型肝炎ウイルスですが

最近は
脂肪肝から慢性肝炎や肝硬変に
進展し得るNASH(脂肪性肝炎)
患者さんの数も増えて注目されています

NASHに関してはいずれ詳しく説明しますが

意外に盲点なのが 薬物性肝障害

患者さんの数は
それほど多いわけではありませんが 
少なくもない

ウイルスも陰性 
お酒も飲まない 
そんなに太られてもいない

それでも
肝機能の数値がかんばしくない、、、

そんな患者さんを診たときに
肝臓専門医は 
必ず薬物性肝障害を
思い浮かべなければなりません

お薬を飲むことで 肝臓が痛んでしまう病態で
医療機関で処方される薬物だけでなく
最近は健康食品やサプリメントが原因で
薬物性肝障害が起きるケースが増えています

そうした注意を喚起する目的で
東京都医師会ではこんなチラシを作製しており
当院の待合室にもあるので 
気づかれた方もおられるかもしれません

健康食品 サプリメントによる肝障害の注意を喚起するチラシ

ちなみに業界では
薬物性肝障害のことを 
ディリイ と呼びます

Drug-Induced Liver Injury の頭文字をとって DILI
なんとなく可愛いでしょう?(笑)

DILIのポスター

さて このDILIですが
薬の多くは肝臓で代謝されるため 
肝臓内には 
さまざまな薬剤の代謝産物が出現します

薬物の肝臓など体内での代謝過程の図示

そのため
他の臓器に比べて肝臓が障害を受けやすい

基本的に 
どんな薬物でも
肝障害を起こす可能性があります

そして あとで詳しく説明しますが
アレルギーなどの特異体質が原因で
起こることが多いので

同じ薬物を服用しても 
人によって 
障害が起こることもあれは 
起こらないこともある

要するに
発症を予見することが不可能なわけで
そういう意味ではかなり厄介です


薬物性肝障害を起こす薬物として代表的なのが

解熱消炎鎮痛薬 
抗がん剤
抗真菌薬
漢方薬などで

市販の解熱消炎鎮痛薬 総合感冒薬
のような医薬品で
みられることもあります

以前は
抗生物質 解熱・鎮痛薬によるものが多かったのですが
最近は抗生物質が減少していて
解熱・鎮痛薬が10%ほどで いちばん多い


最近のトレンドとして注目すべきなのが 
最初に記したように
健康食品 サプリメント 漢方薬による
肝障害が増加中なことで

健康食品やサプリが10% 
漢方薬が7%と
増えています

多くは薬物を飲み始めてから
60 日以内に発症することが多いのですが
90 日以降の発症も約20%でみられます

一時期 話題になった
ウコンによる肝障害は
服用開始から肝障害出現までの期間が
長いのが特徴でした

このように
飲み始めてからすぐに
調子が悪くなることもあれば

一定期間服用してから
調子が悪くなることもあります

そうした場合 
患者さんが原因として薬物を疑われないので
受診された際に 
薬を飲まれていたことを自己申告されません

特に 健康食品やサプリは 
薬物として認識されていないことが多く
申告もされないので 
見逃されてしまうことが多々あり得ます

また1 回だけの内服で発症することもあれば
2 年以上の継続投与で発症した例もありますから
服薬期間の長短で
薬物性でないと判断することはできません


しばらく飲んでいて大丈夫だったからといって
安心できないこと

健康食品やサプリでも
肝障害が起き得ることに

注意していただきたいと思います


次回は薬物性肝障害の発症機序について
より詳しく理解するため
肝臓内で薬物がどのようにして代謝されるか
説明します
高橋医院