前回 説明したように
NAFLDには 
たちが悪いタイプのNASHが存在します

NAFLDの10~20%が 
NASHと考えられています

NAFLDにおけるNASHの頻度を示した円グラフ

では NAFLDやNASHの人は 
どれくらいおられるのでしょう?

<NAFLD NASHに人はどれくらいいるか?>

NAFLDの有病率は

*欧米では20~40% 
*アジア諸国で10~30%
*日本では10~30% (最新の調査では29.7%

日本では1000~2000万人の方が 
NAFLDを患っていると推定され
この数は糖尿病の方の数に匹敵するほどです

とても多くの方が NAFLD なのです

また たちが悪いNAFLDであるNASHの有病率は
全人口の3~5%

高度肥満者では非肥満者に比し 
NASHの有病率が高い

今やNAFLDは
慢性肝疾患のなかで最も高頻度に存在する疾患と見做され

欧米では慢性肝疾患の20~49%程度がNAFLDで

日本でも ウイルス性肝炎の患者さんより
NAFLDの患者さんの方が多いと推定されています

そして 
ウイルス性肝炎の患者さんの数は
年々減少しているのに対して
NAFLDの患者さんの数は 
全世界で年々増加していて

日本では
1994年の12.9%から 2004年の34.7%と
10年間で約3倍に増えていて

健診受診者の少なくとも30%は
脂肪肝・NAFLDを有する
と考えられています

健診受診者におけるNAFLD NASHの割合を示す図

@男性に多いが 女性は閉経後に要注意

男女比を見てみると
男性の40.0% 女性の17.7%がNAFLDで 
男性の方が多い

男性では
30~60歳代の有病率は軒並み30%以上で 
各年齢層でほぼ一定

つまり 中高年の男性の3人に1人!は 
NAFLDの患者さんです

女性では 
若い頃はNAFLDの有病率は低いですが

閉経後の高齢の女性では 
有病率が著明に上がります

性別 年齢別のNAHの有病率を示すグラフ

既に何回も
女性はエストロゲンにより生活習慣病から守られているけれど
閉経後はそのお守りがなくなってしまうので
生活習慣病になりやすくなることを解説しましたが

NAFLDもそれと同じで 
閉経後の女性に増えてくる

また NASHも
中年男性 閉経後の女性で多い傾向を認めますが

興味深いのは
NAFLDは男性優位なのに 
NASHは男女で差がないことで

女性の方が男性より 
高頻度かつ短期間で 
NASHへ進行してしまうと推測されています

閉経後の女性は 要注意です!


女性では閉経後にNASHが急増することを示すグラフ

ちなみに 
男性と女性で 
NAFLD予後に差異はありません


<肥満との関連>

脂肪肝ですから 
当然 肥満と関連し

NAFLDの約80%の人が肥満

肥満の指標のBMI(25以上が肥満)の増加にともない
男女ともに 
NAFLDの有病率が急激に上昇します

肥満のある40歳以上の
男性の約50% 女性の25%が 
NAFLDと見做されています

一方 肥満でない方でも 
NAFLDになってしまう場合があり
非肥満のNAFLDは全体の約20%を占めます

たとえ BMIが25以下で肥満でなくても
成人後に10Kg以上の体重増加は 
NAFLDのリスク要因ですし
年齢とともに体重が増えている人は 
NAFLDになりやすい

BMIが正常な若い人でも
結婚 単身赴任による食生活の変化
運動をしなくなったなどの生活習慣の変化を契機に

わずか2~3Kgほど体重が増加されたことで 
NAFLDになってしまうことがあります

当院でも 
検診で肝機能異常を指摘されて相談に来られ
お酒も飲まないし 肥満でもないのに 
どうしてでしょう?
と心配される方に
色々とよくうかがってみると

上記のような理由で 
わずかに体重が増加されていて
それが原因でNAFLDになられたと考えられる方が
とてもたくさんおられます

是非 気をつけていただきたいポイントです

また 
子供でもNAFLDになり得ます

小児のNAFLDの有病率は 
3%程度で

最近は 
年齢とともに増加しているのが特徴的です

2~4歳では0.7% 
5~9歳では3.3%
10~14歳では11.3% 
15~19歳では17.3%
と 大きくなるにつれて 
有病率も増加します

小児でも大人と同じで
NAFLDの20~30%がNASHと考えられています

最近は小児のメタボが増えてきていますから 
要注意です

肥満の小児に見られる脂肪肝

NAFLDが 
どれだけポピュラーな病気か 
認識いただけたでしょうか?

特に 中高年の男性 閉経後の女性は 要注意です!

次回は 
どんな生活習慣の方がNAFLDになりやすいか解説します
高橋医院