月の光のように
ヤン・リーピンさんの シャングリラの続きですが 元気いっぱいの躍動感あふれる群舞が続いて 面白いけれど ちょっと飽きてきたかな と思い始めた頃に 遂に ヤン・リーピンさんの 月光のソロダンスが始まります 巧みな舞台構成です! 初めて拝見する ヤンさんのダンスですが バックの丸い月光に 全身の姿が影絵のように映し出され とても美しくて幻想的です 印象的なのが 彼女の指使い インドネシアやマレーシアで観た 女性が踊る民族舞踊では 手の指を反らして踊る表現が特徴的ですが ヤンさんのダンスでは 指はむしろ 伸ばしたり 軽く曲げたりして表現しているのが とても斬新で 惹きつけられます また 両腕を背中の方にそらす姿も 目新しくて気になります そして 動きがとても静的なのですよ 基本的に体幹は固定していて あまり動かさず 主に両腕 ときに下肢を ゆっくりと ときに素早く 動かすのですが こうした動きは バレエなどでは見慣れないので とても印象深い このダンスは 女性の愛らしさややわらかさを表現するだけでなく 神秘性や気高さの表現をも追及したもので ヤンさんは この踊りについて 「女性は月光のように 有形であり 無形なのです」と とても哲学的なコメントをされていますが うーん わかるような わからないような?(苦笑) エピローグの 孔雀の精霊の舞 は タイ族という民族が 太陽の化身と崇める孔雀を描いた踊りで もともとは男性が踊る演目だったものを ヤンさんがアレンジして 孔雀が象徴する神聖で安らかな世界への憧れと祈りを 踊りに込めたそうです このダンスも 指の細やかな動きや体全体の動きで 孔雀の優雅さを表現していて とても印象的でしたが 衣装の孔雀の羽の模様の部分に ネオンカラーで装飾が施されていて それがライトアップされて とてもきれいに輝いて 目を奪う美しさでした シルエットのように見えた 月光の舞と異なり この踊りでは ヤンさんはライトアップされていましたが 背中の筋肉などは バレリーナのように引き締まって鍛えられていました きっと日頃のトレーニングは 厳しいのでしょうね カーテンコールでは 客席からの写真撮影が許可されていたので こんな感じです ヤンさんは 長い時間をかけて 雲南省にある小さな部落をこまめに回り 継承されているオリジナルな舞踏を ハンティングするとともに 才能ある若い踊り手たちをスカウトして 自らのチームに加えていっているとか 彼女が故郷の雲南省にこだわって こうした地道な活動を継続していく理由は 近年の中国の急速な経済発展にともなって 地方の伝統文化が失われていく危機感を 持ったからだそうで そうした活動は ホントに大切なことだと思い 感心しました 日本の地方の伝統文化や芸能だって 似たような状況にあると思います 決して他人事ではありませんね いやー それにしても 確かにヤンさんのダンスは美しかったけれど 全体を通して言えば パワフルでエネルギッシュな印象が強かった 生きていくことの力強さのようなものを 妙に感じた公演でした なんだかこういうのは久し振りで 刺激的で良かったです(笑)
高橋医院