男性の更年期障害
更年期障害と言えば かつては女性の病気と考えられていましたが ここ10年余りで 男性にも更年期障害があることが 明らかにされています 前回 ご紹介した 男性ホルモンのテストステロンが 加齢により減少してくることが 大きな原因のひとつと考えられます こうした 加齢によるテストステロン産生低下が原因となって さまざまな症状が現れてくる病態を LOH症候群:晩発性性腺機能低下症候群 と呼びます LOH症候群は 血中テストステロン値が300ng/dl以下になって 症状が出てくる病気ですが 2005年に 世界の主に泌尿器科関連の学会が提唱した疾患概念で まだ10年ほどの歴史しか有していません つまり 社会的な認知度も 必ずしも高いわけではない 50代 60代 70代 80代の男性の おおよそ12% 20% 30% 50%が 該当するとされていて 中高年男性におけるLOH症候群の有病率は 極めて高いといえます LOH症候群の発症には 肥満や運動不足も関与するとされており また 几帳面でまじめで 人一倍頑張り屋だけれど ちょっと神経質で 気分転換が下手な方は LOH症候群になりやすいそうです 読み手の皆さん 大丈夫ですか? <症状> 臨床症状は極めて多彩ですが テストステロン値の低下にともない *まず 性欲が減退し *次に 活力の低下 抑うつ 睡眠障害 集中力の欠如 肥満 糖尿病などが生じ *最終的に 勃起障害 ほてりを呈する とされています @身体症状 *疲労感 *体の痛み ほてり *筋力の低下 *骨粗鬆症 *内臓脂肪の増加 *体毛(ヒゲ 陰毛)と皮膚の変化 @精神症状 *知的活動 認知力 見当識の低下 *抑うつ *不安 *睡眠障害 @性機能 *性欲減退 *ED 勃起障害 これらが LOH症候群で見られる主な症状です <診断> 診断は 精神・心理症状(5問) 身体症状(7問) 性機能関連症状(5問) それぞれに関する計17問の質問で 構成されるアンケートを行い その解答を点数化して評価して行います また 血中のフリーテストステロン値が8.5pg/ml未満だと LOH症候群と確定診断されます <治療> まずカウンセリングを行いますが 上記の臨床症状を呈している 40歳以上の男性で 血中フリーテストステロン値が8.5pg/ml未満だと テストステロン補充療法の治療対象になります テストステロンの投与は 注射薬を2~4週おきに注射するか 軟膏を1日に1~2回 体の一部に塗ることによって行います テストステロン補充療法により 筋肉量 筋力 骨密度 体脂肪量 血中脂質値 インスリン感受性 気分 性欲 などの改善が認められます 但し 長期間にわたり投与すると 心臓病などのリスクが増すために 治療経過中 適宜 血液検査を行い テストステロン値をチェックするとともに 少なくとも3か月後には 診断時に用いたアンケート調査により 効果判定と有害作用の検討を行って それらの結果にしたがい 6カ月から1年で一旦中止するのが通常です 副作用としては 前立腺がんの危険性が指摘されていて 治療中にがんマーカーのPSAは 継時的に測定すべきですが テストステロン補充療法が 前立腺がんの発症リスクを高めるという 確固たる証拠があるわけではありません これらの治療は 主に泌尿器科でなされることが多いのですが 泌尿器科の先生方のお話では 男性ホルモン・テストステロンが低下していますと 患者さんに検査結果をお伝えすると 非常に落胆されてしまう方が とても多いそうです そして それが故にか 積極的に テストステロン補充療法を受けようとされる方が多い そうで おそらく 閉経期の女性でも 同じようなシチュエーションかもしれませんが 性ホルモンの減少や低下というのは 男性にとっても女性にとっても とてもデリケートな問題なのでしょう ですが 補充療法により 症状が改善することも多いわけですから きちんと患者さんに説明して ご理解をいただいて治療を行うことが とても大切だと思います また 肥満や運動不足を改善して ストレスと上手く付き合うことも 日々のLOH症候群対策として重要です ここでも 生活習慣の改善が大切なようです
高橋医院