男性更年期とうつ病の微妙な関係
男性更年期障害とLOH症候群 の説明をしましたが 注意が必要なのは 男性更年期障害=LOH症候群 ではない ということです <更年期症状はあるけれど テストステロンは正常 な場合> 実は 更年期症状がある症例の約半数が テストステロンは正常域内にあり 男性更年期障害の病態は複雑で 加齢によるテストステロン低下のみでは 説明できません 特に 日本における男性更年期障害は ストレス性心身症症状の割合が多く こうした精神心理症状は 更年期の初期から認められ さらに時間が経過して 更年期の後期から熟年期において テストステロン欠乏症状が前面に出てくる場合が 多いのです <更年期症状はないけれど テストステロンが低い 場合> 逆に男性更年期障害の症状を呈さないLOH症候群も 存在します テストステロンの分泌低下は認めるけれど 典型的な自覚症状はない けれど前回解説したように 糖尿病やメタボリックシンドロームを発症し 心血管系病による死因のリスクになる 厄介な病態です 下図に示される LOH症候群のさまざまな病態のなかで 真ん中のメタボリックシンドロームのみが 目立つタイプです <間違えると 治療が効かないことがある> ですから 男性更年期障害で見られる 精神心理症状を認めた場合でも その実態は テストステロンが低下していないうつ病などで テストステロン補充療法が効かないこともあり得て その場合は 抗うつ薬などの力を借りた方が有効なことがある 逆に 典型的な男性更年期障害の症状は見られなくても 糖尿病やメタボリックシンドロームの患者さんで 実はテストステロンの分泌低下が存在していることがあり そうした場合は テストステロン補充療法を行うと 糖尿病やメタボリックシンドロームが 改善することもある このあたりは とても微妙で 複雑です <LOHにともなううつ病と LOHとは関係ないうつ病 の鑑別> 特に厄介なのが LOH症候群のうつ症状と ホンモノのうつ病との 鑑別です LOH症候群のうつは 30代後半から徐々に増加し 中高年のうつと関連します うつ病と診断されて 抗うつ薬治療を行っていても効かないときは LOHを疑って テストステロンの測定を行う必要があります このあたりは LOH症候群の治療を行う医師が 精神神経科の専門医と連絡を密にとって 患者さんの状況に応じた 適切な治療を行うことが大切です <LOH症候群を見落とさないように> 内科医として いちばん気をつけなければいけないことは 中高年の男性で 肥満 糖尿病 生活習慣病を患っておられる方が 実はLOH症候群も併せて患っておられる可能性を 見落とさないことでしょう 特に 精神症状や性機能症状がみられる場合は 可能性を考慮して ちょっと聞きづらいですが 性欲や勃起に関することを 詳しくお聞きしたり 血中テストステロン値を 測定するべきでしょう 前回 ご説明したように テストステロン補充治療を行うと インスリン抵抗性や脂質代謝の改善が みられることが多いので テストステロンの低下を 見落とさないことが大切です このあたりは とても重要なことだと思われます 肝に銘じなければいけません
高橋医院