過敏性腸症候群の治療・1
過敏性腸症候群の治療目標は 機能性ディスペプシアと同じで 患者さんの腹部症状の軽減による 生活の質・QOLの改善です 機能性ディスペプシアの治療の項でも 解説しましたが 治療で重要なことは 医師と患者さんの間の 信頼関係の確立です 患者さんのストレスや心理的異常が 症状に大きく影響することから 医師は患者さんの不安を 受容し軽減することが重要で 多くの患者さんが心配されている がんや重病ではないか? という不安を 取り除いてあげることが大切です 機能性ディスペプシアと同じで 過敏性腸症候群でも プラセボ効果が高く 約40% つまり 医師と患者さんの信頼関係が確立されていれば たとえ偽薬でも 治療効果が得られますし 治療効果が認められている薬なら その奏効率はさらに高まります 患者さんは ご自分が心配なことを全て医師に相談し 医師は 充分に説明して その心配を解いてあげることが出発点です そこから始まる 過敏性腸症候群の具体的な治療は *症状を悪化させるストレスや食事などの改善 *強く発現している症状に対する薬物療法 *必要に応じて心理療法 *重症の場合は 心療内科の専門医などへの早期の紹介 といったことが中心になります @食事療法 患者さんの60%で 食事で腹痛 ガス症状が増悪しますから 患者さんの日々の食事内容を聞いて 調節します 下痢型のポイント *消化の悪いもの (高脂肪食 乳製品など)は控える *乳糖を含有する食品を控える *香辛料や脂っこいものなどを避ける *コーヒーやアルコールを控える *冷たい飲食物は避ける 便秘型のポイント *食物繊維を摂取する *水分を充分に補給する *乳酸菌を含む発酵食品 (ヨーグルトなど)を摂取する *香辛料など刺激の強いものは控える @生活習慣の改善 夜食 間食 偏食 睡眠不足 心理社会的ストレスは 症状の悪化につながるので 改善しないといけません 自分に合った食事 睡眠 排便のリズムをみつけると 時間や気持ちにゆとりができ ストレスを軽くすることに結びつきます また 運動や趣味など 楽しくリラックスできる方法をもつことは 過敏性腸症候群の大敵である ストレスの解消に繋がります 日常生活で気をつけることは *食事は胃腸にかかる負担を減らすため ゆっくりよくかんで食べる *暴飲・暴食は避ける *偏食を避け バランスのとれた食事を心がける *食事時間を守り 規則正しい食生活をする *症状(下痢・便秘)により 食事内容に注意する *アルコールの多飲は避ける *喫煙も避ける *運動により 症状増悪の抑制が期待できる といったことです 薬物治療を開始する前に こうした食生活・生活習慣の改善により 症状の改善が得られるかを試みます 次回は 薬物治療について説明します
高橋医院