中央区・内科・高橋医院の
健康のための栄養学に関する情報 


今日から 栄養素 についての
解説を始めます


ミトコンドリアの解説で
栄養素からエネルギー(ATP)が作られる
話をしたように

食物から得られる栄養素は
エネルギーにもなりますが

過剰に摂ると
肥満や糖尿病の原因にもなります

そこで これからしばらくの間

*まず栄養素について詳しく勉強し

*三大栄養素のひとつの脂質が病態に関与する
 重要な生活習慣病である脂質異常症について学び

*最後に
 さまざまなダイエットの解説をしたいと思います

最終目標は
病気やダイエットに関する知識を得ることですが

そのためには
栄養素の基礎を学ばなければなりません

少し面倒くさくて厄介かもしれませんが
なるべく解り易く解説しますので
お付き合いください


さて 医学部では
栄養に関する勉強をする機会は
意外に少ないのです

書き手が医学生だった頃は
基礎医学の生化学で
ちょっと勉強した程度です

ですから
糖尿病や脂質異常症の患者さんに
納得していただける説明をするためにも
良い機会なので
最新の栄養学のテキストを何冊か購入して
久し振りに勉強しましたよ(笑)

栄養学のテキスト

<三大栄養素とは?>

ヒトが食物を食べて体内に摂取する
三大栄養素といえば

@糖質 

@脂質 

@タンパク質 

です

3大栄養素の説明図


まず これらの三大栄養素が
どのような姿かたちをしているかを
見ていきましょう

<3大栄養素の構造>

糖質と脂質は
炭素(C)水素(H)酸素(O)
からできています

@糖質

炭素が環状構造を示し
各炭素に水素や酸素が結合しています

糖質の構造式

脂質

炭素が直線状に鎖のようにつながり
各炭素に水素や酸素が結合しています

脂質の構造式

脂質は糖質に比べて
水素の含有量が多いのが特徴です

電子伝達系でのATP産生の解説で
お示ししたように
ATP産生には水素による電子伝達が重要ですから

水素分子が多いと
エネルギーがたくさん作れる

同じ量の糖質に比べて
脂質のエネルギー産生量が多いのは
こうした理由に依ります

@3大栄養素の1gから得られるエネルギー量
各栄養素1gから得られるエネルギー量

*糖質は    4 kcal 

*脂質は    9 kcal 

*タンパク質は 4 kcal 

です

3大栄養素の1gから得られるエネルギー量を比較した図
これは大事な値なので
今後もことあるごとに言及されますから
よく覚えておいて下さい

@タンパク質

糖質や脂質と少し異なり
炭素 水素 酸素に加え
窒素(N)を含有しているのが特徴です

タンパク質の構造式

こうした三大栄養素それぞれの横顔を
簡単に紹介します


<糖質の横顔>

糖質の主な働きは
エネルギー源になることです

糖質の働き 特徴を示した図

安静時のエネルギー源は
脂肪50% 糖質40% タンパク質10%ですが

運動時は
ほとんど糖質がエネルギー源になります

糖質は
グリコーゲンに変換され
エネルギー源として備蓄されますが

しかしその量は少なく
すぐに底をついてしまう

せいぜい12~16時間の絶食に
耐えられる程度の分量で
それでは1回のフルマラソンも走れません

脂質のエネルギー貯蔵量が
20回のフルマラソン分に相当するのとは
大違いです


<脂質の横顔>

脂質は糖質に比べ
さまざまな働きを有していて 種類も多い

@中性脂肪は
 糖質と同様 エネルギー源になります

@コレステロールリン脂質は
 細胞をおおう細胞膜を形成します

@コレステロールは
 ホルモンや胆汁酸の原料でもありま

脂質の機能 病気との関わりを示した図


@脂肪酸は
 エネルギー源になりますが
 エネルギー源以外にも さまざまな働きをします

たとえば

細胞膜に存在する脂肪酸は
エイコサノイドという生理活性物質の
原料になりますし

血中にある脂肪酸は
さまざまな機能を発揮する分子として
働いていることが
最近の研究で明らかになってきました

また 必須脂肪酸は
成長や免疫に関与に欠かせない重要な因子です

このように
糖質と比較すると
脂質は多彩な顔を有していることがわかります

脂質の分類と機能をまとめた表

それだけに
きちんと理解して実態を把握するのが
ちょっと困難です(笑)


<タンパク質の横顔>

タンパク質は
ヒトの体の12~15%を占め

特に骨格筋に多く存在し
全タンパク質の65%が骨格筋にあります

ですから
タンパク質というと
プロテイン・筋肉 というイメージが強いですが

筋肉として体を動かす以外に
もっと重要な働きをしています

タンパク質は
さまざまな機能分子として存在し
生体のあらゆる機能の発現や調節に
関わっているのです

機能分子としてのタンパク質の種類は
数万種に及ぶと言われています

タンパク質の機能をまとめた表

その代表例が 酵素 で

栄養素の吸収 分解 合成など
生体内の種々の化学反応を調節する
大変重要な働きをしています

生体内の大事な機能は
ほとんどタンパク質によって行われている

といっても過言ではないでしょう


まとめると

@糖質は
 主にエネルギー源として使われ

@脂質は
 エネルギー源として使われますが
 細胞膜やホルモンの材料としても利用されるし
 脂肪酸は
 さまざまな機能を有することもわかってきた

@タンパク質は
 主に体の機能をつかさどる分子の材料になる

と言えます

3大栄養素の働きをまとめて示した図

三大栄養素の大まかなイメージを
得ることができたでしょうか?

こうした特徴を有する三大栄養素について
詳しく説明していきます
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