善玉・悪玉コレステロールとリポタンパク
中央区・内科・高橋医院の 健康のための栄養学に関する情報 脂質に関する解説を続けていますが 読み手の皆さんにとって いちばん身近な脂質といえば 健康診断の結果表にでてくる コレステロールではないでしょうか? しかも コレステロールには HDLとLDLがあって なんだかよくわからない と困られている方は多いと思います ざっくり言うと HDLは善玉 LDLは悪玉 ですが なぜ HDLが善玉で LDLが悪玉か を知るためには 脂質が体のなかでどのように移動しているか? を理解することが必要になります ちよっと面倒くさいですが お付き合いください(笑) <リポタンパク質> 脂質は水に溶けませんから 血液の流れに乗って体内を移動するために リポタンパク質 というキャリアーに取り込まれて 運ばれます リポタンパク質は *水に親和性のあるリン脂質と *タンパク質(アポタンパク) でできたカプセルで その内部に 脂質(中性脂肪やコレステロール)を入れて 血液のなかを移動します <リポタンパク質の分類> リポタンパク質は なかに含まれている脂質の種類や その割合によって *カイロミクロン *VLDL *LDL *HDL の4種類に分けられます @カイロミクロン いちばん大きなリポタンパク質で カプセルはアポB CⅡというアポタンパクを 中心に出来ています 小腸上皮細胞で造られ 中身の組成は 中性脂肪が85% コレステロールが7% 小腸で吸収した食事由来の中性脂肪を 全身の組織へ輸送します 組織に中性脂肪が運ばれると 各組織でLPL(リポタンパクリパーゼ) という酵素が働いて 中性脂肪を分解して脂肪酸に変え 脂肪酸が各組織に蓄積されます カイロミクロンは このようにして 中身の中性脂肪が次第に減少して小さくなり カイロミクロンレムナントという遺残物となって 肝臓に取り込まれます @VLDL 肝臓で作られるリポタンパク質で カプセルはカイロミクロンと同じ アポB CⅡを中心に出来ています 中身の組成は 中性脂肪が55% コレステロールが19% で カイロミクロンと同様に 中性脂肪がメインですが その割合は減っています 肝臓で合成された 中性脂肪やコレステロールを 全身へ輸送します カイロミクロンの時と同じで 組織に中性脂肪が運ばれると 各組織でLPLが働いて 中性脂肪を分解して脂肪酸に変え 脂肪酸が各組織に蓄積されます VLDLも 中身の中性脂肪が次第に減少して小さくなり VLDLレムナントという遺残物となって 肝臓に取り込まれます これら カイロミクロンとVLDLが 主に中性脂肪を運搬するキャリアーです @LDL VLDLから中性脂肪がなくなった 遺残物のVLDLレムナントは 肝臓に取り込まれて そこからLDLができてきます 中身の組成は 中性脂肪が10% コレステロールが47%で カイロミクロンやVLDLと比べると コレステロールの割合が多い LDLはコレステロールを 全身の臓器に輸送します これこそが 世にいう 悪玉コレステロールLDLの正体です 血中にLDLが多量に長時間存在すると 活性酸素の作用により 酸化(変性)LDLになり 酸化LDLは血管の壁に沈着します それをマクロファージという 異物を掃除する細胞が食べて お腹いっぱいのマクロファージが血管壁に蓄積して 動脈硬化が起きてしまいます ですから LDLが高い状態は 高LDLコレステロール血症という病気と 見做されています また近年は LDLよりさらに小さい小粒子LDL(sdLDL)が 血管壁に入り込みやすく そこで酸化されて酸化LDLになりやすいので 悪玉コレステロールのまさに張本人である と言われています この点は重要なので あとでまた詳しく解説します @HDL 肝臓で作られる いちばん小さいリポタンパク質で 脂質含有量がいちばん少なく 中身の組成は 中性脂肪5% コレステロール24% アポタンパク42% タンパク質が多いので 高比重・高密度な粒子です HDLは コレステロールを全身の臓器から回収して 肝臓に運びます LCATという酵素の働きで HDLの表面に存在するコレステロールが HDL粒子の内部に移動して 粒子の表面に隙間ができます HDLは 全身の臓器にあるコレステロールを引き抜いて この表面の隙間に埋め込んで それがLCATにより内部に移動する こうした過程の繰り返しにより HDLは組織からコレステロールを剥ぎ取り 自らの内部に溜め込んで肝臓に運びます 肝臓に戻されたコレステロールは 胆汁酸などの合成に利用されます これが 世にいう 善玉コレステロールHDLの正体で 悪玉LDLにより 血管壁に運ばれたコレステロールを取り去って 肝臓に戻してくれるので 動脈硬化を予防する作用があり 逆に血中のHDLが低いと 動脈硬化になりやすいので 低HDLコレステロール血症は 病気と見做されています HDLは 喫煙で低下し 持久的な運動で増加します <リポタンパク質の体内動態のまとめ> このように リポタンパク質は 最初は カイロミクロンやVLDLとして 食事から摂取された中性脂肪を 内部に取り込んで全身の組織に運び その役目が終わると LDLとして 肝臓で作られたコレステロールを全身の組織に運び 最後に HDLとして 全身の組織からコレステロールを引き抜き 肝臓に戻す このように 大きさや密度・比重を変えながら 中性脂肪やコレステロールの体内移動に 携わっているのです LDL HDLコレステロールと 動脈硬化との関連を ご理解いただけたでしょうか?
高橋医院