風邪の咳・咳の治療
アレルギーが咳の病態形成に関与する 咳喘息やアトピー性咳嗽について 説明してきましたが 最後に 風邪にともなう咳 についても説明します <風邪の咳の特徴> 言うまでもなく 咳は風邪にともなうことが一番多いのですが 最初は 鼻水や喉の痛みから始まって そのあとに咳や痰が出てくるパターンが よく見受けられます ちなみに このように 鼻水 喉の痛み 咳などと 時間経過にともなって症状が変化してくるのは ウイルス感染によって起こる風邪の 典型的なパターンで 症状が時間経過により変化せず 一貫して鼻水だけとか 喉の痛みだけという場合は 細菌感染を疑い 抗生剤の投与も考慮する必要があります そして 咳だけでなく 発熱したリ 緑色などの色のついた痰をともなう場合は 気管支炎や肺炎に注意しなければなりません <風邪のあとに長引く咳> しかし そうした注意すべき症状がなく 風邪にともなう咳だけが 2週間以上も続くこともあります この場合 咳は就寝前から朝方にかけて 悪化することが多い こうした状態では 細菌やウイルスの感染による 気道内皮傷害・気道炎症が 一過性の気道過敏性亢進状態を 引き起こしていると考えられます 咳喘息やアトピー性咳嗽の原因となる アレルギー体質がない人でも 風邪のあとに咳が長引くことはあり得るのです このような咳の治療には *咳反射を延髄でブロックする 中枢性非麻薬性鎮咳薬 *アレルギー反応を抑える ヒスタミンH1受容体拮抗薬 *気道の粘膜などを潤す作用がある 漢方薬の麦門冬湯 の3種類の薬剤を併用すると 効果的なことが多いです <鎮咳薬> 最後に 咳を改善させる鎮咳薬についてまとめます 鎮咳薬は 作用機序により @中枢性麻薬性 @中枢性非麻薬性 に分類されます いずれも咳中枢を抑制して 咳を鎮めますが 中枢性麻薬性鎮咳薬は 延髄の孤束核にある咳中枢に作用して 効果を発揮する薬剤で リン酸コデインなどが代表的な薬剤です モルヒネなどと同類の麻薬に分類される オピオイドμ受容体アゴニストで 便秘などの副作用をともなうこともあり 安易な連用は避けるべきとされています 中枢性非麻薬性鎮咳薬は メジコンという商品名のデキストロメトルファンが代表的で 上咽頭神経や 迷走神経から孤束核に刺激が伝わる部分の 抑制により 鎮咳効果が発揮されると考えられています 軽い咳には メジコン 重い咳には リン酸コデイン が用いられますが これらの鎮咳薬は あくまで咳反射の経路を抑えるものなので 既に解説したように アレルギーが病態のベースにある 咳喘息やアトピー性咳嗽には 効果を発揮できません そうした病気には 既に説明したように *気管支拡張剤 *抗ヒスタミン剤 *吸入ステロイド などが効果的です これまで説明してきたように 咳は高頻度に認められる症状ですが ひとくちに咳といっても 生じてくる病態はさまざまで 用いられる治療薬も異なります 風邪のあとに長引く咳 風邪とは関係なしに咳が続いて お困りの方は 是非 受診されて適切な治療をお受けください
高橋医院