雅楽について色々と説明してきましたが
極めつけの面白さは 
今日ご紹介する 残楽(のこりがく)だと思います

まずは こちらをお聞きください

平調越天楽残楽三返
(ひらぢょうし えてんらくのこりがくさんへん)

平調越天楽残楽三返のCD

お聞きいただいてわかるように 
同じ曲を3回 繰り返して演奏していますが

*最初は 
 全ての楽器により奏でられるフルオーケストラ

*2回目は 
 徐々に打楽器管楽器が音を消していきます

*そして最後は
 篳篥と箏の掛け合いから
 箏のアルページオで
 余韻を残して幕引きする

平調越天楽残楽三返を演奏している様子

こうした演奏形式は
雅楽独特で 
残楽(のこりがく)と呼ばれるものですが

最後の篳篥の 
微妙な間をとった箏との絡み具合は

まさにモダンジャズを彷彿させるようで
実際にジャズのような 
即興演奏も行われていたそうです

いやー初めて聞きましたがびっくりしました!
おしゃれですね

平安時代の日本人は雅なだけでなく
しっかりと遊び心も持っていたようです

平安時代の絵巻物に描かれた平調越天楽残楽三返を演奏する様子

解説の方が語られるに

雅楽は西洋音楽のような
作曲者・オーケストラから聴衆への一方通行でなく
舞台と聴衆との相互作用を求める音楽だそうで

聴衆は 
最初のフルオーケストラを聞きながら
全体の旋律をイメージとして 
頭のなかに残しておきます

2回目の繰り返しでは
演奏の途中で篳篥の音が突然消えて 
しばらくその状態が続き
その間 
箏と琵琶だけが演奏を続けるわけですが

既に説明したように 
管弦で旋律を奏でるのは篳篥なので
その音が消えるということは 
骨組みの旋律が消えるということです

そんな状況で 聞き手は
頭の中に残しておいたイメージを利用して 
全体の旋律を再合成して

なおかつ 
残って演奏している箏と琵琶の音色の個性を 
存分に堪能する

そしてまた 
篳篥と箏との掛け合いの妙も味わう

残楽は そんなふうにして
聴衆に能動的な聴き方を楽しんでもらおうとする
遊び心を持った演奏形式 
なのだそうです

全体から個へという 
西洋近代の分析的手法のような感じがして
平安時代に近代の先駆け? 

これは何気に凄いかも
と思ったりしながら聴いていました

残楽の解説には 最後にオチがありました

ハイドンの交響曲第45番 ヘ短調 告別 は

各楽器の奏者は
自分の演奏が終わると 
ひとりひとりステージから退場し

ハイドン

最後の14小節は 
第1バイオリンの奏者がふたりだけ残って
そこで全曲が終了されます

まさに 残楽のような構成

ハイドンはこの交響曲を作ったとき
はるか昔 
遠い日本の平安時代に演奏されていた残楽の形式を
パクったのでしょうか?(笑)

長い年月や 
西洋と東洋という文化の差異を越えて
こんなアナロジーが見られるのは 
とても面白いと思いました

もうひとつ オチがあります

平調越天楽残楽三返

どこかで聞いたことがあるようなメロディだなあ、、
と思われた方も多いと思いますが

はい さあ~け~は~ のお~めえ~ のお~めえ~ の

黒田節の原点になったのが
この平調越天楽残楽三返だったのですね

黒田節を歌い踊る人

左利きの書き手は 
もちもん 黒田節は知っていましたが
平調越天楽残楽三返は知りませんでした(苦笑)


ブログを書くために 
雅楽について復習していたら
また あの独特な音色や旋律の生演奏を 
ナマで聴いてみたくなりました

お正月に聴けなかったのは 本当に残念

東京楽所さんの演奏風景

最近は 東京楽所さんは 
定期演奏会をされていないようなので
また復活してくれないかなあ





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