脂質異常症の薬物治療
食事療法 運動療法でうまく改善されないときは 薬物治療を開始します 脂質異常症の治療に主に用いられる薬剤は *スタチン (HMG-CoA還元酵素阻害薬) *エゼチミブ (小腸コレステロールトランスポーター阻害薬) *フィブラート の3種類です <スタチン HMG-CoA還元酵素阻害薬> 肝臓でコレステロールが作られる過程の 律速酵素・HMG-CoAの働きを抑え コレステロールを作れないようにする薬です この薬の作用により 肝臓でのコレステロール産生が減ると 胆汁酸やホルモンが作れなくなり困るので 血中に流れているLDL-Cを取り込んで 肝内でコレステロールを得ようとする反応が 起こります その結果 *肝臓のLDL受容体の数が増え *血中のLDLを多く取り込むようになり *血中LDL-C値が低くなる という仕組みです 現在わが国では プラバスタチン シンバスタチン フルバスタチン アトルバスタチン ピタバスタチン ロスバスタチン が使用されています その効果は強力で 脂質異常症治療薬の中で 最も効果的にLDL-C値を下げる力があり LDL-C値を約30~40%低下させ 狭心症や心筋梗塞の発症リスクを 約20~30%低下させます また 肝臓からのVLDL分泌を抑制することにより TG値を下げる効果もあります <エゼチミブ 小腸コレステロールトランスポーター阻害剤> 小腸の細胞に存在する コレステロールに特異的な 輸送蛋白NPC1L1の働きを抑制する薬で 小腸からコレステロール吸収を妨げることで LDL-C値を下げます LDL-C値は約20%低下し TGが高いときは17%減少させます またHDL-C値を増加させる作用もあります @スタチンとの併用効果 こうした効果は 上記のスタチン併用によりさらに増強します スタチンの長期投与で 細胞内のコレステロールが減少しますが その際 ホルモンや胆汁酸の材料であるコレステロールを確保しようと 反応性に小腸でのコレステロール吸収亢進がみられます しかし エゼチミブを併用すると 反応性の小腸でのコレステロール吸収亢進が 抑制されるため 相乗効果がみられます したがって *スタチン単独では治療管理目標を達成できない場合 *スタチンにより治療前値の50%以上減少しない場合 などに スタチンにエゼチミブを併用する *副作用などでスタチンを使用できない場合に エゼチミブを単剤で使用する といった使い方が推奨されます 但し TG値が300mg/dl以上の患者さんは 投与不適応になります <フィブラート系薬> LDL-Cよりも 中性脂肪をより効果的に低下させる薬です 食後高脂血症の項で解説したように 核内受容体PPARαに結合することにより 脂肪酸の合成を抑え 分解を促進し また LPL(リポタンパクリパーゼ)発現を 増加させることで それらの作用の結果として TG値が低下します また TG値が低下すると 図に示した TG高値にともなうリスクがなくなり 結果として LDL-C値が下がり sd LDLも減少させ HDL-C値は上がるので 狭心症や心筋梗塞の発症リスクを低下させます さらに フィブラート系薬剤のHDL-C増加作用は スタチンやエゼチミブと比べても高いのが特徴ですから TG値が高くHDL値が低い患者さんは 好適応となります このように 脂質異常症のタイプにより 使用される薬剤は異なり 病態に応じて 作用機序が異なる複数の薬剤が 併用されることもあります このあたりは 専門医の腕の見せ所ですので 心配な方は 是非ご相談ください なお スタチン フィブラート系薬では 副作用として 大腿部などの筋肉の痛みを認めることがあります 頻度としてはそれほど多くありませんが 薬の服用を開始してから4か月以内に起こることが多いので そのような自覚症状がある場合は 主治医にご相談ください
高橋医院