エロい ヌード画
前回 クラーナハは 独自の興味の対象に走ったと紹介しましたが それは なんと 女性のヌード画だったのです! 確かにクラーナハというと あの独特の表情 特異なプロポーションの裸婦画を すぐに思い浮かべます クラーナハは アルプス以北で 初めて神話主題の裸婦画を描いた画家でしたが 彼が描く裸婦画は イタリアルネッサンスの画家達が描いた 豊満で優しくて 見る者を穏やかな気分にさせる裸婦とは 全く異なります ティチアーノの名作 ウルビーノのヴィーナスと比べると その差が歴然です で ちょうど ぶらぶら美術・博物館 日曜美術館といった テレビの美術番組でも クラーナハ展を特集していたので見ましたが クラーナハのヌード画について *エロい リアル 生々しい あやしい *プロポーションを故意にゆがめて 身体をより俗っぽく描いている *ネックレスなどのアクセサリーをまとっているのが より生々しく感じさせる *シースルーの衣装をまとっているのが よりエロティシズムを彷彿させる *同時代の普通の女性が 脱いでいるような雰囲気がある *きわどく 挑発的な画風で 見る者の心をざわつかせる危なさがある *小悪魔的でありながら 気品があり 処女的な清楚さに溢れている といった指摘がされていました エロい あやしい、、、 なるほど 純粋無垢だった(?)高校生の頃の書き手に クラーナハの裸婦画が 強いインパクトを与えたのは そうした理由によるものだったのですね また *敢えて 写実的に描こうとしていない *自分の美意識 感覚で 女性の理想像として描いている *女好きが描いた しっとりと抜けるような肌の輝きがある という指摘もありました 実際にモデルさんは このポーズを長時間キープできないそうで クラーナハが モデルさんを見て写実的に描いたのではなく 自分の頭のなかにある裸婦像を描いていたことが 示唆されます まさに 自分の理想とする裸婦画を 極めていったのですね でも クラーナハは どうしてこうした裸婦画を たくさん描くようになったのでしょう? なんとそこには 裸体画の需要が増した時代的背景があったのです クラーナハが活躍した時代のドイツでは ルターらにより宗教改革が 盛んに行われていた時期でしたが その宗教改革により カトリックで需要が多かった宗教画の注文が減り 一方 宗教改革により禁欲性がさらに重視されたため その抑圧の反動で プライベート所有の裸体画の人気が出始めたのです そうした時代背景を敏感に読み取り クラーナハは ドイツで初めてヌードを描き しかも イタリアのヌード画と異なる 独自のオリジナルなヌード画風を確立し それを量産し そして 飛ぶように売れた これって 個人の趣味が たまたま時代の要請に見事に合った ということ?(笑) ちなみに クラーナハは 同じビッテンブルグの街で活躍した 宗教改革運動を率いたルターの よき理解者であり協力者でした ルターの肖像画を何枚も描き その肖像画により ルターの存在を社会に知れ渡らせることで 宗教改革の促進に貢献し 妻の肖像画も合わせて描くことで 聖職者でも結婚できるという プロテスタントの価値観の宣伝もなされました また ルターがドイツ語に翻訳した聖書の挿絵も クラーナハが描きましたし サイドビジネスで行っていた印刷業により 聖書の印刷も行って 聖書の社会への広がりに貢献したのです クラーナハがいなかったら ルターの宗教改革も 上手くいかなかったかもしれません その一方で 宗教改革により過度に禁欲的となった社会の アンダーグラウンドな要求をとらえて 趣味の裸婦画の大量制作を行い しっかりと儲けていた うーん クラーナハ 本当にしたたかですなあ、、、
高橋医院