前回は 肝細胞が傷害されて上昇する
AST ALTについて解説しましたが

今日は ALP γGTP について説明します


肝臓を構成する主な細胞は 
肝細胞と胆管細胞と説明しましたが

AST ALTが 
肝細胞の傷害の程度を反映するのに対し

ALP γGTPは 
胆管細胞の傷害の程度を反映します


<胆管の働き>

前回ご説明したように
胆管細胞は 
肝細胞で作られた胆汁を腸に流す
胆管という管を構成する細胞です

胆汁は 
胆管を通って胆のうに溜められ
十二指腸に脂質が入ってくると 
それを分解・吸収するために分泌されます


胆汁が肝臓で作られ胆管により十二指腸に至る経路を示す図

<ALP>

@ALPの働き

脂質に含まれるリン酸エステル化合物を
分解する酵素で

@存在部位

肝臓 腎臓 骨などの細胞に存在します


ALPの働きを示す図

@高値を示す場合

特に肝臓(胆管細胞)
傷害された場合に 
血液中に漏れ出て 高値を示します

また 胆汁中にも多く存在するため
なんらかの原因により胆管が閉塞して 
腸への胆汁の流出が滞ると
胆汁中から血液中にALPが漏れ出すので
高値を示します




胆管細胞のダメージ 胆管閉塞で血中ALPが高くなることを説明した図

また ALPは骨の細胞にも存在しますから
骨が発育する成長期や 
骨の病気の場合も 高値を示します

その鑑別には アイソザイム分という解析が行われます

@アイソザイム

同じALPでも
胆管細胞のALP(1 2型)と  
骨のALP(3型)では
タイプが異なるのです

ですからどのアイソザイムか分析することで
胆管細胞由来か 骨細胞由来かを 鑑別できます

ALPのサブタイプについてまとめた表

@肝臓や骨に異常がなくても高値を示す場合

興味深いことに 
ALPは
血液型がB型 O型の人は高値を示すことがあります

これは小腸の細胞に含まれる
アイソザイムのALP(5型)が
脂肪の多い食事を食べたあとに
血液中に出現する傾向があるからで
肝臓に異常があるからではありません


また 妊娠時にもALPは高値を示します

肝臓に異常がないのにALPが高値を示す場合をまとめた図




@ALPが高値を示す肝疾患は

*胆石や悪性腫瘍による胆汁うっ滞

*薬物性肝障害

*原発性胆汁性胆管炎

*原発性硬化性胆管炎

などがあります

ALPが高値を示す疾患をまとめた図


<γGTP>

@働き

抗酸化物質であるグルタチオンの
γグルタミルペプチドを加水分解し

他のペプチドやアミノ酸に
γグルタミル基を転移し
タンパク質を作る酵素です

γGTPの働きを示した図

@性差 年齢差

男性では女性より高い傾向がありますが

それには女性ホルモンが関係しているようで
女性でも閉経後には 
男性と同じくらいの値になります

また 男女とも加齢によって 増加します

性別 年齢別のγGTP値を示すグラフ

@存在する部位

多くの細胞に存在しますが 
特に肝臓で大量に認められ

肝臓では主に
胆管細胞胆汁中に存在しています


@γGTPだけが上がる病気

上記のALP値が高くなるような肝疾患では
γGTP値も並行して高くなることが多いのですが

γGTPだけが高くなる場合もあります

代表的なのが アルコール性肝障害
アルコールを飲みすぎると 
γGTPが大量に作られるため
血液中のγGTP値が高くなります

アルコール性肝障害ではγGTPが高くなることを示す図

さらに最近多いのが
お酒も薬物も摂取していないのに
γGTP値が高値を示す場合で
その多くの場合が 
脂肪肝によるものです

脂肪肝でγGTPが増加する機序としては
後述するγGTP増加と肥満との関連が
想定されています


ところで 一部の健診では
γGTPは測定しても 
ALPは測定しない場合があります

説明したように
ALP γGTPが両方とも高値を示す場合と
どちらか片方のみが高値を示す場合は
原因となる病気の種類が異なりますから

γGTPしか測定していない場合は
是非 肝臓専門医にご相談ください


<γGTPは 生活習慣病のバロメーターになる?>

さて 最近 γGTPは

肝障害だけでなく
心血管疾患 糖尿病 メタボリックシンドローム 
などとの関連が注目されています

というのも

γGTP値の上昇は
肥満(BMI) 
喫煙 
血糖値 尿酸値 中性脂肪 LDLなどの
メタボ関連項目と関連することが明らかにされ

なかでも 
いちばん強い相関を示すのがBMI

それにともない 
インスリンの分泌低下や抵抗性との関連も
示唆されています


γGTPとBMIの関連を示す図

逆に 
善玉コレステロールのHDL 運動習慣がないこと
などとは逆相関し

さらに 
生活習慣の改善(減量 禁煙 運動習慣の確立)により
γGTP値は減少します

そして 興味深いことに 
こうした現象は
血中γGTP値が異常に高値でなく 
基準値内にあってもやや高目の方でも
認められています

ですから 
肥満があり 運動習慣がなく 煙草を吸われる方で
ASTやALTが基準値内にあっても

γGTP値が
*基準値を超えて高値の方 や

*たとえ基準値内でも高目の方 は

脂肪肝 糖尿病などの可能性を考えて
精査や経過観察をする必要がありそうです


生活習慣病以外にも

心不全 心筋梗塞などの心血管障害(CHD)
脳梗塞などの脳血管障害(CVD)

といった疾患との関連性も指摘されていますから

γGTP高値が生活習慣病 CHD CVDの発症リスクを高めることを示す図

図のRR値が大きくなればなるほど 
右欄に記した病気との関連性が増します

γGTPを侮ってはいけない

単純にアルコール性肝障害の
マーカーだけではないぞ!
というご時世になってきています

健診でγGTPが高値だった方 
ご用心ください!


高橋医院