さて 今日からお勉強シリーズの再開です!

新春第1弾は 
書き手が専門の肝臓ネタからスタート!

当院には 
健康診断などで肝機能がC判定やD判定になり
心配して来院される方が数多くおられます

そこで 肝機能検査値 について解説します

肝機能がC判定やD判定になった健診結果表

始めに 
肝機能検査について理解していただくために
肝臓の解剖と機能について 
簡単に説明します

体の中の肝臓の位置を示す図


<肝臓には2種類の細胞が存在します>

肝細胞

肝細胞の顕微鏡写真

栄養素の代謝・合成 
アルコールや毒物の解毒といった
肝臓の主たる機能を果している 
メインの細胞です


@胆管細胞

肝臓の中には
肝細胞で作られた胆汁を
腸に流す胆管という管が張り巡らされています

肝臓と腸を結ぶ胆管の位置を示す図

図の緑で示された部分が 
肝臓内の胆管

胆汁は胆のうに貯められて 
十二指腸に出ていきます

胆管は
肝細胞の間に存在する 
下図で黄色い星のように見える毛細胆管から始まり
徐々に太くなって肝内胆管を形成します

毛細胆管の存在を示す図

胆管細胞は この胆管を構成する細胞です

胆管細胞が胆管を形成するのを示す図


<肝臓の構造>

このように 肝臓の中には

沢山の肝細胞からなる肝小葉
という機能単位が存在し

その中を 血管や胆管が流れています


肝臓の中の肝小葉の間を血管や胆管が流れているのを示す図
肝臓の中の血管 胆管の位置関係を示す図


<肝臓の主たる働き>

肝細胞

*腸から入ってくる門脈という血管から栄養素を取込み
 それらを代謝して 血管に戻し 全身に行き渡らせます

*また 胆汁を作り胆管に流し込み

*取り込んだ異物や薬物を解毒して 胆管に排泄します

肝臓の働きへの血管 胆管の関与を解説する図

これが 大まかな肝臓の働きです

肝臓の働きをまとめた図


<肝臓がダメージを受ける原因>

肝炎 アルコール性肝障害 脂肪肝など
さまざまな原因で肝臓がダメージを受けると
肝細胞や胆管細胞が傷害を受けます

肝臓にダメージを与える原因をまとめた図


<ダメージが慢性化すると繊維が溜まり肝硬変に進む>

病気が慢性化して 傷害から上手くリカバーされないと
肝臓の中に繊維が溜まり やがて肝硬変に至ります

肝臓内に繊維が溜まっていることを示す顕微鏡写真


<肝機能検査値の異常が意味すること>

肝機能検査値は
そうした過程で生じる
肝細胞 胆管細胞の傷害の程度を表すものです

では 代表的な肝機能検査値である
AST ALTについて説明します

@AST(GOT)

タンパク質が分解されてできるアミノ酸の
アスパラギン酸とα-ケトグルタル酸を
オキサロ酢酸とグルタミン酸に相互変換する酵素で
アミノ酸を体内で使われやすい形にする働きを示します

@ALT(GPT)

同様にアミノ酸のピルビン酸とグルタミン酸を
アラニンとα-ケトグルタル酸に相互変換する酵素で
アミノ酸を体内で使われやすい形にする働きを示します

AST ALTのことを説明する図

ちなみに 
昔はGOT GPTと呼ばれていましたが
書き手が医学部を卒業するころから 
AST ALTと呼ばれるようになりました


ASTもALTも 
普段は細胞の中で働いていますが

AST ALTは普段は細胞の中で働いていることを示す図

細胞が傷害を受けると 
血管の中に放出されて流出してきます

細胞が傷害を受けると 血管の中に放出されて流出することを示す図

そこで 
血中のAST ALTの量を計測して
細胞がどれくらい痛んでいるか 
推察するわけです


@AST とALTの違い

ASTとALTのいちばん大きな違いは その存在部位です

ALTは 
ほとんど肝細胞にしか存在しないのに対して

ASTは 
肝細胞以外にも 
心筋 骨格筋 赤血球などにも存在します

ですから 肝細胞の傷害の程度を見るには 
ALTの方が適しています

ASTは 肝細胞以外にも 心筋 骨格筋 赤血球などにも存在することを示す図

しかし アルコール性肝障害では
ALTよりASTの方が上昇しますから
他の原因の肝障害との鑑別できます

アルコール性肝障害では 
次回説明するγGTPも上昇するので
ALTよりASTの方が高くて
しかもγGTPも高い方は
飲みすぎにご注意ということになります

アルコール性肝障害ではASTの方が上昇することを示す図


@検査前に激しい運動をすると
 ASTが上がるがALTは上がらない

ときどき お酒を飲まないのに 
ALTよりASTが高くて
再検査に来られる方がおられます

そうした方で意外に多いのが

血液検査をする数日前に
マラソンなどの激しい運動をされたり
定期的に筋トレをされている場合で

運動の際に
筋肉からASTが流出して高くなります

運動を控えて再検査をすると 
何の問題もない場合が多いです


ということで

AST ALTが基準値上限を超えて高値の場合

特にALT値が高値の場合は
肝臓に何らかのトラブルが起こり
肝細胞が傷害を受けている状態が推察されます

*ウイルス性肝炎

*アルコール性肝障害

*脂肪肝

*自己免疫性肝炎

などの病気が疑われますので

AST ALTが異常値を示す疾患のまとめ

基準値上限を超えていたら 
必ず再検査を受けてください

AST ALTの異常値と受診を勧められる値をまとめた図

特に数値が 100 を超えている場合は 危険ですから
至急 医療機関を受診してください


高橋医院