これまで 自律神経について説明してきたので

今日からは 
自律神経が病む 自律神経失調症 の解説を
始めたいと思います


<自律神経失調症の微妙な側面>

 自律神経失調症 という病気には
 “微妙” な側面があります

1960年代から
その存在が提唱され始めた自律神経失調症は
他の多くの病気で認められる
しっかりとした定義や 
学会が作製した診断や治療のガイドラインが
ありません


自律神経失調症はガイドラインがないことを示す図

さらに
欧米では
自律神経失調症は
病気として認められていません

日本でも 
正式な病名としては
公認されていないのです

ですから
疾患のとらえ方 治療方針も
医師によりまちまちで 
一定していないのが現状です

疾患のとらえ方 治療方針が医師により一定していないことを示す図

“微妙” と表現したニュアンスを 
ご理解いただけたでしょうか?

自律神経の説明を始めた項
医学部では 
自律神経失調症のことをあまり学ばない
と話しましたが 

そこにもこうした事情が
反映しているのかもしれません


<自律神経失調症の症状と診断>

一般的には 自律神経失調症は

頭痛 めまい 動悸 
疲れやすい 倦怠感 吐き気 のぼせ
なんとなく体調が悪い

といった類の  
業界用語で「不定愁訴」と呼ばれる身体症状があり

しかし 
血液検査・画像検査などでは 
何も異常が発見されない


また

不安感 抑うつ症状などの
精神症状をともなうことが多いが
明確な精神障害は認められない

そのような状態を指し示します

自律神経失調症の症状をまとめた図

こうした自律神経失調症が疑われる患者さんの
数は多いのです

不定愁訴はあるけれど
検査してみると 
何も異常がみつからない

内科医としては 
診断に迷う悩ましい存在です

診断に迷う医師の姿

いろいろと調べても
何も異常がないとき

患者さんが訴える症状が
なぜ起こるか説明がつかないとき

候補として頭のなかに 
この病名が浮かんできます


最後に自律神経失調症を思い浮かべる医師の姿

そもそも 
自律神経の機能を検査することが難しい
という不利な点があります

心臓や肺の病気は 
心電図やレントゲンをとれば異常がわかりますし

肝臓 膵臓 腎臓 糖尿病などの生活習慣病は
血液検査や尿検査で異常が見つかります

血液検査の様子

ところが あとで詳しく説明しますが
自律神経の働きを
検査で正確に評価するのは難しい

だから はっきりと診断が下せないのです


しかも

*本当に心臓 肺 肝臓などの 
 内臓の病気を否定できるか?

*うつ病や神経症などの 
 精神科領域の病気ではないのか?

この2点を 
念入りに吟味しなくてはなりません

安易に自律神経失調症と判断して
内臓の病気や精神科の病気を
見逃すことがあってはならないのです

検査結果を見て悩む医師の姿

現代の医療のなかで 
自律神経失調症という病気がおかれた
“微妙”な位置を 
ご理解いただけたでしょうか?

それでも 
自律神経失調症の
病態の解明や治療法の検討は進んでいます

次回から 
そうしたことについて詳しく説明していきます
高橋医院