自律神経失調症の病態
ヒトの体の器官 内臓は 交感神経と副交感神経によって 二重支配を受け そのバランスにより 機能が制御されていることをお話ししました 特に 循環 呼吸 消化 代謝 体温調節といった 生命維持の根幹にかかわる重要な機能が 自律神経により調節されています <自律神経失調症では 交感神経と副交感神経のバランスが乱れている> 自律神経失調症の病態の本質は この交感神経 副交感神経の バランスの乱れにある と考えられています たとえば ストレスがかかると 交感神経の活動が亢進し 身体は戦闘モードになります そして ストレスがなくなると 交感神経の興奮が静まり 副交感神経の働きが復活してきますが ストレスが持続すると 交感神経の優位状態が続き 内臓の緊張状態が続いて やがて内臓が器質的障害を起こしやすくなります さらに そうした状態が続くと 副交感神経も疲弊して 機能が低下してきます つまり 自律神経失調症は 交感神経の緊張 活動が 度を越した状態が持続して 逆に副交感神経は 機能が低下してしまった状態 と考えられます ちなみに 副交感神経の機能は 加齢により衰えてきます したがって 高齢者の自律神経失調症は 副交感神経が低下するタイプが多い そうなると 循環器系は休めなくなり 加齢による動脈硬化の進行もみとめられるので 狭心症や心筋梗塞などの病気を 起こしやすくなります また *副交感神経の働きは老化の指標になる *副交感神経は 交感神経よりダメージを受けやすい といった仮説も考えられています <原因としてのストレス> あとで詳しく述べますが 自律神経失調症の原因で いちばん多いのは ストレスです ですから ストレスで自律神経の機能が低下すると 上述したような病態で 内臓の機能異常をともなう 自律神経失調症になる ストレスがかかっても 自律神経の機能低下がなければ ストレスにより惹起される 不安に対する治療のみで大丈夫 ということになります 自律神経がしっかりしていれば 内臓病変は起こらないのです @ストレスを受けたときに体内で起きていること ストレスによる自律神経失調症のときは 脳内での神経伝達物質の 産生パターンに異常が見られます ストレスで 交感神経が活発になると アドレナリン ノルアドレナリンが分泌され 大脳辺縁系で 不安 イライラ 怒りの情動が起こり 視床下部に影響して 自律神経のバランスが乱れ失調症を生じます ストレスによって ドパミンも分泌されますが アドレナリンと異なり ストレスが快感になるような 心地よい緊張が呼び起こされます つまり ストレスに強い人は アドレナリンよりドパミンを 多く分泌するようです ドパミンを分泌させるには 前頭葉を使うことが大切で 前向きになる 想像する 物を創る 歩く といったことが効果的です 一方 精神を安定させるセロトニン その分泌は ストレスにより減少します セロトニンは 交感神経を抑え 副交感神経の味方をするので 自律神経失調症のときは セロトニン分泌が増えた方が良い そのためには 外で運動する 無我の境地になる作業をする 笑う といった行動が効果的です
高橋医院