中央区・内科・高橋医院の
健康のための栄養学に関する情報


これまで 
日内変動・サーカディアンリズムを司る
時計遺伝子により
脂質や糖質代謝の日内変動が規定されることを
説明してきました

しかし 逆方向の影響

つまり

食事内容や 食事の時間により
日内変動・サーカディアンリズムが変化を被る現象

もあります


<末梢細胞の体内時計は食事でリセットされる>

サーカディアンリズム
脳の視交叉上核に存在する体内時計を
中枢として規定されますが

肝臓や脂肪組織などの代謝に関わる
末梢組織の細胞ひとつひとつにも
体内時計が存在しています

そして

中枢性の脳の体内時計が 
朝の光によってリセットされるのに対し

末梢性の細胞レベルの体内時計は 
光に非依存性の“腹時計”で
光でなく 
食事によってリセットされるのです

脳の中枢時計は光でリセットされ 末梢性の細胞レベルの体内時計は食事によってリセットされることを示す図

特に 朝食依存性で
朝食は
強い食事性同調刺激で 
体内時計リズムの形成に重要な働きを示します

朝食は体内時計リズムの形成に重要な働きを示すことの解説図

一方 夜食は 体内時計を遅らせる要因になります

<食事内容による細胞の体内時計リセットの変化>

では 食事はどのようにして
細胞レベルでの体内時計のリセットを
行うのでしょう?

まず 食事の内容の影響があります

@糖質の関与

糖質摂取により上昇するインスリン
*時計遺伝子のPer2発現増加 
*脂質代謝関連の転写因子Rev-erbαの発現低下
を 肝臓で 引き起こします

インスリンを強く分泌させる食物は 
体内時計を動かせやすく

特にGI値が高く
血糖やインスリンが上昇させやすい食事が
体内時計をリセットしやすいことから

高GI食品は朝食に 
低GI食品は夕食に
摂ると良いとされています


また 消化の良いデンプンは
早い血糖上昇と高いインスリン分泌を引き起こし 
体内時計同調効果を高めるため
朝食には一定量の炭水化物の摂取が
望ましいとされます

インスリンが体内時計同調効果を高めることを示す図

さらに 
炭水化物とタンパク質の同時摂取は
体内時計同調効果が高いとされます


@脂質の関与

体に良いとされる
不飽和脂肪酸のDHA EPA
G蛋白質共役受容体GPR120を介した
GLP-1上昇によるインスリン作用増強効果により
体内時計同調効果を高めます

逆に 
飽和脂肪酸に富んだ高脂肪食を摂ると
脂肪組織等での
時計遺伝子の発現が減弱してリズムを狂わせ
肥満 脂肪肝 高インスリン血症 炎症
などを誘導します


@カフェイン コーヒー

カフェインやコーヒーも
体内時計に影響を与え

*体内時計の周期が延長する

*夜の摂取により 
 肝の時計遺伝子Per2の位相が後退する

*夜のカフェイン摂取は 
 体内時計を乱す可能性がある

*朝のカフェイン摂取は 
 抗肥満効果を高める

といった作用が認められています


カフェインやコーヒーが体内時計に影響を与え 摂取時間により代謝に影響を及ぼすことを示す図


<食事時間による細胞の体内時計リセットの変化>

食事の内容だけでなく
食事を摂るタイミングも 
体内時計に影響します

絶食時間が長く空いた後の食事
末梢組織の体内時計のリセット作用が
いちばん強いことが 明らかになっています

また
朝食の時間帯での食事は
体内時計を前進させる方向に同調し

夕食にあたる時間帯での食事は 
後退させる方向に同調します

体内時計のリセットは 
光刺激により中枢がリセットされる朝に
末梢組織も同期して行われるのが良いので

夕食から朝食までの時間がいちばん長くして
朝食後にリセットされるのがベストです



食事を摂るタイミングが体内時計に影響を及ぼすことを示す図

一方 夕食を遅らせれば遅らせるほど
昼食と夕食の時間が長くなり 
夕食と朝食に時間が短くなるので

末梢組織の体内時計は 
普段と異なる位相に動いてしまい
リセットが乱れてグチャグチャになってしまいます

ですから 
規則正しい時間帯に
朝食 昼食 夕食を摂ることが重要で

規則的な食事時間をとれば 
食事の量や質に関わらず
正常な日内リズムを刻み 
肥満や糖尿病を防げることになります

ということで

食事の内容や摂取時間による
日内リズムの変化と
それにともなう肥満や糖尿病の発症リスクについて
解説してきましたが

食事の内容や摂取時間による日内リズムの変化と肥満や糖尿病の発症リスクに関する説明図



次回は 具体的に 
どのような時間帯に
どのような内容の食事を摂れば
日内リズムを乱さずに
健康的な生活を送れるか解説します


高橋医院