片頭痛
片頭痛は 筋緊張型頭痛と比べると痛みが強く 日常生活への支障が大きい頭痛です 20~40歳代の女性での発症が多く 両親や兄弟姉妹に似たような頭痛の方が おられる頻度が高い 全体での有病率は8.4%ですが 0歳代女性は17.6% 40歳代女性は18.4%と高くなります 約1/3の患者さんで あとで述べる「予兆・前兆」が認められます 繰り返す頭痛により受診する患者さんの 50~90%程度を占め 頭痛の外来患者さんのほとんどが 片頭痛で悩まれている患者さんです 但し 片頭痛の患者さん全体の 30%ほどしか受診されておらず 残りの70%の患者さんは我慢されているようで この傾向は諸外国に比べ特に日本で高いようです (日本人は良きにつけ悪しきにつけ我慢強い) 年をとるにつれて 症状が改善する傾向があり 男性での有病率は30歳代で9%なのが 60歳代では2.1%に減り 女性でも30歳代で28.1%なのが 60歳代では6.4%に減ります <症状> ズキンズキンと脈うつような拍動性の痛みが 特徴的ですが 非拍動性の痛みを感じる方も 50%ほどおられます 頭痛は 月に1~2回から週に1~2回 発作的に起き 数時間から 長い場合は2~3日間続くこともあります 片側性が60%で 両側性が40% 両側性でも左右差がある場合が多い 悪心・嘔吐を 高頻度にともなうのも特徴的です 生活の支障度が高く 体を動かすこと 歩行や階段昇降により増悪して そうした行動を避けるようになる 70%ほどの患者さんは 頭痛に先立ち 後頭部の張りや肩こりを認め 音 光 においなどに敏感になる患者さんも少なくありません <予兆と前兆> 片頭痛で見られる特徴的な現象で まず *あくびがでる *異常な空腹感 *イライラする *眠くなる といった予兆が 前兆のかなり前に見られます そして頭痛が発現する60分前から直前にかけて *目がチカチカする *手がしびれる *言葉がうまく出ない といった前兆が見られます 前兆の多くは *5分以上かけて徐々に進展する *5~60分は持続する *片側性 のことが多いようです <誘因> 片頭痛の70%に 何らかの誘発因子があります @日常生活に関する誘因 *ストレスや疲れから解放されたとき *不規則な睡眠 *運動や日常的な動作 *人混みや炎天下 *気候の変化や温度差 @食事に関連する誘因 *空腹 *アルコール *匂い @女性では 生理が誘因となることもあり 排卵日前後や月経開始前に発作が起きやすいとされています <慢性化> 片頭痛の約20%は慢性化します 発作がないときも 緊張型のような症状を持続的に自覚し 片頭痛そのものは 月に15日以上認めます *母親が片頭痛である *肥満 睡眠時無呼吸 *ストレス などが 慢性片頭痛になる危険因子とされています <治療> 軽度~中等度の症状には アセトアミノフェンや消炎剤が 中等度~重度の症状には トリプタン(セロトニン受容体作動薬)が用いられます 予兆期 前兆期には消炎剤の方が効き トリプタンは 痛みが始まってすぐに できるだけ早く 服用するのが効果的です (前兆があるときは 前兆が終わってから) 片頭痛は 何らかの機序により頭蓋内の血管が拡張して起こります (緊張性頭痛は 反対に血管が収縮して起こります) トリプタンは 血管の拡張・収縮に関わる 複数のセロトニン(5-HT)受容体に作用して 拡張した血管を収縮させて 痛みを軽減すると考えられています <日常生活で気をつけること> *睡眠など 規則正しい生活を心がける *ストレスや疲労をためすぎず 適度に解消する *アルコールなど 頭痛のきっかけとなる食品をとりすぎない *予防効果のある マグネシウムやビタミンB2などを摂取する 片頭痛は症状が強いため 日常生活が障害されることが多いですが 我慢して受診されない患者さんも多くおられます しかし 新しい薬も使えるようになり 以前に比べると薬が効くようになっていますので 日々の頭痛を我慢せずに 受診されることをお勧めします
高橋医院