サルコペニア
サルコペニア という言葉を聞いたことがありますか? 最近の医療関係の話題では 耳にすることが多いキーワードです <サルコペニアとは?> 全身の骨格筋の量 および 筋力の低下が 進行性に認められ それにともない 身体機能低下がみられるようになる病態を サルコペニア と呼びます 高齢者が増えてきた今の世の中で とても注目されています 筋肉の量の減少は 25歳頃から始まり 50歳を過ぎると 徐々に顕著になるとされています 60~70歳で5~13% 80歳を超えると11~50% の方が サルコペニアを患っておられ 特に男性では高年齢ほど高く 85歳以上では約半数が サルコペニアと診断されています 日本全体では 人口の約8%がサルコペニアで 患者数に換算すると 約370万人もおられるとのことです <サルコペニアの診断> サルコペニアの診断は *筋肉の量の測定 *筋肉の機能の評価 によって なされます @量の測定は *二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法) *バイオインピーダンス法(BIA法) により行われますが これは専門病院での話ですね @機能の評価は 主に歩行速度の測定により行われます こちらの方が現実的です 若年男性の平均歩行速度は1.5~1.6m/秒で 0.8m/秒以下になると 機能低下と判断されます 横断歩道は 1m/秒の歩行速度で渡りきれるように設計されているので *横断歩道を青信号の間に 渡りきれなくなるようなら要注意で *若い方が渡りきったときに 横断歩道の中央に達しているかどうか で判断できます また 身体能力のバランス 強さ 持久力なども 評価の対象になります まず歩行速度を評価して 0.8m/秒以下の場合は 筋肉量を測定し 低下が認められれば サルコペニアと診断されます 歩行速度が0.8m/秒より速くても 握力が 男性で26Kg 女性で18Kgを 下回る場合は サルコペニアと診断されます もっと簡便な 筋肉量をチェックする方法としては 「指輪っかテスト」があります ふくらはぎのいちばん太い部分を 両手の人差し指と親指で 輪っかを作り囲んでみて すき間が出来るようなら 筋肉量が減少しているとみなされ サルコペニアが疑われます また 筋力の低下を簡便にチェックする方法は 「片足立ち上がりテスト」で 椅子に座り両手を前に組んで 片足で立ち上がろうとしたとき 左右どちらかの足での立ち上がりが出来ないと 筋力低下 が疑われます <原因> サルコペニアになる原因でいちばん多いのが *加齢による筋肉量の減少 *筋肉が萎縮することによる筋力低下 です 筋肉の重量は 成人では体重の約40%を占めていますが 40歳から年に0.5%ずつ減少し 65歳以降には減少率が増大し 最終的に80歳までに30~40%の低下 がみられます 加齢にともない *筋肉のタンパク合成能が低下し *再生能力も落ちますし *筋肉のタンパクの分解は逆に増加します こうしたことには *活性酸素の産生増加 *慢性炎症の持続 といった 加齢でしばしばみられる現象が関与しています 増加した活性酸素は タンパク合成を抑制しますし 慢性炎症で産生される炎症性サイトカインは タンパクの分解を促進します また 筋力の変化は 筋肉量の変化より遅れ 50歳まで維持されますが 50歳から70歳では10年間に15%ずつ減少します <対策> サルコペニアになると 歩行や日常生活に支障をきたしてしまい 生活の質が損なわれることになってしまいますから 筋肉量が落ちないように 筋力が低下しないように 運動と栄養の両面から予防策を講じることが大切になります @運動に関しては 「ややきつい」と 感じる程度の筋力強化運動を 継続的に実践することが重要ですが 負荷が低い運動でも 一回の持続時間を短く 回数を多くすれば 効果が得られます 筋肉量を維持する筋トレについては あとで詳しくご紹介します @栄養に関しては 必須アミノ酸 ビタミンDの補充が重要です 特に筋力強化運動を行ったあとに 必須アミノ酸を多く含むタンパク質を摂ることが 大切とされています 身近に高齢者がおられる方は その方がサルコペニアになっていないか 充分に注意してあげてください <高齢でなくても 安心できない> ところで まだ若い方はここまで読まれて サルコペニアなんて自分とは縁遠い 関係のないことだ と思われているでしょうが ヒトによっては 若くても安心できないことが 最近明らかにされてきました それはサルコペニアと肥満との関係です 次回は 気になるサルコペニア肥満について ご紹介します
高橋医院