前回に引き続き

健康診断でD判定やE判定になっていなくても
糖尿病発症のリスクがある方がおられる

という話をします


<血糖値が基準値内でも 安心できない?>

以前に隠れ糖尿病の話題を提供しましたが

アメリカでは「前糖尿病」という定義があり

空腹時血糖値が 100~125mg/dl

HbA1c値が 5.7~6.4%

というふたつの項目が定められています

いずれも基準値内なので 
健康診断の結果がこの値でも 
糖尿病の注意は喚起されません

しかし 健康診断や人間ドックで 
糖尿病とは診断されなかった方でも

上記のふたつの基準の 
片方だけ 両方ともあてはまる方は
いずれにも当てはまらない方に比べて

数年後の糖尿病発症リスクが高くなります

片方のみ当てはまる方(下グラフのBまたはC)は
6倍

両方ともあてはまる方(下グラフのD)は
32倍

リスクが高まることが明らかにされました

軽度のHbA1c高値 軽度の空腹時血糖高値のいずれにも当てはまる人が糖尿病を発症するリスクを示したグラフ

つまり 繰り返しになりますが

空腹時血糖値やHbA1c値が
基準値内にあっても

基準値上限ギリギリにある場合は
その状態が長期間持続すると
糖尿病を発症するリスクが高い

ことになります


「隠れ糖尿病」の話題のときに
空腹時血糖が基準値内にあっても
食後高血糖の方は危険だと説明し

*空腹時血糖が126mg/dl未満でも
 HbA1cが5.8%を越えている

*HbA1cが基準値内でも
 空腹時血糖が110mg/dlを越えている

方は 要注意と説明しましたが


本当に安心できるのは 

*空腹時血糖が100未満

*A1cが5.6以下

ということになりそうです


ご自身の健康診断や人間ドックの
過去のデータを保存されている方は

糖尿病についてこれまでに指摘されたことはなくても
いちど 数年前の血糖値やHbA1c値を
チェックされることをお勧めします

<健康な肥満者は存在するか?>

肥満ではどうしていけないかというと
肥満をベースにして 
高血圧 糖尿病などの生活習慣病が発症するからです

では 

肥満でも生活習慣病を発症していなければ
それは「健康な肥満」で良いのではないの?

という考え方が
特に欧米では幅を利かせているようです

そこで メタボリックシンドロームの基準

高血圧
高トリグリセライド血症
低HDL血症 
空腹時血糖異常
のうち ふたつ以上を有する

を用いて

*肥満だが メタボではない人 
(健康な肥満者 下図のMH-O)

*肥満でなく メタボでもない人
(非肥満者 下図のMH-NW)

が 2年後にどうなったか検討すると

メタボになる人の割合は 
非肥満者に比べ 健康な肥満者では
倍以上も多くて20%にも達することが
明らかになりました

下の棒グラフで
いちばん左のグループの
メタボでない非肥満者(MH-NW)では
2年後にメタボになる人(黒い棒:MA-NW MA-O)は
増えていませんが

左から2番目のグループの
メタボでない健康な肥満者(MH-O)では
2年後にメタボになる人(黒い棒)が
増えているのがわかります

2年後にメタボになるリスクは メタボでない健康な肥満者は非肥満者に比べて高いことを示すグラフ

また 糖尿病の発症を調べてみると

健康な肥満者は
非肥満者に比べて
発症リスクが2.7倍も高く

また 最初は非肥満者でも
調査した2年のあいだに
健康な肥満者になった方は
非肥満を維持している方と比べて
発症リスクが2.0倍高いこと
が 明らかになりました


一方 最初は健康な肥満者でも
2年の間に肥満が解消できた方は
解消できなかった方に比べ
発症リスクは半分近くに減少すること

も 明らかになりました

糖尿病を発症するリスクは メタボでない健康な肥満者は非肥満者に比べて高いことを示すグラフ

つまり 
メタボでない健康な肥満者でも
2年後に
メタボになるリスクも
糖尿病を発症するリスクも
非肥満者に比べて高く

やはり
肥満そのものがリスク要因であることが
再確認されました


もともと日本人は欧米人と異なり
それほど太っていなくても
糖尿病を発症しやすいので
太ると余計に発症しやすくなるということでしょう

興味深いのは
健康な肥満者で糖尿病を発症する人は
脂肪肝を合併している人が多いようで

糖尿病と脂肪肝の縁は
浅からぬものがあるようです

以上 前回と今回のお話をまとめると

*若い頃に比べて
 体重が急激に増えたことがあるとマズイ

*BMI値 血糖値 HbA1c値 が
 基準値内にあっても 
 基準値内で高目の状態が持続するとマズイ

*健康な肥満という状態は 長続きしない

ということが はっきりしました

たとえ これまでに
糖尿病の指摘を受けたことがない方でも

ご自分の過去の健診やドックの結果を振り返って 
その推移を検討してみることをお勧めします

特に
ご両親や兄弟姉妹などの親族に
糖尿病の方がおられる場合

残念ながら そうでない方に比べて
糖尿病を発症しやすいので
是非 過去のデータの推移と
現在の値を比較検討してみてください

そして
もし心配な場合は相談にいらしてください

糖尿病を発症しないですむように
早目に対策を立てていきましょう
高橋医院