赤血球の働き
当院に来院される 女性の患者さんの病気で 意外に多いのが貧血です だるい 階段を昇ると息切れがする といった症状で 来院されることが多い そこで今週は 貧血について解説します 貧血は 血液のなかの赤血球の数が減り 赤血球中のヘモグロビンという 酸素を運ぶタンパク質の量が低くなる病気です ということで まず 赤血球やヘモグロビンについて説明します <赤血球> @ヘモグロビン 赤血球は 血液の細胞の1種で 内部に存在するヘモグロビンというタンパク質に 酸素を結合させて 酸素を体のすみずみに運搬する役目を 果たしています @赤血球が作られる場所 骨髄という骨の内部で 1秒間に200万個 1日に2000億個 産生され その寿命は約120日です 凄い数ですね! 酸素を体のすみずみに行き渡らせるには それだけの赤血球が必要なのです では 骨髄では どのようにして赤血球が 造られているのでしょう? 骨髄は 体のあらゆる骨の内部にある部分で 赤血球のみならず 白血球 血小板などの 血液の成分が造られる場所です お母さんのお腹のなかにいる胎児期には 造血は肝臓で行われますが 出生後は骨髄で行われるようになり 生まれてから3年目までは 主に大腿骨で それ以降は 椎骨(背骨) 胸骨(心臓や肺を覆う骨) 肋骨 で血が造られます 赤血球は 造血幹細胞 → 赤芽球前駆細胞 → 赤芽球 → 網状赤血球 → 赤血球 という具合に 骨髄のなかで元となる多能性造血幹細胞から 分化・成熟していきます 腎臓で作られる エリスロポエチンというホルモンが 赤芽球前駆細胞に作用して 赤血球が成熟するラインが動き始めます また別の機会に説明しますが 腎臓の調子が悪くなると貧血が生じるのは エリスロポエチンが産生されなくなり 骨髄で赤血球が造られなくなるからです <ヘモグロビン> 赤血球系の成熟が赤芽球まで来ると 赤芽球がヘモグロビンを合成し始めます ヘモグロビンは 2本ずつのα鎖 β鎖からなるグロビンに ヘムという酸化鉄が結合して 分子が形成されています 赤血球 ひいては血液が赤いのは この酸化鉄が赤い色だからです そして ヘムに含まれる鉄に酸素が結合して 赤血球によって血管を流れて 全身にくまなく酸素が供給されます ですから 何らかの理由で貧血になり 赤血球やヘモグロビンが足りなくなると 酸素が運べなくなるので だるくなったり 動くと息切れがしたりするわけです <鉄> 酸素と結合する鉄は 体内には3~4g存在します そのうちの70%は 赤血球のヘモグロビンに存在し それ以外は *筋肉のミオグロビン *電子伝達系 代謝酵素の補欠分子のヘム族 として存在し機能しています 赤血球が老化して脾臓で壊されると そこに含まれている鉄は再利用されます @トランスフェリン 血管を流れる血液中に存在する トランスフェリンというタンパク質と結合して 骨髄に運ばれて 赤血球が作られる際に利用されます @フェリチン トランスフェリンに結合した鉄は 肝臓などに運ばれ フェリチンという貯蔵鉄としても存在します 肝臓 脾臓 心臓など各臓器の 細胞内に鉄を貯蔵していて 何らかの理由で体内の鉄が不足してくると 不足を補うために まず貯蔵鉄のフェリチンが利用されます あとで詳しく説明しますが 貧血の治療で鉄分を補う際には このフェリチンが充分に補給されるまで 治療を続ける必要があります 貧血の原因となる 赤血球の役目と その造られ方 赤血球が酸素を運ぶために必要な ヘモグロビン 鉄の働きについて ご理解いただけたでしょうか? 次回は 貧血という病気について 具体的に説明します
高橋医院