ご先祖様から受け継いだ体質と
現代社会の生活環境のミスマッチから生まれ
世の人々を蝕んでいる生活習慣病

このディスエボリューションを
どうしたら解決できるのでしょう?

繰り返しになりますが
ヒトの身体は
数百万年かけて作られた進化を引継いでいるので

*カロリーが豊富で 
 糖分 塩分 単糖類が多く
 食物繊維 ビタミンなどが少ない食事を摂っている

*体を動かさず 
 過度に快適で清潔な暮らしをしている

といった現代の生活環境には
ほとんど適応できないのです


現代の環境の問題点は

*安価だが 食物繊維が少なく 
 糖質が多い食事が
 たとえ夜中でも 大量に摂取できる

夜中に糖質の多い食事を貪り食う人の姿

*身体活動が 著しく低下している

運動不足を指摘するポスター

の2点に尽きます

しかし 

既に確立した
便利で飽食な食生活や
動かないで済む生活習慣を変えるのは
お金も時間もかかるので難しい

たとえそれが
薬による治療より効果的だとわかっていても、、、

さらに厄介なことに

生活習慣病は 
中年になってから発症するので
進化の一番の促進因子である繁殖成功度には
あまり影響しません

だから ヒトの身体に
生活習慣病を克服するような
進化 自然選択が起こる必然性は
ないかもしれません

たとえ何百年待っても
進化 自然選択によるミスマッチ解消は
起きないかもしれない

一方で現代人は

*美味しい加工食品を食べたい 

*苦労を最小限にしたい 

*清潔でいたい

といった欲望に満ち溢れていて

そうした欲望が有害なものであると
うすうす気がついていても
今の生活を楽しめる効果が大きいと判断すれば

合理的でなくても
欲求や快楽に身を任せ 
許容して満喫してしまう

合理的でなくても 欲求や快楽に身を任せ 許容して満喫してしまうライフスタイルを示した図

快適さのあくなき欲求があり
安楽にしてくれるものは
おしなべて良いものであると信じてしまう

ましてや 安楽な生活の健康への有害性は
時間がたたないと現れてこないので
なかなか気がつかない

いったい どうすればいいのでしょう?


また 

ミスマッチ病の治療は
病気の原因を本当に治しているわけではなく 
異常値を改善しているだけです


糖尿病 高血圧 脂質異常症などを
薬で治療している患者さんは

薬を止めることはできますか?

と よく聞かれますが

今 使われている薬は
病気の原因となる体質を
根本的に治しているわけではありません

たとえば脂質異常症の治療薬
(HMG-CoA還元酵素阻害剤)は

肝臓での
コレステロール合成反応に関わる酵素の働きを抑制して
肝内コレステロール量を下げますが 

体は
ホルモン合成などに必要な
コレステロール量を確保するため
肝臓のLDLレセプター発現量を増やし
血中LDL-Cを肝内に引きこみ

その結果として 
血中LDL-C値を低下させています

HMG-CoA還元酵素阻害剤の作用機序を示す図

ですから
薬を止めれば血中LDL-C値は 
再び増加してしまいます


但し
ミスマッチの原因を解決できれば
つまり 生活習慣を改善することができれば
薬の量を減らしたり
止めることが出来る可能性はあります

この点は強調しておきたいところです


では 
生活環境はどうすれば改善できるのか?

環境の変化 と 行動の変化 が必要ですが

前者は成し遂げるのが難しく
後者は順守するのが難しい

しかも 繰り返しになりますが

ヒトが本能的に好む 
甘く 脂肪たっぷりの食物は
長い歴史の過程で
それを切望するように進化したヒトが望むもので

ましてやヒトは
快楽を求める厄介な生き物なので
その本能を乗り越えるのは至難の業です

さらに 
体質を変えることはできません 

単一な遺伝子を作り変えることは
できるようになっても
生活習慣病は複雑に絡んだ遺伝要因により
起こってくるので
体質は容易には変えられません

最先端の生命科学技術によっても
自らの体質は 
容易に変革できないのです

だから 環境 生活習慣を変えるしかないのです

生活習慣を変えることが出来ることを強調するポスター

ダニエル先生は
ミスマッチを認識する知識を得るだけでは不充分で

環境を変化させるために必要で
基本的な衝動を乗り越えさせることができる
動機付け それを維持させる支えが
必要だと主張されます

たとえば 
政府による対策も重要だろうと指摘されます

*日常食べている食品の栄養情報の徹底した開示

*体育活動を充実させる

*諸悪の根源のジャンクフードの広告の規制

などなど

そうしたシステムの変化や社会啓蒙が
充実することが望まれますが

でも やっぱり

個人の危機意識の認識と 欲望の克己こそが
一番必要なのではないでしょうか?

そこがなんとか出来れば
少なくとも個人レベルでは なんとかなる

個人のやる気が大切と訴えるポスター

そんな思いで患者さんたちと接していますが
正直なところ 
現実は難しいと感じることも少なくなく、、、

うーん ミスマッチ病の克服 難しいですね

患者さんと一緒に悪戦苦闘していく日々が続きます

 

高橋医院