肥満で誘導される健康障害1
肥満が原因で発症してしまう健康障害には 以下のようなものがあります このブログでおなじみの病気が多いですが もういちど *肥満との関連 *減量による治療効果 という観点から 見直してみましょう <高血圧> @肥満との関連 *BMI高値 ウエスト周囲長 経時的な体重増加は 高血圧の発症リスクです *肥満者は 非肥満者に比べ 2~3倍高血圧になりやすいのです *若年期から肥満な人 中高年にかけて体重が大きく増加した人は より危険です *昔は高血圧の原因は塩分の摂り過ぎでしたが 最近は 肥満による高血圧の方が多くなっています 高血圧の原因で肥満が占める割合は 男性では11%から27%に 女性では19%から26%に 増えています
@病態 肥満により起こってくる *交感神経系亢進 *ナトリウム貯留 食塩感受性 *インスリン抵抗性による高インスリン血症 *睡眠時無呼吸 などが 血圧の上昇に関与すると考えられています
@減量による治療効果 *3%以上の減量で 血圧の低下がみられます *体重1Kgの減量で 収縮期 拡張期血圧が それぞれ1mmHg低下します <脂質異常症> @肥満との関連 肥満の程度は 善玉コレステロールのHDL-Cの低下 中性脂肪の増加と 正の相関を示します この相関の程度は 悪玉コレステロールのLDL-C増加との関連より 高いとされています つまり 肥満になると 悪玉コレステロールよりも 中性脂肪の増加 善玉コレステロールの低下 により動脈硬化を進ませてしまうのです @病態 *肥満によって生じる 肝臓からの過剰なリポタンパク産生 リポタンパクリパーゼ作用の減弱により 中性脂肪を多く含むリポタンパクの代謝が うっ滞するために起こります *レムナント 酸化LDL sdLDLなどの 動脈硬化惹起性リポタンパクも出現します *肥満では 食後高脂血症が起きやすいです @減量による治療効果 *食事療法による体重減量は 脂質の異常値を改善させます ・3%の減量で 中性脂肪 HDL-C値が改善できます ・1Kgの減量で LDL-C 0.8mg/dL減少 HDL-C 0.3mg/dL増加 中性脂肪1.3mg/dL低下 といった効果が得られます ・10Kgの減量で 総コレステロールは9mg/dL低下します *運動によりHDL-Cが増加します ・強度や頻度を増やすより 持続時間を長くする方が効果的です ・週に120分以上が望ましいとされています <糖尿病> @肥満との関連 *BMI高値 ウエスト周囲長 経時的な体重増加は 糖尿病の発症リスクです *特に 若年時からの体重コントロールが重要です *BMIが ・1上昇すると 発症リスクは1.2倍増加 ・2低下すると 27%低下 します また ・BMI 25~29.9では 3倍増加 ・BMIが30を超えると 7.2倍に増加 します *体重減少を目標とした生活習慣改善は 発症リスクを44~58%も低下させます @減量による治療効果 *境界型糖尿病への 食事 運動療法による生活習慣改善 減量は 薬物治療と同等の発症リスク低下が期待できます *GLP-1作動薬 SGLT2阻害薬は 減量効果も認められます *運動療法は インスリン抵抗性の改善効果も期待できます
<高尿酸血症> @肥満との関連 *BMIの上昇にともない 尿酸値は上昇します *肥満者は 尿酸クリアランスが低下しているので 血中の尿酸値が高くなる傾向があります *内臓脂肪型肥満の40%で 尿酸産生の過剰が認められます @減量による治療効果 *6か月以上の3%の減量で 尿酸値は有意に低下します <脂肪性肝炎 NASH> @肥満との関連 *BMIの増加とともに 脂肪肝の発生頻度は増え 30歳以上の男性の30%は NASHの母地となる脂肪肝を有しています @減量による治療効果 *減量により 組織学的改善 血液検査値 の改善が得られます *病因のひとつである インスリン抵抗性も改善します こうした病気における *肥満の悪影響 *減量の有効性 について再認識できたでしょうか?
高橋医院