骨がもろくなる病気
今日から骨粗鬆症の解説シリーズを始めます <骨粗鬆症とは?> @骨が弱くなり 骨折しやすくなる病気です 専門的に言うと *骨量の低さ *骨組織の微細構造の異常 を特徴とし 骨がスカスカになるので 脆弱性が増大し 骨折の危険性が増大した状態 です @骨の強さ(骨強度)は *骨の量(骨量 骨密度)と *骨の質(骨質) のふたつの要素で決まります 骨を鉄筋コンクリートに例えると *コンクリートに相当するのが 骨量・骨密度 *鉄筋に相当するのが 骨質 です 骨粗鬆症は 骨量・骨密度が減少したり 骨質が劣化して骨が弱くなり 骨折しやすくなった病気 なわけです 当初は 骨量・骨密度が低下して 骨折しやすくなる病気とされていたため 予防にあたっては 骨量を中心に考えられていましたが 骨量が正常範囲であるにもかかわらず 骨折リスクが高い患者さんがいることがわかり その原因を調べると 人によって骨質に違いがあることが 明らかになってきました 今では 骨量・骨密度が70% 骨質が30% の割合で骨強度が決まると考えられています 骨量・骨密度は カルシウム マグネシウム リンなど ミネラル成分の多寡によって その状態が規定されます 骨質は *微細構造 *骨代謝回転 *微小骨折の有無 *石灰化の密度 などで規定され 病的な状態では 酸化ストレスによる骨基質成分の変化も影響します 加齢や糖尿病などの因子が加わると 骨量が同じでも 骨質が変化することにより 骨折リスクが増加するわけです 健康な骨の内部では たくさんの棒状の骨(骨梁)が 縦横に連結し強度を保っています 骨粗鬆症になると これらの棒状の骨が 細くなったり切れたり 太さが変わらなくても弱くなったりして もろくスカスカの状態になり 折れやすくなるのです <診断基準> @脆弱性の骨折がある場合 *椎体骨折 大腿骨近位部骨折あり *骨密度が基準の80%未満 @脆弱性骨折がない場合 *骨密度が基準の70%以下 @続発性骨粗鬆症の原因を認めない こうした状態が 骨粗鬆症と診断されます 診断に必要な骨密度の測定部位は 原則として 腰椎 または 大腿骨近位部 で行われます いずれも 骨折リスクが多い部位で 椎体骨折は その後の大腿骨近位部骨折の 独立した危険因子になります <疫学> 国内の患者さんは 高齢女性を中心に 年々増加しており 自覚症状のない未受診者を含めると 推計で1280万人に上ります (男300万 女980万) *腰椎(L2~L4)での診断では 640万人(男80万 女560万) *大腿骨頸部の診断では 1070万人(男260万 女810万) と推定されています 年間発症率は 150万人ほどで 腰椎では50万人 大腿骨近位部では105万人 と推察されています 患者さんの8割は女性で 高齢女性に多く 60代女性の3人に1人 70代女性の2人に1人が 骨粗鬆症になっている可能性があるとされます 70歳を超えると 男性でも増えてきます 部位により 発症率の違いがあり 大腿骨近位部骨折は 今でも増加していますが 椎骨骨折は 減少している可能性があります <合併症としての骨折> 骨粗鬆症で最も問題となるのが 診断基準でも登場した 脆弱性骨折です なかでも 背中や腰の骨が体の重みで押し潰れてしまう 椎体骨折は 背中や腰が曲がる大きな原因になります しかし 時に骨折を起こしていても 自覚症状がない場合もあり 単なる腰痛として見過ごしていたりされます 比較的若い年代でも多く起こるので要注意です 一方 高齢者が股のつけ根の大腿骨近位部を骨折すると 治るまでに時間がかかり その間に全身の身体機能が低下し 介護が必要になるおそれがあり 要介護状態になるリスクが高くなります 大腿骨近位部骨折の85%は 転倒が直接の原因となっていますので 骨粗鬆症の治療とともに転倒予防も重要です 1ヵ所骨折すると その周囲の骨にも負担がかかり 連鎖的な骨折につながりやすいため 早期発見・早期治療が重要です <予後> 生活の質(QOL)を低下させるのが いちばんの問題です 大腿骨近位部骨折により 日常生活動作の自立が 87%から50%に低下してしまいます 長期的には 骨折の有無にかかわらず 死亡リスクを有意に上昇させます 大腿骨近位部骨折が起こると 死亡率が *1年後 男性は3.7倍 女性は2.9倍 非骨折者に比べて高くなり *10%が1年で死亡する との報告もあります 高齢女性では 独立した死亡リスクとなり 大腿骨近位部骨折以外でも 死亡リスクは約1.7倍高くなります
高橋医院