どうして骨がもろくなるか?
骨粗鬆症では どうして骨がもろくなってしまうのでしょう? <大きな原因> *骨のサイズを決める先天的要因 *女性の閉経にともなう 女性ホルモンなどの分泌代謝の異常 *栄養 生活様式などの環境要因 が 大きな原因となります また 続発性骨粗鬆症では 特定の疾患 薬物治療などが原因となります <骨の新陳代謝のバランス(リモデリング)が崩れてしまう> 骨は多孔質構造で 網目状の骨架橋によって 強度が保たれています 骨は 一度できたら変化しないように思われますが 実は古くなった骨は 常に新しくつくりかえられているのです こうした 骨の新陳代謝のバランスが崩れると 骨粗鬆症になる危険が高まります 新陳代謝のバランスが良ければ 健康な骨を維持できますが バランスが悪いと 骨形成が足りなくなり 骨量が減ってしまいます こうした現象は 加齢や閉経で起こります @リモデリングは 吸収と形成のバランスで規定される 骨を形成する骨架橋は *骨芽細胞による骨形成 *破骨細胞による骨吸収 という 相反する現象によって 常にリモデリングが行われており 古い骨を壊す一方 新しい骨を作ることで 一定状態が保たれています このリモデリングは 3ヶ月のサイクルで行われており 全骨格の3~6%が常にリモデリングされ 全生涯にわたり繰り返されます 骨吸収は 破骨細胞により行われ 古い骨が溶かされて 血液中にカルシウムが放出されます 骨形成は 骨芽細胞により行われ 骨の溶けた部分にカルシウムが付着して 新しい骨が作られます また 骨芽細胞は 骨基質タンパク質を合成して 骨質の形成に関わります さらに 骨芽細胞がリモデリングの過程で変化して生じる 細胞骨表面を覆うライニング細胞 骨基質内に存在する骨細胞も リモデリングに関わります @破骨細胞と骨芽細胞 破骨細胞の働きが リモデリングのトリガーとなります 破骨細胞は 単球・マクロファージなどから RANKL(分化因子)により分化します 骨芽細胞は 間葉系幹細胞から分化します 骨基質タンパク質 Wntなどのホルモン 成長因子 が分化に関わっています <発症のメカニズム> 骨粗鬆症の病態の本体は 骨吸収の相対的亢進による 骨架橋の脆弱化です 要するに リモデリングのバランスが崩れて 骨がどんどん壊されてしまうのです 骨吸収は 数週間 骨形成は数か月かかるので リモデリングが高頻度になると 石灰化が不充分になり 骨強度が低下するのです 骨形成に必要なものは *骨芽細胞の活性化 *石灰化に必要な カルシウム ビタミンDの充分な供給 であり 骨量減少の原因となる因子としては *閉経によるエストロゲンの欠乏 *カルシウム ビタミンD ビタミンKの欠乏 *副甲状腺ホルモンによる骨吸収の亢進 *加齢による筋力低下 寝たきりの不動などによる 骨への力学的負荷の低下 があります こうしたさまざまな原因により 骨吸収が促進して骨粗鬆症になります <リモデリングの制御> リモデリングは 破骨細胞による骨吸収がトリガーとなりますが @破骨細胞の動態の制御機序として *副甲状腺ホルモン 活性型ビタミンD IL-1 IL-6などの炎症性サイトカインが 破骨細胞を分化させるRANKLの発現を亢進させ RANKLの働きで骨吸収が促進する という促進作用 *血中カルシウムが増加すると カルシトニンが分泌され その働きで破骨細胞による骨吸収が低下する *エストロゲンは RANKLの発現を抑制して 破骨細胞による骨吸収を抑制する という抑制作用があります @骨吸収と骨形成の共役(カップリング)により 吸収から形成にスムーズに移行し 骨量が一定に保たれますが そのためには *骨吸収により 骨基質内に蓄積されたTGF-β IGFが放出され 骨形成を促進する *破骨細胞が発現する膜タンパク 分泌タンパクも 骨形成を促進する *EphrinB2 Sema3A Sema4Dなどが 破骨細胞・骨芽細胞相互作用に関与して 共役を上手く運ばせる といった現象が必要です @骨形成が過度にならないように 制御するシステムも存在し *骨芽細胞から分化した骨細胞自身が スクレロスチンを産生し Wntシグナルを抑制して骨形成を抑制する *骨細胞は骨基質中で 細胞間同士の細胞突起により連結し 状況の変化に応じてリモデリングを制御する といった機序が関与します このように さまざまな因子が 骨の新陳代謝・リモデリングを行う 破骨細胞 骨芽細胞の働きを制御していて これらの機序に異常がおこると リモデリングのバランスが崩れて 骨粗鬆症が起こると考えられています
高橋医院