骨質の変化
骨粗鬆症で 骨がもろくなる理由の解説を続けます <骨質の決め手のコラーゲンが劣化する> @コラーゲンの役割り 骨質の変化は 骨のリモデリングの亢進とは 独立した機序で生じます 近年の研究で コラーゲンの劣化や減少でも骨粗鬆症になること が明らかになってきました 骨の体積の約半分はカルシウムですが 残りの約半分はコラーゲンでできています 骨を鉄筋コンクリートの建物にたとえると カルシウムはコンクリートで コラーゲンが鉄筋にあたります @酸化ストレスの関与 壮年期以降 コラーゲン含有量は徐々に低下していきます 酸化ストレスが 骨コラーゲンの異常をもたらす 主たる要因となります 骨粗鬆症の場合は 動脈硬化や高血圧の発症の要因でもある ホモシステインという物質などが関係していると 推測されています 血中ホモシステインの高値は 骨密度とは独立した骨折危険因子です @善玉架橋 悪玉架橋 コラーゲンの強さを左右するのは 鉄筋同士をつなぎとめるコラーゲン架橋で これはいわば梁の役目をして 建物全体の強さにまで影響を及ぼしています このコラーゲン架橋には *善玉・成熟型架橋 *悪玉・老化型架橋 があり 悪玉架橋が増加すると コラーゲン同士のつなぎとめが弱くなり しなやかさが失われ 硬くてももろい 折れやすい状態と なってしまいます 悪玉架橋は 加齢とともに増えるほか 糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病によっても 増えることが分かっています 糖尿病患者では 骨密度検査で正常に近い結果が出ても 骨折リスクが高いことがありますが 酸化ストレスによる糖質変性で生じる 終末糖化産物・AGEsが 老化架橋を起こさせて 骨質を低下させ骨折を起こします ペントシジンは コラーゲンが老化架橋したもので 尿中ペントシジン高値は 独立した骨折危険因子となります @コラーゲン劣化の予防 コラーゲンの劣化や減少を防ぐためには 生活習慣の改善などが必要で 骨粗鬆症の予防には カルシウムをとって 骨量(骨密度)を増やすだけでなく コラーゲンに着目して 骨の質(骨質)を良くすることも重要です <骨基質タンパクの変化> 骨粗鬆症では コラーゲン以外の骨基質タンパクの変化も 見られます オステオカルシンは 基質の石灰化に関与し コラーゲンの線維形成 架橋形成にも影響しますが ビタミンK不足では オステオカルシンが低下します こうした 骨基質タンパクの異常を反映する 骨マトリックス関連マーカーとして *ホモシステイン *ペントシジン *非カルボキシル化オステオカルシン などが測定されています <骨のカルシウムが血液中に溶け出す> 体内のカルシウムの99%は 骨に蓄えられていますが 残りの1%は血液中に含まれており カルシウムの働きにより 全身の機能を正常に保つという 重要な役割を担っています このあたりは ミネラルの解説で詳しく説明しましたので 参照されてください 体に必要な血中カルシウムが不足すると それを察知した 副甲状腺ホルモンなどの作用により 骨に蓄えられたカルシウムが溶け出して 不足分を補おうとします すると 骨の量(骨密度)が減ってしまい 骨粗鬆症につながります ですから そうならないように 日々の食生活で 必要量のカルシウムを摂取することが 大切になります
高橋医院