続発性骨粗鬆症
何らかの病気の合併症として あるいは 薬剤の副作用として 骨粗鬆症が発症する場合があり 続発性骨粗鬆症と呼ばれています 原発性骨粗鬆症と異なり 性差がなく 男性でもかかりやすいのが特徴です <原因の分類> @内分泌疾患 *副甲状腺機能亢進症 *クッシング症候群 *甲状腺機能亢進 @生活習慣病 *糖尿病 *慢性腎疾患(CKD) @その他の疾患 *慢性閉塞性肺疾患(COPD) *関節リウマチ @薬物 *ステロイド薬 *ワーファリン <糖尿病> もともと骨量が比較的多い人でも 糖尿病になると 骨の新陳代謝のバランスが崩れ さらにコラーゲンの劣化により骨質も悪くなって 骨粗鬆症による骨折を招きやすいことが わかってきました 大腿骨近位部骨折リスクは 1.4~1.7倍上昇するとされ 日本の検討では 椎体骨折は 男性で4.7倍 女性で1.9倍上昇しています 原因としては 骨質の劣化に起因している割合が大きく *酸化ストレス *AGEsの一種のペントジン架橋が増え 劣化させる *インスリンシグナルが 骨芽細胞の分化を抑制し 骨形成を低下させる *皮質骨の多孔性が増加している といった機序も考えられます 糖尿病では 骨形成マーカーのオステオカルシンが 低下していますが 血糖コントロールが改善すると オステオカルシンは上昇します 骨粗鬆症のリスクは 糖尿病のコントロールが悪いと上昇し *A1Cが7.5%以上 *罹病期間が長い *インスリン治療を必要とする などの状態だと リスクが高まります 治療はまず体重減少で 内臓脂肪が減少すると 骨質劣化が改善される可能性があります 骨粗鬆症治療薬の ビスホスホネート テリパラチドの 有効性が期待されています 糖尿病治療薬そのものの影響もあり チアゾリジン薬は PPARγを活性化して 脂肪分化を促し骨形成を抑制します <脂質異常症> 悪玉コレステロールのLDLは *骨密度と負の相関がある *骨折危険因子である との報告があります 酸化LDLが 骨芽細胞の分化を抑制し PTHの骨形成作用を阻害するとされ Wnt系が LDLと骨粗鬆症を結び付ける可能性が 指摘されています また 脂質異常症治療薬のスタチンが 骨折リスクを低減させると言われています <高血圧> 高血圧の原因となる 交感神経系 レニン・アンギオテンシン系の亢進は 骨形成抑制 骨吸収促進により 骨代謝に負の影響を及ぼします 女性では 高血圧と大腿骨近位部の骨密度低下の関連あり 骨折の危険因子ともなっています 降圧剤そのものの影響もみられ *ループ利尿薬は 骨量減少 *サイザイド利尿薬は 骨量増加 骨折リスク低下 *β遮断薬 ACE阻害薬 ARBは 骨折リスク低下 といった作用を有しています <慢性腎臓病 CKD> CKDは 腎臓の機能が低下し続ける病気で 食事や喫煙などの生活習慣 肥満 糖尿病など他の生活習慣病 とも密接な関わりがあります CKDは骨質の劣化を招くため 骨密度が比較的高くても骨がもろくなり 骨折のリスクが上昇することがわかってきました 大腿骨近位部骨折リスクは 5.2%上昇するとされています *続発性副甲状腺機能亢進 *無形性骨症 *ビタミンD欠乏 *低カルシウム 高リン血症 などが 関与します CKDと骨粗鬆症は 互いの病態に悪影響を及ぼし合います 骨粗鬆症で見られる 骨からのリン放出が 副甲状腺機能亢進を引き起こしますし リンは血管を傷害するので 腎機能低下を誘導します 一方 CKDで見られる カルシウム・リンの代謝異常が 骨粗鬆症を増悪させます <慢性閉塞性肺疾患 COPD> 骨密度の低下 骨折リスクの上昇を認め 男性でも骨折リスクが高まっています COPDの重症度が高いほど 骨粗鬆症のリスクが高いと言われています 機序としては *TNF IL-6などの炎症性サイトカインによる RANKL発現亢進を介した骨吸収促進 *ホモシステイン増加による骨質の劣化 などが想定されています また 椎体骨折による脊柱変形が 呼吸機能低下に悪影響を及ぼし 悪循環を形成しています <副甲状腺機能亢進症> 副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで カルシウムを蓄えて骨をつくる働きより 骨からカルシウムが溶け出す働きの方が 活発になってしまい その結果 骨密度が低下して 骨粗鬆症になります <関節リウマチ> 関節リウマチそのものと 治療に使われることがあるステロイドの影響により 骨粗鬆症および骨折のリスクが高まります 有病率は約2倍で 骨折リスクも有意に高く ステロイド未使用でも充分に高いので 注意が必要です 危険因子としては *女性 高齢 *1日のステロイド使用量が多い ことが挙げられています ビタミンDの不足 欠乏が多いので サプリの服用や日光浴が推奨されています 治療は リウマチ自体のコントロールが重要で できるだけ使用するステロイドの量を減らし 骨吸収抑制薬の ビスホスホネート デノスマブ 活性型ビタミンD製剤などの 骨粗鬆症治療薬も用いられます
高橋医院