自信家で 浪費家で 女好きで
どちらかというとオタク系の男性を 惹きつけてやまないワーグナー 神秘と官能に満ちた世界を オペラで造り上げた彼は どんなに高潔で真摯な人柄だったかと言うと 実はかなりの 「とんでもない奴」 だったようです(笑) 「ロマン派の音楽家たち 恋と友情と革命の青春譜」 という本に メンデルスゾーン ショパン シューマン リスト などと並んで 若い頃のワーグナーの生きざまが 描かれています 音楽家の家に生まれず 自らは何も楽器を演奏しないという それまでの音楽家とは異なる 新しいタイプの音楽家であった ワーグナー ベートーベンを英雄視していた彼は ライプチヒの音楽大学に通っていた頃は バンカラ学生で酒場に入りびたり 喧嘩やギャンブルばかりしていたそうで その後の人生で 何度も破産しますが そのたびに救世主が現れて救われるという 波乱万丈 行き当たりばったりの 生涯を歩んだそうです うーん 彼が楽曲で示す世界とは だいぶ異なりますね(笑) しかし彼は ロマン主義に心酔するという 純な部分も持ち合わせていました また もともと演劇好きだった彼は オペラの魅力に目覚め ドイツの音楽やオペラは 硬直化しているので 演劇性を求めて イタリアやフランスに学ぶべきだ と語っていたそうです 20代初めで 5歳年上のオペラ歌手の ミンナに一目ぼれし その後も 乱れた そして盛んな 女性遍歴を積み重ねていきます 歌劇に目覚めた劇団の楽長として 博打のような興行を繰り返しては 借金を増やし続け やがて 借金依存型の生活に入り浸っていきます そして興行の失敗で劇団が解散して 失業の憂き目にも合うことになります それでも 借金にまみれていたにもかかわらず 23歳で最初の恋人と結婚して 贅沢な家を借りて 豪華な生活を楽しんでいたそうです やがて そんな破天荒な生活に呆れられ 彼女に逃げられてしまいますが それでも 借金しながら 浪費し贅沢な生活を送る日々 移動に専用列車を仕立てるなど 途方もない浪費家だったようです ミンナとはよりを戻りますが 数々の不倫の恋もしながら 借金取りに追われる生活 さらに 過剰なほどの自信家で 自分は音楽史上まれに見る天才で 自分より優れた作曲家は ベートーベンだけだ と 公言して憚らなかったそうで しかも かなりの自分勝手で 日常生活でいつも周囲の人たちに 迷惑をかけまくっていたそうです しかし 40歳を過ぎて 友人で尊敬していたリストの次女コジマと 恋に落ちます コジマは当時結婚していたので まさに不倫の関係 ワーグナーの妻ミンナは 彼がコジマと出会ってからすぐに亡くなり その後にコジマも離婚し ふたりは幸せな結婚生活を送ります やがて ルートヴィヒ2世の招きと経済的援助を受け バイロイトに 彼のオペラのホームグラウンドとなる 祝祭劇場を作ります
そして 旅先のヴェネツィアで 69歳で心臓発作で亡くなります 彼が亡くなった後 バイロイトはコジマにより運営され 今では 毎年夏に 世界中のワグネリアンが集う聖地 となっています 強烈な自信家で 自分勝手で上昇志向がとても強く 売れなかった若い頃は 悶々とした日々を送り それでいて 桁外れの浪費家で 借金にまみれた生活をおくり 不倫を繰り返した男 うーん 絶対に友達にしたくないタイプですが(笑) でもオペラに対する思いだけは きっと純粋だったのでしょう 確かに彼の楽曲には そんな非常識でふしだらで 嫌な男が作曲したとは思えない 壮大な魅力がありますから 蛇足ですが 明治時代の一部文化人のワーグナー熱は 凄かったらしいです 明治のワーグナー・ブーム という本に詳しく書いてありますが なにせ 一度も ワーグナーの音楽を聞いたことがない オペラも観たことがなくて 海外の新聞や雑誌の論評を読んだだけで それこそ ワグネリアンになっていたそうで やっぱり ワーグナーは危険です?(笑)
高橋医院