慢性炎症について説明してきましたが
やっと本題である
肥満 生活習慣病との関わりの解説に
到達しました


<肥満により脂肪組織に慢性炎症が生じる>

肥満状態では
脂肪組織に慢性炎症が生じていて
肥満が原因で起こる糖尿病などの
原因になっています

@健常な脂肪組織では炎症は抑制されている

以前紹介したように
肥満のない健常な脂肪組織では

炎症を抑制する働きがある

M2マクロファージ

*Th2細胞

制御性T細胞

*2型自然リンパ球(ILC2

などが多く存在していて 
炎症を抑制しています

肥満による脂肪組織内の炎症細胞の変化を示す図

しかしこれらの細胞は
肥満にともない減少して
代わりに炎症性の細胞が増えてきます


@肥満の脂肪組織では炎症が誘導される
 
肥満になると
脂肪組織に炎症が起きてきます

その機序として

*脂肪細胞が肥大化し
 免疫細胞を呼び寄せる因子の
 MCP-1を分泌するとともに
 やって来た免疫細胞が
 自らに接触しやすいように
 MCP-1の受容体CCR2を発現する

*炎症を惹起する
 M1マクロファージが浸潤してきて
 脂肪細胞と相互作用する

というステップが推察されています

肥満により脂肪組織では炎症が誘導されることを示す図
こうした反応は
マウスに高カロリー食を与えると
あっという間に誘導されることから

脂肪細胞が
多価不飽和脂肪酸などの
DAMPにより活性化され
炎症が生じる可能性が高いと
考えられています


@脂肪組織の慢性炎症により 
 脂肪組織の機能が変化する

脂肪組織で慢性炎症が生じると
脂肪細胞のアデイポカイン産生バランスが
変化します

炎症やインスリン抵抗性をひき起こす
悪玉アデイポカインの分泌が増え

炎症を抑える善玉アデイポカインの
分泌が低下します

さらに炎症の影響で
善玉アデイポネクチンの受容体発現が低下し
マクロファージ浸潤がさらに増強され
TNF IL-6 MCP-1などの
炎症性サイトカインを
持続的に産生するようになります

脂肪組織の慢性炎症によるアデイポカイン産生バランスの変化を示す図

これらの炎症性サイトカインは
脂肪組織だけでなく
全身を回って
肝臓 筋肉にも影響し
機能的変化をもたらします


@TNF-αが悪さをする

TNF-αは
過酸化脂質 飽和脂肪酸などで
活性化されたマクロファージが産生する
炎症の旗振り役で

*血管内皮細胞 リンパ球を活性化する

*血管透過性を高めて 
 細胞の流入を促進する

*脂肪細胞から
 炎症性サイトカインを産生させる

といった作用で 炎症を増強します

TNF-αによる炎症の増強を示す図


さらに
脂肪分解を促進し
脂肪組織から脂肪酸を放出させ

脂肪酸は
マクロファージを活性化するという
悪循環が生じます


またインスリン抵抗性を高める作用もあります


長くなるので次回に続けます
高橋医院