肥満 動脈硬化と慢性炎症2
肥満により 脂肪組織に慢性炎症が生じる機序の 説明を続けます <脂肪組織での慢性炎症誘導> @細胞内ストレスも関与する 細胞内で *小胞体ストレス *酸化ストレス などの細胞内ストレスが生じると ストレス応答性転写因子 ATF3 ATF4が活性化され 脂肪酸による炎症性サイトカイン産生を 抑制しますが 過度のストレスでこの制御が破綻すると 炎症が持続すると推察されています @CLS (crown-like structure)が形成される 炎症が起こった脂肪組織内では 細胞死に陥った脂肪細胞を M1マクロファージが取り囲む 形態学的変化であるCLS構造ができます このCLSが 脂肪組織炎症の起点となり インスリン抵抗性の誘導にも 関与すると考えられています またCLSを形成する M1マクロファージには Mincleという真菌 結核菌などの 病原体センサーが発現し 死細胞センサーとして機能するので 死んだ脂肪細胞からの DAMPを認識して マクロファージが活性化されます @制御性T細胞の減少 前回説明したように 脂肪組織内では 炎症のアクセルが暴走するだけでなく ブレーキの機能不全も見られます 特に肥満では 脂肪組織の制御性T細胞が 減少します 肥満がない状態での 脂肪組織の制御性T細胞は IL-33受容体発現率が高く 脂肪細胞が産生するIL-33により 維持されていますが 肥満になると 脂肪組織内での この恒常性維持機構が働かなくなり 減少してきます また制御性T細胞の維持には アデイポネクチン ILC2も 関与していると推察され IL-33は ILC2に作用してマクロファージを維持し IL-33受容体を介して 制御性T細胞を維持していると 考えられています 肥満になると こうした機序が破綻をきたし 慢性炎症が持続するのです <脂肪組織の慢性炎症が脂肪組織の機能 全身に及ぼす影響> @脂肪蓄積能が低下し 他臓器での異所性脂肪の蓄積が始まる 脂肪組織内で慢性炎症が持続すると 脂肪細胞がインスリン抵抗性になり 脂肪組織の線維化も生じます このため 脂肪細胞の脂肪蓄積能が低下して 中性脂肪が血中に放出され 肝臓 骨格筋 心臓などで 異所性脂肪の蓄積が誘導されます こうした 異所性脂肪が脂肪毒性を発揮して 糖尿病 脂肪肝などの生活習慣病が 起こってくるのです <脂質異常症による動脈硬化と血管内の慢性炎症> 血中のLDLコレステロールが高くなると 血管壁内に侵入して コレステロール結晶を作り沈着します コレステロール結晶は インフラマソームを活性化して 血管壁内で慢性的な炎症が生じて 動脈硬化が進行します
高橋医院