健康診断の話をしてきましたが

健診の腹部超音波検査で
たまたま膵臓に
腫瘍が見つかることがあります

たまたま膵臓に腫瘍が見つかった状況を示すイラスト

「膵臓に腫瘍がありますから
 精密検査してください」

などと結果表にコメントされて

「えっ 膵臓がん? どうしよう?」

とびっくりされて
当院に来られる方も多いのですが

膵がんではなく「のう胞」という
風船のような腫瘍のことが少なくありません

そこで今日は そんな紛らわしい
膵臓の「のう胞性疾患」について説明します


<膵のう胞とは?>

膵臓の内部に
風船のようなふくらんだ腫瘤
=「のう胞」ができている状態です

膵のう胞について説明する図


のう胞が
腫瘍でできているか
腫瘍以外の成分でできているか?

のう胞の内部が
膵臓の上皮で覆われているか?

内部に貯まっているのが
ネバネバした粘液か
サラッとした漿液か?

膵臓本体の主膵管とのう胞が
つながっているか?

といった差異により
いくつかのタイプに分類されています

膵のう胞の分類図


<膵がんとの関係は?>

膵のう胞性疾患は 
膵がんとは異なります

多くのタイプは
良性や悪性度が低いので
経過観察しますが

悪性度が高いので
すぐに手術した方が良いタイプもあります

各種膵のう胞の鑑別図


膵がんになるリスクが高い
という報告もありますので
定期的な経過観察が必要です

膵がんの高リスク疾患をまとめた表


<発見の契機と 診断のために行う検査>

健診の腹部超音波検査などで
膵のう胞 や 主膵管の拡張
などが発見されることが契機になります

膵のう胞のエコー所見

より正確な診断のためには

*本当に 膵のう胞性疾患なのか

*慢性膵炎や通常型膵がんによる
 のう胞形成や尾側主膵管の拡張ではないのか

を慎重に検討する必要があります


MRIを用いたMRCPという検査が
診断に重要で
全体像の把握に最も有効とされています

MRCPの画像

MRCPで疑わしい場合
さらに超音波内視鏡検査(EUS)などが
行われます

EUSの所見

では 
代表的な膵のう胞性疾患について
説明していきます


<粘液性のう胞腫瘍・MCN>

中年女性の 
膵体尾部に好発します

粘液性のう胞腫瘍の説明図

内部に 
のう胞内のう胞を有し
オレンジの房のような形を示します

のう胞の内部に粘液を産生しますが
主膵管との交通はありません

悪性度は低いのですが
あくまで悪性腫瘍ですので
原則として診断時に手術切除をします

とくに大きいものは要注意です
(平均的な大きさは 良性は6cm 悪性は9cm)


<漿液性のう胞腫瘍・SCN>

1~2%と比較的稀なタイプで
のう胞の内部に漿液を産生します

漿液性のう胞腫瘍の説明図

60歳前後の女性に多く
膵頭部 体尾部に認められることが多い

良性なので経過観察します



<膵神経内分泌腫瘍・NEN>

男女差 年齢差はなく発症し
膵尾部に多いタイプです

膵神経内分泌腫瘍・NENの説明図

ホルモンを産生して
さまざまな症状を呈するタイプ(機能性)
症状を全く示さないタイプ(非機能性)
があります

膵神経内分泌腫瘍の各タイプについてまとめた図

発生学的に膵臓とは関係がない腫瘍が増殖して
形成されたのう胞ですので
原則として手術で除去します


<充実性偽乳頭腫瘍・SPN>

20~30代の若い女性に多い
発生学的に膵臓とは関係がない腫瘍です

悪性度は低いのですが
悪性腫瘍ですから
原則として診断時に手術切除をします

術後予後は良いのですが
10%では転移 再発が認められます

高橋医院