データの世紀で
個人データを保護しようとする動きが
広まりつつあります

<EUの動き>

EUは 2018年5月に
一般データ保護規則・GDPRを施行しました

データが 経済や社会の中核的資源になる状況下で
いかに個人が自らのデータに
主体的に関われるようにするか?

という問いに正面から向き合い
制度化された法案です

GDPRのポスター


AIに重要判断をされない権利 を定める

情報化社会に対するヨーロッパの価値観を象徴しており
「情報化社会における人権宣言」
ともいえます

こうしたスタンスは 
アメリカや中国とは正反対なものです


そもそも
社会の情報化が進むにつれ
ビッグデータの分析やAIの判断の影響が大きくなり

そんな状況では
自分自身で物事を決めるという人間らしさが
埋没しかねないという危機感
がベースにあります

ヨーロッパが目指すのは
人間が人間らしさや尊厳を保ったうえでの情報社会
人間の自主的な判断が守られる社会で

例えば 
個人データを本人の意思でいつでも動かせるという
データポータビリティーの考え方は
こうした思想に基づいています

GDPRについて解説する図

EUではさらに
通信の秘密の保護を強化する 
クッキー法と呼ばれる新ルールも準備中です

それによると 
個人データは人権の一部 ととらえ
GAFAなどによる個人データの広告利用などについて
厳しい制限が課されます

クッキー法のポスター

個人データは 人権の一部

うーん お恥ずかしいことに
書き手はそうしたことを
意識したことはありませんでした

そうなのですね、、、


<データポータビリティー>

また最近は
「データポータビリティー」
という概念が重視されています

データポータビリティーについて説明する図

ネット空間における個人データを
本人が取り戻したり 
他のサービスに移せるようにする
という権利で

GDPRの施行を契機に 日本でも一気に議論が進んでいます

そのため グーグルのダウンロードサービスでは
同社が提供するGメール 地図 ユーチューブ 写真などのデータを
自分のパソコンなどに圧縮ファイル形式で
ダウンロードできるようになりました


但し グーグルは注記で
データをダウンロードしても
グーグルのサーバーからデータが
削除されることはありません
としています

一旦 データの利用を許してしまえば
あとで個人がデータを取り戻すことはできても
その利用を妨げることはできません

ということですね


また ポータビリティー制度で
データを自分の手元に取り戻しても
データの規格が合わなければ
他のサービスに移すことができないのが実情で
そこが大きな課題となっています

ポータビリティーが普及するうえで
どの分野においても データの規格統一が
今後の喫緊の課題になるようです


いずれにせよ このように
データへの関わり方に変化が起きています

これまでデータ活用というと
国内でも海外でも
企業主導型のデータ活用が中心でした

この分野は
今後ももちろん成長していくでしょうが
これに個人主導型の仕組みが
加わっていくようになりそうです

両者が相互作用しながら育っていく基盤を作っていけるかが
国の競争力を左右することになるとのことです



<日本の動向>

一方で
日本政府が提唱する科学技術政策の基本方針
ソサエティー5.0では

狩猟社会 農耕社会 工業社会 情報社会に続く5番目として
人間中心の社会を提唱しています

ソサエティー5.0について説明する図

現代社会は
IoTなどにより得られたデータとAIにより
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)が
高度に融合する社会でもあります

そのなかで
本人が意識して自らのデータに主体的に関わる姿勢が
重要になります

もちろん 個人が自らの力のみで
データを保管したり分析したりはできません

ビッグデータの一部として活用してもらった方が
結果的に個人の利益になることの方が多い

ソサエティー5.0について説明する図


しかし
何に活用するのか 誰に渡すのかということを
信頼して任せられる仕組みが
必要とされているのです


<第4次産業革命・第4の知の革命>

グーグルの哲学者として知られる
ルチアーノ・フロリディは著書で
コペルニクス ダーウィン フロイトに続く
「第4の知の革命」について
以下のように述べています

ルチアーノ・フロリディの著書

過去の知の革命は全て
いかに人間が世界の中心にいないかを明らかにしてきた

現在起きている第4の革命でも
生活や世界全般がスマート化していく中で
現実的なものが情報的なものになる
“ヒトの情報生命体化”が起きている

情報圏に記録されるデータにより
個人の実体が規定されるということだ

ヒトの情報生命体化の説明をする図


人の行動が
自らが生んだデータに支配される世の中に
なりつつあるからこそ

個人が自らのデータの扱われ方に関心を持ち
責任を持たなければいけない

ということなのでしょう

第4の革命について説明する図

日々の生活で
情報機器を利用していると便利だけれど
そうしたなにげない行為の積み重ねにより
知らぬ間に想像すらしなかったパワーの形成に貢献していた

まさに知らぬ間に
自分のデータがそこで利用されていた

そうしたことが起こり得る
なんだか面倒くさいデータ社会で
私たちは生活しているということなのですね

 

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