砂糖税は
欧米諸国や南米だけでなく
アジアでも広がりを見せています

<アジアの砂糖税>

アジア各国では
近年の経済成長による所得増にともない
清涼飲料の消費量が拡大を続けていて
インドネシア フィリピン マレーシアでは
この10年で市場規模は倍増しました

こうした砂糖摂取の増加により
肥満人口も増え続けています

その増加のスピードは
世界でも群を抜き
WHOが注目するほどのものです

アジアで肥満人口が急増していることを示すグラフ

そこで アジア諸国の政府は
肥満人口の増加にともなう
生活習慣病による医療費増加に
歯止めをかけなければ
医療財政が立ちゆかなくなる
との危機感を持ち
砂糖税導入に踏み切り始めました

砂糖税が実施されている東南アジアの国々を示す図

@タイ

2017年秋に導入されました

卸売価格の20%だった
清涼飲料への物品税を
推奨小売価格の14%に
砂糖の含有量に応じた砂糖税を
上乗せする仕組みに変えました


@フィリピン

甘味料を加えた飲料を
対象とした加糖飲料税を導入し
税額は1リットルあたり6ペソ(12円)で

ジュースに広く使われる
異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)を
使った飲料には
さらに高額の12ペソ(24円)が
課税されます


@インドネシア ベトナム

糖分を含む飲料への課税を
検討しています


@インド

2017年の
物品・サービス税導入にともない
4段階ある基本税率で最も高い28%を
炭酸飲料に適用しました


<日本ではどうなっているの?>

では 日本ではどうでしょう?

日本では1901(明治34)年に
砂糖は贅沢品とされ砂糖消費税が
課されましたが

1999(平成1)年の消費税導入に伴い
砂糖消費税は廃止されました

砂糖税の廃止を知らせる図

砂糖に贅沢税がかけられ 
それが消費税で廃止されたなんて
知りませんでした!


そして世界の流れに沿うように
2015年6月に有識者がまとめた
厚生労働省の
「保健医療2035提言書」において

保健医療2035提言書の提言書

保健医療財源を確保するために
既存税に加え 社会環境における
健康の決定因子に着眼し

タバコ アルコール 砂糖などの
健康リスクに対する課税を
検討していくべき

と記されました

実際に 
全国清涼飲料工業会のデータによると
日本人1人あたりの
清涼飲料水の消費量は
2005年の約140リットルから
2014年には約158リットルに
増加していて

日本でも メキシコや米国に劣らず
多くの炭酸飲料 清涼飲料水が
消費されているようです

清涼飲料水の消費が増加していることを示すグラフ

日本人は欧米人と比べて
軽度の体重増加でも
糖尿病を発症しやすいので
砂糖摂取の増加には敏感になるべきです


しかし 
2015年の有識者会議の提言を受けて
その後 政府が砂糖税についての
具体的な政策の検討を
行った形跡はありません

産経新聞によると
日本の砂糖に関わる税金については
複雑な事情があるようです

日本では
多くの砂糖の原料を輸入していますが
政府は輸入される原料に調整金を課し
製糖メーカーに負担させる一方

調整金を財源に
サトウキビ農家などに
交付金を支給する制度があるそうです

こうして
国産原料と輸入原料の
内外価格差のバランスをとっていて
国内の農家を保護するための調整金は
最終的には消費者が
負担していることとなり

この調整金制度で
消費者は実際よりも
高く砂糖を買わされており

健康を考えて課税しようとする
砂糖税により
砂糖に別途税金を課して
さらなる負担を消費者に負わせることに
砂糖の業界団体は
猛反発しているそうです

厚労省は最近の税制改正要望でも
砂糖税についての要望を
出していません

調整金制度という
負担が課されている砂糖に
さらに砂糖税を導入したら
二重課税ならぬ三重課税との
批判も起こりかねないことを
危惧しているようです

砂糖の調整金制度についての説明図

砂糖税のようなシステムにより
砂糖の消費が抑制され 
肥満や糖尿病が減少することは
世界的に証明されていますが

さりとて 
それがベストな方法なのかは
さらに議論が必要かもしれません

ただ 日本独特の農業政策の影響で
健康に貢献すると示唆される砂糖税導入に
ストップがかけられているとしたら

それでいいのかなあ?
という疑問を正直言って感じます

世の中 
なかなか一筋縄ではいきませんね

 

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